認知症の方を介護する際や、知り合い、家族に認知症の方がいる場合、どんなことを行ったり言ったりしてはいけないのかを覚えておくことは大切です。今回は、認知症の人にやってはいけないこと言ってはいけない言葉をまとめてみましたので、ぜひ今後の参考にしてみてください。

目次

認知症の人にはやってはいけないこと・言ってはいけない言葉がある?

通常の人間関係ではさほど気にすることではなくても、認知症の人に対してはやってはいけないことや言ってはいけない言葉があります。その一番の理由は、本人も自分が認知症であることを自覚している場合が多いという点にあります。

本人も認知症であることを自覚

実は認知症の方の大半は、本人も自分が認知症であることを自覚しています。認知症になっても、急に重度の症状が出るわけではなく、少しずつ症状が出てくることがほとんどです。気持ちの面では、「自分はこうしなければ…」という思いを持っていてもなかなか思うようにできないことが徐々に増えていってしまうのです。

そんな中、本人を否定するような言葉や心無い言葉を聞いてしまうと深く傷つく可能性が高くなります。認知症を患っている方には特に、やってはいけないことや言ってはいけない言葉があるということを理解しておくことは大切です。

認知症の人にやってはいけないこと

では実際に、認知症の人に対してやってはいけない事とはいったいどの様な事なのでしょうか。特に注意しておきたい、9つの点について見ていきましょう。

やってはいけないこと①無理に検査を受けさせる

認知症の疑いが濃い場合、家族や周囲が検査を受けさせたいと思うのはごく自然なことかもしれません。しかし、本人にとっては納得していないのに無理に検査を受けることは大きなストレスになってしまいます。特に、認知症の検査の場合はなおさら本人は気乗りしないでしょう。

しっかりと本人と話し合って本当に納得したうえで検査を受ける必要があります。検査についての話の持ち出し方を工夫しましょう。例えば、当人が信頼しているかかりつけ医に、検査の必要性について話してもらうようお願いすることもできるかもしれません。

やってはいけないこと②行動や発言への否定

認知症の方の行動や発言に対して、それを否定するような行動はぜひ避けてください。認知症でなくても、否定されるといやな気持になりますが、認知症の方の場合はなおさらで、当人は何も間違ったことを言ったり、したりはしていないと感じているので、真っ向から否定されると深く傷ついてしまいかねません。

こうしたことを繰り返していると、認知症を患っている当人は心を閉ざしてしまう可能性があり、そうなるとその後のケアや支援を続けていくのが困難になってしまいますので、気を付けましょう。

やってはいけないこと③本人を無視したやり取り

ついつい認知症の方だという意識が働いて、当人がいるのに他の人にその人の様子について聞いたりしてしまうことがあるかもしれません。しかし、認知症の方はそれに気づくことが多く、自分がいるのに自分を無視したやり取りをしているのを見てプライドが傷つくことがあります。

また、本人の了解を得ずに何かその人のものを勝手に移動したりして、無視してしまうということも避ける必要があります。確認できることはまず当人に聞いてから、物事を進めていくのが最善です。

やってはいけないこと④認知症であることを周囲に言わない

認知症の方が家族にいる場合、ついつい恥ずかしいと感じて周囲には隠したくなるかもしれません。しかし、認知症を隠したままでいると、ご近所との誤解が生じてしまったり、ケアが遅れて認知症の症状が悪化したりしてしまうリスクもあります。

認知症の方には適切なサポートが必要であり、それは家族だけでなくご近所や医療機関等の協力も欠かせないものとなります。認知症の方が家族にいる事実を決して恥ずかしい問題だと思わずに、遠慮なく周囲の助けを求めていくことが大切です。

やってはいけないこと⑤できないことをさせる

これ以上認知症の症状を悪化させないように…と考えて、認知症の方にトレーニングや何らかの対処法を進めることがあるかもしれません。もちろんこれは、その方の限界に応じた適切なものであれば効果的な場合もありますが、本人が気乗りしないのに強引に行わせるのはストレスになるだけで逆効果です。

できないことを無理やりさせられて実際にできなかった場合、それはより一層のストレスを本人に感じさせるものとなり、自信の喪失や不安の増大、さらには症状の悪化にもつながりかねません。

やってはいけないこと⑥叱ったり責めたりする

叱ったり責めたりすることも、認知症の方に対してはやらないように注意が必要です。認知症を患っている方は、自分が間違ったことをしてしまったという自覚がないことがほとんどで、それに対して叱られると、恐怖や不安を感じてしまいます。

同意できないことがあったとしても、本人の言い分を一旦受け入れて、できる限り理解を示すようにしましょう。そうすれば、本人は叱られたとか責められたと感じることはなく、スムーズに物事を運んでいくことができます。

やってはいけないこと⑦家に閉じ込めてしまう

認知症の方が徘徊して事故に巻き込まれたり、面倒なことになったりするのを防ぐために、家に閉じ込めてしまおうと考える家庭も少なくありません。ただし、強引に家に閉じ込めようとすると、認知症の方はそれに反発して無理やり外に出ようとして、より危険な行動を取ってしまうことがあります。

こうしたリスクを防ぐためにも、無理に家に閉じ込めるのではなく、徘徊する理由を優しく聞いてあげたり、適度な運動ができるように助けてあげたり、見守りシステムなどを活用していくことができます。

やってはいけないこと⑧環境を変えてしまう

認知症の方は、環境の変化に順応しにくいという特徴があります。新しい情報を記憶することが難しく、突然環境が変わると認知症の症状自体が悪化してしまうこともあります。どうしても環境を変えなければいけない場合には、認知症の方の馴染みのものなどを置いて、少しでも安心してもらえるようにしましょう。

やってはいけないこと⑨何もさせない

認知症の方は、以前できていたことが徐々にできなくなっていきます。それでも周囲が、どうせできないから…と決めつけて、当人に何もさせないようにしてしまうと、「自分は何もできない…」と落ち込んでしまい。症状の悪化につながることがあります。

何もさせないのではなく、本人が得意としていることなどがあれば積極的にしてもらうように働きかけることで、当人の自信を付けることもでき不安を和らげることにつながります。

認知症の人に言ってはいけない言葉

認知症の人に対しては、やってはいけないことだけでなく、言ってはいけない言葉もあります。ここでは、特に気を付けたい5つの種類の言葉について見ていきましょう。

激励の言葉

ついつい応援の意味を込めて「頑張って」とか「できるでしょ」と言葉をかけることがあるかもしれません。しかしこれは、認知症の方には言わないようにする必要があります。激励の言葉をかけてしまうと、できていないから頑張れと言われていると感じて、落ち込んでしまい自信の喪失につながることがあります。

認知症の方には激励の言葉をかけるのではなく、「…してくれて本当にありがとう」という感謝の言葉や、「…ができるなんてすごいですね!」という肯定の言葉をかけてあげるのが効果的です。

忘れていることを指摘する言葉

認知症の方はその症状として、ついさっきご飯を食べたことや、自分がものを置いた場所などをすぐに忘れてしまうことが多くなります。この状況で「さっき食べたでしょ、忘れたの?」などと声をかけるのはNGです。

当人は記憶していないことは絶対にしていないと思っているので、忘れていることを指摘してしまうと、「なぜそんなことを言われなければいけないのか」と、怒りや孤独を感じて状況が悪化してしまうことがあるのです。

不注意を責める言葉

認知症の方に、「どこかに忘れてきたんじゃないの」というような、その人の不注意を責めるような言葉をかけないようにすることも大切です。責めるのではなく、「あら、それは大変!」というような言葉をかけて、自分も共感していることを示すようにしましょう。

強要する言葉

認知症を患っている方は、他の人が言っていることはわかっても、なぜそう言っているのかを認識することが難しい場合が多々あります。「これは絶対やっちゃだめ!」「早くこれをして!」というような強要する言葉をかけると、命令されていることは認識できても、なぜそう言われているかを理解できないのです。

この場合、自分は”脅されている”とか”理不尽な命令を受けている”と感じてしまう場合があり、最終的には心を閉ざしてしまうというリスクがあります。できるだけ辛抱強く接して、決して強要する言葉はかけることのないようにしましょう。

失敗を非難する言葉

失敗をした時にそれを非難された場合、認知症の方はとても不安な気持ちになってしまいます。集中力が低下したり物忘れをすることは当然と思い、こちら側が理解を示してあげる気持ちが大切です。

何かミスをした際にも、「大丈夫ですよ」とか「ごめんなさいね、わかりにくかったですよね」などと優しい言葉をかけて、決して本人を非難することがないよう親切に対応していきましょう。

認知症の人に怒ってはいけない理由とは

認知症の人には怒ってはいけません。認知症の人は自分が”怒られた”ということは理解できても、なぜ怒られたのかという理由を理解することが難しくなります。そうなると、「怒られて悲しい」「怖い」という負の感情だけが残ってしまい、不安感を増して認知症の悪化につながってしまうリスクがあるのです。

認知症の人への症状別の接し方

では、認知症の人に実際にどのように接していくことができるのでしょうか。考えられる5つの症状に対して、どのような接し方ができるかについて紹介していきますので、参考にしてみてください。

妄想への接し方

妄想を膨らませて周囲を疑ったりしてしまうことが、認知症の症状として見られることがあります。この時に怒ったりそれを頭ごなしに否定してしまうのではなく、できる限り共感して理解してあげるようにしましょう。そうすれば、当人は満足して他のことに関心を向けやすくなります。

見当識障害への接し方

認知症の方は、暗闇で恐怖を感じたり、以前の怖い体験を思い出して大声を出したりしてしまう「見当識障害」という症状が出ることもあります。この場合も当人に安心感を与えることが大切です。部屋を少し明るくしてあげたり、ラジオやテレビをつけてあげるなどして不安を取り除いてあげましょう。

幻覚・幻聴への接し方

認知症の方は幻覚や幻聴で不安を感じたり、取り乱したりしてしまうことがあります。この時も周囲としては辛抱が必要となります。当人の言葉を否定するのではなく、ゆっくり聞いて話を受け入れてあげましょう。そうすることで徐々に落ち着きを取り戻せるかもしれません。

当人が幻覚や幻聴によって恐怖を感じひどく取り乱している場合は、担当医に相談することで解決策を見つけられることもあります。状況が良くならない場合は、自分たちだけで悩まず助けてもらうのが良いでしょう。

夕暮れ症候群への接し方

夕暮れ症候群という症状も時折認知症の方に見られます。これは夕方になると、自宅にいるのに荷物をまとめて”自宅に帰ろうとする”症状です。夕方になると、「よその家に長居してしまった」と感じ、早く帰らなければという意識が働いてしまうようです。

これに対しては、「ここはあなたの家ですよ」と言うのではなく、「もう少しゆっくりしていってください」などと優しく声をかけて、もう少しとどまるよう促しましょう。そのようにして、当人が落ち着きを取り戻せるように親切に助けてあげてください。

易怒性への接し方

認知症を患っている方の中には、「易怒性」の症状を見せる方がいます。これは、何らかの不満や不安が引き金となって、大声を出したり攻撃的になって怒りを表すようになる症状のことを言います。

自分が認知症であると宣告を受けた方も、それを認めたくないという気持ちが強く働いて「自分は物忘れなんかしない!」とか「自分は絶対に認知症なんかじゃない!」と言って怒りを爆発させてしまうこともあります。

これに対する対応の仕方としては、当人の気持ちを思いやってじっくりと話を聞いてあげること、それが難しければ別の人に対応を変わってもらうこと、さらには本人が落ち着く環境に移動してみることなどが挙げられます。

このような症状が出た時は周囲も大変で対応にも困ってしまうかもしれませんが、本人も辛い思いをしたり不安を感じていることをじっくりと考えて、冷静に優しく対応していくことを心がけてください。

認知症の人へのやってはいけないことを理解して接しよう

認知症の人に対しては、やってはいけないことや言ってはいけない言葉があります。周囲としても、認知症の人の介助やサポートをしていくのは大変なことがあるのも事実ですが、状況をできるだけ悪化させることのないよう、ぜひ辛抱しつつ親切で優しい対応をしてください。

また認知症の方のサポートに関しては、自分たちだけで悩むのではなく、他の人や機関のサポートも積極的に受け入れていきましょう。最善を尽くして、お互いのストレスを最小限に抑えていくよう工夫することが大切です。

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