訪問介護員(ホームヘルパー)は、介護が必要な高齢者宅を訪問し、入浴、排泄、食事、移動などの日常生活の援助を行うことが主な仕事です。訪問介護員は定められた研修を修了している必要があります。現在、介護職員初任者研修は訪問介護の入門資格として位置づけられており、この講座を受講することがスタート地点となります。訪問介護員の具体的な仕事内容や給料事情について詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。

目次

訪問介護員(ホームヘルパー)とは?

訪問介護員とは、介護保険法に基づいて訪問介護サービスを提供する専門職のことです。介護保険法では、介護福祉士のほかに「政令で定める者」が訪問介護サービスを提供することが義務付けられています。

この「政令で定める者」とは、国が定める研修を修了した「訪問介護員」のことです。一般的にはホームヘルパーという呼び方の方が浸透していますが、介護保険法におけるホームヘルパーの正式名称は「訪問介護員」です。

訪問介護員の活躍の場所

それでは、訪問介護員はどのような場所で働いているのでしょうか。ここでは主な就職先や就業場所について解説します。

訪問介護の主な就職先

介護保険制度ができる前は、社会福祉協議会などの公的機関が訪問介護員の主な就職先でした。しかし、この介護保険制度が整備され、民間の訪問介護事業所が急増したことで、「訪問介護事業所」である「ヘルパーステーション」が訪問介護員の主な就業先となっています。

ヘルパーステーションは、介護保険で要介護(1~5)、要支援(1・2)と認定された人が利用できるサービスです。このサービスを受けるためには、利用者本人、居宅介護支援事業所、または地域包括支援センターからヘルパーステーションにサービスの依頼を行います。

その後、利用者と関係事業所との間でサービス計画の打ち合わせを行い、訪問介護計画書を作成します。利用者が訪問介護計画の内容に同意すればサービスが開始されます。

訪問介護の主な就業場所

訪問介護員は、利用者宅を訪問する機会が多く、主に身体介護や生活援助などを行います。当然のこととして、サービスは利用者本人のみに提供され、家族には提供されません。最近では、高齢者向け賃貸住宅で働くホームヘルパーも増えてきています。

提供するサービスに大きな違いはありません。主に対象となる利用者が快適に暮らせるように支援することに重点を置いています。

訪問介護員の仕事内容

訪問介護員の仕事は、大きく2つに分けられます。身の回りの世話と日常生活の援助です。「身体介護」とは、利用者の身体に直接触れる介護のことです。一方、「生活援助」とは、身体介護以外の日常生活における援助を行うことです。では、詳しい仕事内容を見てみましょう。

訪問介護員の仕事内容①生活援助

生活援助は、訪問介護員の主な仕事のひとつです。排泄や入浴、食事などの介護全般が含まれます。掃除や洗濯、食事の準備など、依頼があれば行うことができますが、あくまで日常生活を送るために必要な範囲にとどまります。

例えば、日常生活支援の範囲を超える作業としては、利用者以外の方の食事の調理、日常生活に必要な買い物の代行、庭の手入れ、部屋の模様替えなどがあります。

利用者からの依頼を断らなければならないのは心苦しいかもしれませんが、「自分にはできない仕事がある」ということを心に留めておくことが大切です。

訪問介護員の仕事内容②身体介護

身体介護サービスとは、身体に直接触れて介護を行うサービスのことです。自立支援・重度化防止サービス、その他専門的知識・技術を用いて行うサービスが含まれます。

これを実際の介護・介助に当てはめてみると、調理、食事、口腔ケアなど、食事に関する介助、入浴介助、衣服の着脱、清拭などの着替えの介助、外出の支援、血行障害や褥瘡予防のための寝返りなどの介助、排泄ケア等の仕事内容になります。

訪問介護員の仕事内容③通院介助

通院介助とは、「医療機関への患者さんの送迎介助」を指します。通常、介護保険制度では、訪問介護員がこのサービスを提供します。

患者さんから「自分では病院に行けないので、連れていってくれませんか」と頼まれたことがある訪問介護員も多いのではないでしょうか。

しかし、介護保険のサービス(保険給付)として通院介助を利用・実施するには条件があり、自治体によって対応が異なる場合があるので注意が必要です。

そもそも訪問介護は、利用者の「自宅」でサービスを提供することを目的としています。そのため、通院にはさまざまな制約があるのです。

訪問介護員の1日の仕事の流れ

では、訪問介護員の一日はどのようなものなのでしょうか。訪問介護の種類にかかわらず、さまざまな働き方がありますが、ここでは一般的な正社員の仕事の流れの一例をご紹介します。

正社員で働く訪問介護員の1日の流れ

正社員の場合、まずは事務所に出勤します。出社後、朝礼を行い、当日に確認しなければならないことを情報共有が行われます。その後、シフトに従って現場へ向かいます。

訪問介護は、利用者の自宅を訪問した時間が介護保険で請求されるのですが、勤務時間には移動時間も含まれます。車の中で事務作業を済ませたり、電話をかけたりと、隙間時間にできる作業を行う人も少なくありません。

時間に余裕があるときは、オフィスに戻り、休憩室で一息つくこともあります。ただし、仕事が立て込んでいるときは、車の中で休憩するときもあります。

仕事が終われば事務所に戻り、その日の日報を作成し、ケアマネジャーに報告します。そして17時30分頃に退社します。

パート(登録ヘルパー)で働く訪問介護員の1日の流れ

以下は、非常勤登録ヘルパーの1日の例です。登録ヘルパー・非常勤の場合、自宅と利用者宅を直行直帰することが多いでしょう。

シフトが入っている日は自宅から利用者宅へ直行し、身体介護や生活援助を行い、仕事後は利用者宅から直帰します。

自宅から利用者宅までの移動時間は勤務時間に含まれます。とはいえ、月に数回、研修や報告で事務所に行くこともあります。

訪問介護の仕事に有利な資格

介護の仕事をするには、資格が必要かと質問される方が多いですが、訪問介護員として働くには少なくとも介護職員初任者研修の受講が必要です。

訪問介護員の必須資格

訪問介護員になるためには、「介護職員初任者研修」を受講し、修了証の交付を受ける必要があります。

「介護職員初任者研修」は、2012年まで開講されていた「訪問介護員養成研修」と「介護職員基礎研修」を統合した講座で、在宅・施設を問わず介護業務に従事しようとする人を対象としています。

都道府県知事や市区町村が指定する民間の養成施設で開講していますので、詳しくは各都道府県の担当課にお問い合わせください。

なお、従来の「訪問介護員養成研修」「介護職員基礎研修」の1級または2級を修了した方は、「介護職員初任者研修」を修了したものとみなされ、引き続き訪問介護員として勤務することが可能です。

介護職員初任者研修は、講義と実技で構成されています。講義では、介護業務に従事するために必要な基礎知識、介護におけるコミュニケーションスキルなどを学び、演習では、実技や入浴・食事の方法などを学びます。

訪問介護員の給料や年収

訪問介護員の給料・平均年収ですが、2020年賃金構造基本統計調査によると、訪問介護員の正社員の平均月給は約26万円でした。

ただし、男女計は従業員10人以上の企業で、平均年齢は49.2歳、平均勤続年数は7.5年です。あくまで平均なので、キャリアやスキル、勤続年数によって異なる場合があります。

男性のみの平均月収は約28.4万円、平均年齢は42.9歳、平均勤続年数は5.2年です。一方女性の平均月収は25.3万円、平均年齢は50.8歳、平均勤続年数は8.2年となっているようです。

訪問介護員の仕事のやりがい

訪問介護員は基本的に1人で利用者に介護サービスを提供します。そのため、多くの人と一緒に仕事をするよりも、自分のペースで仕事をしたい人に向いています。

また、1人で仕事をするため、利用者に寄り添いやすく、自分の考える介護を実践しやすいというメリットもあります。

さらに、訪問介護員には様々な雇用形態があります。正社員、契約社員、パートタイムなど、自分に合った雇用形態を選ぶことができます。

勤務時間も自分の都合に合わせて調整しやすく、「育児などで長く専業主婦をしていたが、そろそろ仕事に復帰したい」「空いた時間に働きたい」という方には、自分のスケジュールに合わせて働ける訪問介護はおすすめです。

また、自宅近くで時間の融通が利く登録ヘルパーのパートタイム勤務も可能です。プライベートを大切にしながら働けるので、仕事と子育ての両立がしやすく、働く場所や時間の調整もしやすいと言えるでしょう。

ホームヘルパーの仕事の需要は多い

以上、訪問介護員の仕事と給与事情について説明しました。訪問介護には正社員以外にも「登録ヘルパー」という雇用形態があり、特に短時間で働きたい方には働きやすい職場と言えそうです。訪問介護員の求人は多く、その応募条件や給与は事業所によって異なります。ぜひ、いろいろな事業所を比較して、転職を成功させましょう。

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