少子高齢化が進み、介護や医療の需要が拡大する日本においては、関連するサービスも多くなりました。そういった中で、小規模多機能型居宅介護というものがあります。他との違いがまだよく分からないという方のために、今回はこの居宅介護に関してのサービス内容等を解説します。

目次

小規模多機能型居宅介護とは?

介護の需要が拡大している日本においては、デイサービスをはじめとしたさまざまなサービスがあります。そういった中で、小規模多機能型居宅介護というものが設けられているのをご存じでしょうか?

「宅老所」がモデルとなって2006年に創設

まず小規模多機能型居宅介護とは、重度の要介護者として認定されても、在宅での生活を継続できるように支援する、文字通りの小規模な居住系サービス施設での介護サービスを指します。

デイサービスを中心として、利用者に自宅に赴く訪問介護やショートステイなどを組み合わせて、在宅での生活支援や機能訓練等を行います。

元々この介護サービスは、介護保険法が改正されたことによって2006年から地域密着型サービスの1つとして創られました。通常の介護保険サービスではカバーできない部分に応えるため、地域で高齢者の生活を支えられる宅老所がモデルになったと言われています。

サービス内容

そもそも介護のサービスには、居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスという3つの種類があります。そして、小規模多機能型居宅介護はこの内地域密着型サービスに該当しています。

具体的な内容としては「通い」「訪問」「宿泊」という3つがあり、その中身を見てみると以下の通りとなります。複合的なサービスとなっているのが分かるでしょう。

  • 通い…食事、入浴、排せつなど日常生活の介助や機能訓練等のサービスを、施設に通って利用する
  • 訪問…職員が利用者宅を訪問し、日常生活の介助や安否確認、送迎の送り出し、服薬補助や散歩の付き添い
  • 宿泊…日常生活の介助をはじめ、就寝時の見守り・おむつ交換・見守り。状況に応じての突発的な宿泊もあり

サービスの利用者の状態や、その家族の状況などを鑑みて、必要なニーズに合わせて3つのサービスを組み合わせ適切な介護を行うのです。

利用条件

このような複合的なサービスを受けられるわけですが、実際に介護サービスを利用するためにはいくつかの条件を満たしている必要があり、その条件が以下の通りとなります。

  • 要支援1~2、または要介護1~5の認定を受けている
  • サービスを提供する事業所と同じ自治体に住民票がある

介護度が上昇したとしても、居宅介護の原則を守って利用者が住み慣れている地域で生活をし続けられるようにするべく、利用者自身が事業所と同じ自治体に住民票があるというのが条件に入っているのです。

小規模多機能型居宅介護の費用

小規模多機能型居宅介護では、どんなサービスが展開されているのかなどについて、簡単にではありますが解説しました。どんな介護サービスでも気になってくるのは費用の面ですので、続いては費用面に関する話になります。

要介護度に応じて費用は全国共通「定額制」

まず費用に関する特徴として挙げられるのが、定額制になっているという点です。サービス内容には通所・訪問・泊まりとさまざまなものが複合的に組み合わさっていると解説しましたが、これらを組み合わせる場合であっても定額なのは変わりません

内容がどんなものであっても定額のままですし、介護保険には利用限度額というものがありますが、その金額の範囲から出てしまうような事はありません。この制度は、全国どこでも同じです。

また、サービスの利用回数についてもそれぞれの一日当たりの定員を超えてさえいなければ、制限がかかったりはしません。平成27年4月改定の制度では、事業所全体の登録定員人数が29名、一日あたりの通所サービスの定員人数が18名と決まっています。

介護認定度別の基本料金

金額自体が定額なのはどんな介護度であっても変わらない制度となっているのですが、その介護認定度によって基本料金は変わってきます。以下は、介護認定度別の基本料金を表にしたものになります。

  • 要介護1・2の認定を受けた場合
サービス費用の設定利用者負担(1割、1月につき)
同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合同一建物に居住する者に対して行う場合
要支援13,403円3,066円
要支援26,877円6,196円
  • 要介護1~5の認定を受けた場合
サービス費用の設定利用者負担(1割、1月につき)
同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合同一建物に居住する者に対して行う場合
要介護110,320円9,298円
要介護29,298円13,665円
要介護322,062円19,878円
要介護424,350円21,939円
要介護526,849円24,191円

加算費用や日常生活費は別途負担が必要

基本料金に関しては上記の通りであり、これが定額で必要になってくる費用になるわけですが、そのほかの加算費用や日常生活費といった面に関しては、別途で負担が必要になります。

まず加算費用というのは、サービスの厚いものや体勢等に関して加算される費用であり、施設によって料金は異なります。例えば認知症加算などがあり、認知症に対して必要な介護やケアには一定の人員基準を満たしていると1か月に500~800単位の費用が乗ります。

その他の日常生活費というのは、食費、宿泊費やおむつ代といった辺りになります。目安としては食費が1食につき300~800円、宿泊費は2,000~5000円、おむつ代等は数百円程度といったところです。

小規模多機能型居宅介護のメリットとデメリット

様々なアプローチによって高齢者を住み慣れている地域の中で持続した生活ができるよう支援するのが本介護サービスなのですが、利用に当たってはメリットとデメリットを押さえておく必要があると言えます。

メリット

まずは利点、メリットについてですが、大きく分けると「契約の手間が減る」「精神的な負担が少ない」「急な利用に対応している」という3つが挙げられます。1つずつ見ていきましょう。

①契約の手間が減る

まず、契約の手間が減るというメリットについてです。小規模多機能型居宅介護では、通所、訪問、宿泊という3つのサービスが組み合わさっているとご紹介しましたが、もしもそれぞれを別の事業者に依頼するとなると、その分契約の手間がかかります。

契約だけではなく、それぞれで面談や申し込みなども行わなければならないので、非効率的といわざるを得ません。その点、それらすべてを1つのサービスとしてまとめているので、1つの事業所との契約をするだけで済みます。

②精神的な負担が少ない

続いて、精神的な負担が少ないという利点です。通所、訪問、宿泊と、どのサービスを利用する場合であっても同じスタッフの元で受けられるかどうかというのはとても大切です。なぜなら、顔なじみの相手にお世話をしてもらえるのは、それだけで安心できるからです。

今回のサービスなら、事業所に在籍している介護スタッフが利用者それぞれに応じてサービスに対応する形となっており、通所、訪問、宿泊全て同じスタッフが受け持ってもらえる事もあります。

同一のスタッフがサービスを受け持ち続けるのは、コミュニケーションも取りやすく利用者との交流によって認知機能の低下予防にも繋げられます。

③急な利用が可能

そして、急な理由にも対応できるというのも大きなメリットと言えます。小規模多機能な介護施設というのは、利用者の状況に合わせて利用できるよう、24時間365日通年でいつでも対応可能なのが特徴となっています。

故に、一日利用したいというケースはもちろんの事、夜間の介護だけ受けたい、午前中や午後の間だけなど、短い間だけ利用したいというような場合でも、1日当たりの利用者定員さえオーバーしていなければ対応してもらえます。

デメリット

小規模多機能であるという特徴を活かした様々な利点があるというのがお分かりいただけたかと思われますが、利点があれば勿論デメリットもあります。

①デイサービスなど併用できないサービスがある

まず、デイサービスなどの併用できないサービスがあるという点です。今回の小規模多機能の介護などをはじめとした介護保険サービスは、様々な種類のサービスを組み合わせて提供されています。

訪問と通所、宿泊が合わさっているのがまさにその複合サービスの証拠ですが、もしも既に訪問介護やデイサービス、ショートステイといったような介護をしてもらっているのなら、これから小規模多機能の介護を使いたい場合先に解約をする必要があります。

②人数制限で利用できないこともある

人数制限によっては、サービスを利用できない事もあります。定額制の費用の点でも触れていますが、小規模という言葉の通り利用できる人数には限りがあり、1つの事業所があるとそこに登録できる利用者数は最大で29名と平成27年の改正で決められています。

登録人数だけではなく、一日の内のサービス利用者数も決まっています。通所のサービスは1日15名、宿泊については1日9人までとなっていて、通所でも登録利用者数全員を一度には賄えないのです。

条件によっては最大利用者数は18名になることもありますが、制限があるのには変わりありませんし、受けたい肥に利用できないというのも十分にあり得る話です。

③利用回数が少ないと高くつく場合もある

利用回数によっては、費用が高くつく可能性もあります。費用はすでに紹介しているように定額制で、介護保険利用限度額を毎度越える事はないというのが利点ではあったのですが、反対にデメリットにもなるのです。

定額制という事は、サービスの利用頻度がそこまで多くない場合、相対的なコストが高くなってしまうのです。かといって多く利用としても、人数制限があるので思うように利用できるとは限りません。

それでも、利用頻度に関係なく定額の費用が発生します。故に、介護度が低めでそこまで多くのサービスを必要としていないのなら、他の方法を検討するのを推奨します。

小規模多機能型居宅介護に向いている人・向いていない人

この様に、現代の様々な介護サービスの中の形態の1つとして、小規模多機能型居宅介護が存在しています。利点も欠点も踏まえたところで、そんな介護サービスを利用するのに向いている人と、別のサービスを検討した方が良い人で分けていきましょう。

向いている人

  • 住み慣れた自宅でこれからも暮らし続けたい人
  • 日によって体調の変化が大きく柔軟にサービスを利用したい人
  • 時間や回数を気にせずサービスを利用したい人

まず向いている人からですが、上記のようなケースに当てはまる人は利用する方が良いと言っていいでしょう。主に症状に変化が認められて、介護サービスの内容をその都度柔軟に変えていく必要がある介護者なら、小規模介護が向いています。

メリットの中にもあったように、顔なじみのスタッフが対応してくれるというのは思っている以上に精神的な影響があります。故に、環境の変化に敏感な人も同じく向いていると言えます。

向いていない人

  • ケアマネジャーやサービス事業者など、現在のサービスを継続したい人
  • サービスに対して要望が多い人
  • 必要なときだけ介護サービスを利用して費用を抑えたい人

逆に向いていない人についてですが、上記の通りとなります。ケアマネージャの変更が必要になる小規模多機能の介護では、他のサービスとの併用ができない分、現状のサービスで特に不満がないなら新しく検討する必要は低いと言えます。

小規模多機能型居宅介護に追加されたサービスがある?

少子高齢化は2022年現在も続いており、業界の需要の高まりに対して国や自治体も様々な制度を設け、取り巻いている環境は変わっています。そんな中、小規模多機能型居宅介護にも新たに追加されたサービスがあります。

2012年に始まった「看護小規模多機能型居宅介護」

それは、2012年に始まった「看護小規模多機能型居宅介護」です。名前としては看護が冠についただけですが、これは従来の通所、訪問、宿泊に加えて「訪問看護」サービスが組み合わさった複合介護サービスになります。

利用者の主治医と事業所との連携によって、医療行為も含んだサービスを年中いつでも利用可能です。小規模多機能の介護と、訪問看護の両方を組み合わせたサービスとして、要介護1~5の認定を受けている方が利用できます。

このサービスが誕生したのには、医療ニーズが高い利用者の状況によって適切な療養と生活支援を行う必要が高まった事があり、通常の介護サービスに加えて健康状態のアセスメント、心理的支援等も行われます。

小規模多機能型居宅介護について動画でおさらいしよう

小規模多機能型居宅介護について様々ご紹介してきましたが、これらをより詳しい専門の方が紹介している動画もあります。特徴、費用、利用者イメージなどが解説されています。

小規模多機能型居宅介護について理解して利用しよう

現在では様々ある介護関連のサービスの中でも、柔軟性に富んでいて幅広いサービスを受けられるというのが一番の特徴と言えます。是非ともこの制度とサービスについて理解し、必要に合わせて利用してみてください。

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