高齢化社会が叫ばれるようになってから久しい日本社会において、介護を行う介護士の存在は必要不可欠とすらいえる事態になりました。しかし、肝心の介護士の給料事情というのは、あまり芳しくない様です。今回は、なぜ介護士の給料が低いのか、そして年収アップの方法なども解説します。

目次

介護士の給料や年収はどれくらい?

日本国内における高齢者の比率は、世界的に見ても類を見ないレベルで増加しており、介護施設やそこで実際に介護を行う介護士の存在は欠かせません。しかし、どうにも給料は低いと言われているようです。

男女別で見る介護士の給料

実際の男女別の介護士の給料がどの程度なのかをまず見てみましょう。下にまとめたのは、女性、男性それぞれの介護士の平均年齢から、平均月収、年収、更にはボーナス額になります。

女性介護士の平均年齢 43.5歳
平均勤続年数 7.2年
平均年収 約326万円
平均月収 約23万円
平均ボーナス額 約49万円
男性介護士の平均年齢 39歳
平均勤続年数 6.8年
平均年収 約364万円
平均月収 約25万円
平均ボーナス額 約58万円

女性よりも男性の方が平均年齢は若干若めであり、肝心の月収、年収については男性の方が高い事が分かります。月収では2万円、年収だと30万円近い違いがあるのです。

勤務形態別で見る介護士の給料

続いて、勤務形態、雇用形態別に介護士の給料を見てみましょう。常勤、つまり正社員待遇の介護士の場合には、令和2年度介護従事者処遇等調査結果によれば、平均年収は21.8万円、ボーナスが70~100万円で、年収は350万円前後になります。

続いて、パート、アルバイト、派遣社員などの非常勤の給料についてですが、時給が950円から1,300円前後のものが多く、中でもアルバイトの場合には各都道府県で設定されている最低賃金に近いものも多い様です。

介護職のパートやアルバイトの平均時給は975円、派遣社員の平均時給が1,321円というデータもあり、パートなどよりも派遣社員の方が給料的には高い事が分かります。

介護士の給料が安い理由とは?

日本における平均の年収は、2019年時点で436万円となっています。表に記載した男女別の年収を見ても、給料は比較的安くなっています。では、なぜ介護士の給料は一般よりも低くなっているのでしょうか?

給料が安い理由①介護報酬が少ない

まず1つ目に考えられる理由は、介護報酬が少ない事です。介護施設などの事業者は、介護保険に該当する介護サービスを提供すると、対価として介護報酬を受け取れます。その為、各サービスの単価は介護報酬によって定まる公定価格になります。

サービスの単価、内容というのは3年に一度のサイクルで見直しが行われますが、どう見直し改定がされるかは国の方針に寄るところが大きいです。元々介護報酬は1割から3割を利用者が、残りを保険料と公費で賄っていて、報酬増額はイコールで国民の負担増加につながります。

その為、おいそれと介護報酬を上げる事が出来ずにいます。そして、事業者は運営費等を差し引いた分を従業員に支給しますので、大本が増えなければ給料増額も難しいのです。

給料が安い理由②人員を減らせない

2つ目が、人員を減らす事が出来ないという理由になります。介護施設というのは、施設利用者3人に就き介護職員1名、看護師を1名以上配置というように、人員の配置に関してはルールが定められています

施設の種類、規模の大きさによってそのルールの内容、ハイチの基準に違いはあるものの、どの介護施設にも必ず人員に関する規定はあります。こうしたルールが決められている以上、事業者側が自由に人数を決められないのです。

個々人の給料を上げたいのならば、働いている人員を減らしてアップさせればよい、という考えも浮かぶものの、ルールがある以上それが出来ません。また、仕事柄人件費率も高くなるので、企業側の努力だけでは中々給料を上げるのも難しいです。

給料が安い理由③専門性を軽視されている

3つ目に考えられるのは、介護士の専門性に対しての軽視です。介護の仕事というのは、国家資格などを特に取得していなくても始められますので、誰にでもできる仕事、高齢者の世話さえできれば成り立つ仕事、というように捉えられてしまいがちです。

実際の介護現場においては、特別な技術、および専門的な知識が必要になる場面もあり、そうした際の対処に関しては豊富な経験と能力が試される事となります。

ですが、介護業界というのは需要に対して人手の不足に喘いでいます。これを解消すべく、安い給料で多くの募集をかけている事も少なくはありません。専門性への不理解が、介護士の給料の低さにも少なからず影響しているのです。

給料が安い理由④内部留保額が多い

もう1つ、多くの内部留保額があるという理由も考えられます。内部留保と言えば大企業などでよく言われている話で、企業の出した利益から税金や配当、役員報酬などの支出を差し引き、社内に蓄積している資金の事です。

施設運営の安定を図るための資産でもありますので、給与には使用しないのが一般的です。数年前の調査によれば、社会福祉法人の運営する老人ホーム1施設当たりの内部留保額は、1.6億円程とされています。

内部留保されている資金は職員等に還元されるものではありませんから、利益からの留保額が多くなればなるほど、給料の金額も期待できなくなります。

介護士が給料を上げる方法

この様に、介護士という仕事は特段報酬の多いものではなく、それどころかむしろ安い方で、様々な理由で給料が上がりにくくなっているのです。ですが、給料を上げる方法もいくつか考えられます。

給料を上げる方法①資格を取得する

まず真っ先に考えられるのは、専門の資格を取得する事です。介護士を無資格、もしくは未経験でスタートしても、勤務する過程で介護福祉士の資格を取得すれば、給料、年収の増額が確実に狙えます。

差額については、保有資格のない場合の給料と保有している人の月収には、約5万円程になるとされており、年収に換算すれば60万円に上ります。介護福祉士は国家資格ですので、長く介護の業界に就きたいという方には特に取得を推奨します。

給料を上げる方法②上の役職を目指す

2つ目は、上の役職に就くようにする事です。これは介護業界ではなく一般の会社などでも言える事ですが、やはり役職に就くなどの上の立場になれば、その分の責任も付帯するものの、給料も間違いなく上がります。

介護職の中にも、主任、ユニット長、サービス提供責任者といった、上の立場になる役職があります。勿論、役職を上げるためには相応の実務経験や資格、本人の能力などが問われることになります。

給料を上げる方法③夜勤の回数を増やす

3つ目は、夜勤の回数を増加させることになります。一般的な仕事やアルバイトなどであっても、深夜などに働いた場合にはその分時給が上がるなどの規定があります。介護の現場においても、夜勤は日勤と比較しても給与額アップを狙う事ができます。

介護施設というのは、24時間体制で取り組まなければなりませんので、必然的に利用者が寝静まっている時間帯に勤務する夜勤が存在します。通常の給料とは別に夜勤手当が発生し、施設によっても金額に差はあるものの、確実に給料増額を狙える手段の1つになります。

給料を上げる方法④長く勤務する

単純な方法になりますが、長く勤務する事も給与アップにつながります。これも一般の仕事などと同じく、介護の仕事に継続的に就いていれば、給料は上がっていきます。介護をずっと続けられる自信があるのであれば、辞めずに取り組んでみるべきです。

具体的な給料の差額についてですが、勤続が5年以上だと月収は29万円前後、10年以上だと32万円、20年以上勤めていると40万円近くの月収が発生するとも言われています。人間関係や職場に不満が無く続けられそうならば、この勤続年数を頼りにしても良いでしょう。

給料を上げる方法⑤転職する

もう1つ、転職するというのも方法の1つです。介護の業界の中でも様々な仕事内容が存在し、施設なのか、訪問介護なのかなどの事業所の種類、規模によっても、給与や待遇面には違いがあります。

同じ介護の業界で、かつより給料が高い職場で働きたいというのであれば、求人を見てみましょう。できる限り幅広い募集を見て、給料、福利厚生関係を比較し、今よりも良いと思える場所を探してみてください。

既に介護の現場、業界に勤めている方で、経験と資格を有している方であれば、より良い条件の職場への転職の可能性は十分にあるといえます。

介護士や介護福祉士の給料は今後どうなる?

今後、介護士や介護福祉士など、介護に携わる方たちの待遇面が改善される可能性は十分に高いと考えられます。厚生労働省も給料増加の対策として「介護職員処遇改善加算」などを設けています。

また、勤続10年以上の介護現場で働く介護福祉士について、少なくとも1人ずつの賃金を月額平均8万円増加、または年収を440万円以上にするという案も出ており、これから待遇に変化があってもおかしくはありません。

今後の介護士の給料アップに期待

現状としては、大変な事も多い中で給料が比較的低い介護業界ではあるものの、近年は国が待遇面の見直しをするなど、改善に向かう兆しがあります。現在勤めている方も、こうした流れがある事を忘れないでください。

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