介護資格で唯一の国家資格である「介護福祉士」には、4つの受験資格取得ルートがあります。この中には、介護現場で実務経験を一定期間積めば受験資格を取得できるルートもあるため、異業種から介護職へ転職を考えている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、介護福祉士試験の受験資格を得るためのルートや受験日までのスケジュールについてご紹介させていただきます。

目次

介護福祉士試験とは

「介護福祉士」は、高齢者や障害者など、身体上・精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障が生じている方に対し、専門的知識及び技術をもって、その人の心身の状況に応じた身体介護や生活援助等を行う者であり、介護資格の中で唯一の国家資格を持っています。

介護福祉士試験は、

  • 介護・福祉系の養成施設(専門学校や大学など)を卒業した方
  • 介護施設等で働いており、3年以上の実務経験があって必要な研修を受けた方
  • 介護・福祉系の高校、あるいは介護・福祉系の学科で高校を卒業した方

などが、受験することができます。

介護福祉士の国家試験の合格率は、過去5年間の結果をみると70%前後が続いています。合格率だけでみれば、国家試験の中では難易度はそれほど高くないかもしれませんが、それは試験の対策をしっかり行ったうえでの難易度であり、勉強を疎かにしても受かるという意味ではありません。

過去5年の介護福祉士の合格率

  • 第29回介護福祉士国家試験(平成28年度):72.1%
  • 第30回介護福祉士国家試験(平成29年度):70.8%
  • 第31回介護福祉士国家試験(平成30年度):73.7%
  • 第32回介護福祉士国家試験(令和元年度):69.9%
  • 第33回介護福祉士国家試験(令和2年度):71.0%

介護福祉士試験のスケジュール

介護福祉士の試験は、年に1回実施されています。筆記試験と実技試験があり、筆記試験は1月下旬、実技試験は3月上旬で、合格発表は3月下旬となります。

試験の申し込みの受付期間は大体8月~9月の間で、具体的な期間については毎年異なります。 最初の試験である筆記試験より約5ヶ月前から申し込みが始まります。申し込み期間は約1ヶ月間であるため、受験を考えている方はうっかり忘れてしまうことがないよう注意するようにしましょう。

介護福祉士試験までのスケジュール
試験日 筆記試験 1月下旬
実技試験 3月下旬
受験申込書の受付期間 8月上旬から9月上旬
受験手数料 18,380円
合格発表 3月下旬(午後)
参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

介護福祉士国家試験の受験料は毎年15,300円でしたが、令和3年度からは受験料が引き上げられ、3,080円高い18,380円となっています。

試験会場は、全国の都道府県に一ヶ所ずつ用意されるわけではありません。自分はどこで受験するのかあらかじめ把握しておくようにしましょう。 また、実技試験の場合は筆記試験とは異なり、会場が東京都・大阪府の2ヶ所に絞られてしまいます。もし、現在は地方に居住し、これから介護福祉士を目指そうと考えている方がいるのであれば、実技試験が免除されるルートを選択するのも1つの方法です。

介護福祉士試験の受験資格

介護福祉士国家試験を受験するためには、受験資格が必要です。受験資格を得るためには。大きく4つルートがあります。

養成施設ルート

介護福祉士養成施設(専門学校、短期大学、大学)を卒業した方は、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。

以前までは、指定の介護福祉士養成施設を卒業すると、介護福祉士の資格を取得することができるようになっていました。しかし、「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正によって、「介護福祉士国家試験の受験資格取得」のルートに変更となっています。

平成29年4月から令和9年3月までに養成施設を卒業した方に関しては、経過措置によって、卒業後の5年間は、国家試験を受験しない、あるいは受験して不合格となった場合でも、介護福祉士資格取得者と見なされます。 そして、この5年間の間に国家試験を受けて合格した方、あるいは卒業後5年間介護業務に従事していた方は、介護福祉士の資格を取得することができます。

実務経験ルート

介護現場で3年以上の実務経験を積み、必要な研修を受けることで、受験資格を取得できます。介護福祉士養成施設等を卒業していない方でも、介護施設などで働きながら受験資格を得ることができるため、受験者数が最も多いルートです。

具体的には、

  1. 従業期間が3年(1,095日)以上かつ従事日数が540日以上
  2. 「実務者研修」修了、または「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」を修了している

上記、当てはまる方が受験資格取得の対象となります。

福祉系高校ルート

介護・福祉系の高等学校、あるいは介護福祉科がある高校を卒業し資格を取得するルートです。

具体的には、平成21年度以降の入学者で「新カリキュラム」を修了した方は、高校の卒業と同時に介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。

平成20年度以前の入学者は「旧カリキュラム」となるため、卒業後、「介護技術講習」または「介護過程・介護過程III」を修了するか、国試で実技試験を受ける必要があります。

「特例高等学校等」の場合は、高校卒業後、9ヶ月(273日)以上かつ従事日数135日以上の介護等の実務経験を積むことで、受験資格が取得できます。

実務経験を積んだ後、「介護技術講習」または「介護過程・介護過程III」を修了していると、国試の実技試験が免除されます。

経済連携協定(EPA)ルート

外国人(インドネシア、フィリピン、ベトナム)が、日本の介護施設で勤務しながら、介護福祉士国家試験の受験資格を得るルートです。3年以上の実務経験を積むと、受験資格を取得することができます。

また、3年以上の実務経験を経た後、「介護技術講習」または「介護過程・介護過程III」または「実務者研修(EPA介護福祉士候補者のみ)」を修了してから国試を受ける場合は、実技試験が免除になります。

介護福祉士試験の筆記

筆記試験の内容

「筆記試験」は、五肢択一のマークシート方式です。

試験内容は以下の通りです。

  1. 人間の尊厳と自立、介護の基本
  2. 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
  3. 社会の理解
  4. 生活支援技術
  5. 介護過程
  6. 発達と老化の理解
  7. 認知症の理解
  8. 障害の理解
  9. 障害の理解
  10. 医療的ケア
  11. 総合問題
参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

試験内容は全13科目の範囲から、全部で125問が出題されます。配点は1問1点で、125点満点の試験です。2科目ずつで1科目群としてまとめているところもあるため、科目群としては全11科目群となります。

筆記試験の注意点

介護福祉士の筆記試験は、総得点の60%を合格基準とし、その年の問題の難易度に応じて合格の基準点が補正されます。ですから、総得点(125点満点)の60%である75点が、必ずしも合格基準点というわけではありません。

また、筆記試験では、得点が合格基準点を上回っていても、11科目群全てで点数を取れていないと、不合格扱いとなってしまいます。そのため、得意な科目で点数を稼ぐといった方法は通用しません。 「医療的ケア」など、出題数が少ない科目群に関しては、特に注意が必要です。普段から全科目まんべんなく勉強するようにし、苦手な科目がある場合は、その部分だけ特に念入りに対策をとっておくようにしましょう。

介護福祉士試験の実技

実技試験の内容

実技試験では、介護の現場で想定されるシチュエーションが問題として、制限時間の5分以内で、それに適切な介護を行います。問題には、要介護者の身体状況や、本人の希望、 介助内容等が記載されています。

実技試験は免除される場合が多い

筆記試験は受験者全員が対象となりますが、実技試験は一定の条件を満たすと免除となります。免除の対象となる方は、以下の通りです。

介護現場での事故の例
  • 養成施設ルート
  • 実務経験ルート
  • 福祉系高校ルート
    ▪平成21年度以降の入学者
    ▪平成20年度以前の入学者で、高校卒業後、「介護技術講習」または「介護過程・介護過程III」を修了している方
    ▪「特例高等学校等」卒業後、9ヶ月以上の実務経験を積み、「介護技術講習」または「介護過程・介護過程III」を修了している方
  • 経済連携協定(EPA)ルートで「介護技術講習」または「介護過程・介護過程III」または「実務者研修(EPA介護福祉士候補者のみ)」を修了している方

「養成施設ルート」、「実務経験ルート」、「福祉系高校ルート(新カリキュラム)」の方は実技試験が免除となるため、実技試験を受ける必要がある方は、「福祉系高校ルート」と「経済連携協定(EPA)ルート」のうち、必要な研修を受けていない方のみとなります。

介護福祉士試験に合格したら

実技試験を受ける方は、筆記試験の合否が2月上旬頃に送られてきます。筆記試験を合格した方は、3月上旬頃に実技試験を受けます。

3月上旬頃に実施される実技試験が終了した後、3月下旬頃に、実技試験が免除された人も含め、受験者全員に結果通知が発送されます。

合否の結果は、厚生労働省や公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページで確認することも可能です。ホームページには、合格者の受験番号などが掲示されます。

試験に合格した方には、合格証書や試験結果通知書と一緒に資格登録の手続きに必要な書類が入った封筒が届きます。

合格すると資格登録が必要となるため、届き次第、すみやかに手続きを行うようにしましょう。期日はありませんが、「介護福祉士」と名乗るためには、ただ試験に合格するだけでなく、資格登録の手続きが必要となります。

資格登録に必要となる主な書類は以下の通りです。

  • 登録申請書
  • 収入印紙の原本
  • 登録手数料「振替払込受付証明書」の原本
  • 介護福祉士養成施設等の卒業(修了)証明書(介護福祉士養成施設卒業(修了)者のみ)
  • 「戸籍抄本」「戸籍の個人事項証明書」「本籍地を記載した住民票」のいずれか1通(コピー不可)
  • 戸籍証明書類(外国籍の方のみ)

これらの書類は郵送で提出することになりますので、不備がないよう、提出する必要がある書類はしっかり確認するようにしてください。 手続きが完了すれば、登録証が交付されます。登録証は後日郵送で届きます。

まとめ

今回は、介護福祉士試験の受験までのスケジュールや受験資格を取得するまでの流れなどについてご紹介させていただきました。

介護福祉士国家試験は1月下旬から始まりますが、受験の申し込み受付期間は8月~9月頃であるため、申し込みに必要な書類等はあらかじめ用意しておくようにしましょう。 また、この記事でお伝えした通り、筆記試験では、得点が合格基準点を上回っていても、11科目群全てで点数を取れなければ不合格となります。得意な科目で点数を稼ぐといったような安易な考えで試験勉強に取り組むことの無いようにしましょう。

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