高齢者が家族にいる方や施設で働く方の中には、気がついたらまた寝ている、最近寝てばかりだ、と感じられることがあるかもしれません。もしかすると、こうした症状は「傾眠症」である場合があります。傾眠は高齢者に多く見られる症状で、時には病気のサインとして表面下することもあるので注意が必要です。当記事では、高齢者を介護する方に向けて、傾眠症の原因や症状、対処法について紹介したいと思います。

目次

高齢者が一日中寝ている傾眠の症状とは?

傾眠症とは、周囲からの軽い刺激で意識が回復する程度の意識障害です。傾眠症の人は時間や場所がわからなくなる傾向があり、直前に起こったことの記憶がない場合もあります。介護の分野では広義に使われ、昼夜逆転や浅い眠りを繰り返すなど、日中に浅い眠りをする人も含まれます。

しかし、実は食事不足による脱水症状や栄養失調、運動不足による筋力低下などを引き起こすこともあるため、非常に危険な状態なのです。そのため、「寝てばかりだ」と軽く考えず、日頃から傾眠の度合い等意識しておくことが大切です。

傾眠を起こす主な原因

それでは、ここからはどのような原因で傾眠が引き起こされるのか、その原因について見ていきましょう。ご家族に当てはまるかどうかをチェックしてみてください。

傾眠の原因①脱水症状

高齢者に多いのは、脱水症状から眠気を感じ、傾眠に至る場合です。室内にいるから大丈夫だろうと思ってしまいがちですが、実は脱水は、室内にいても起こることがあります。体内の水分量が減少している高齢者は特に脱水を起こしやすいので、摂取している水分量や排泄量に注意することが必要です。

傾眠の原因②認知症

認知症の方の多くは、生活習慣が乱れ、昼夜逆転の生活をしています。そのため、夜間の睡眠不足により、日中に眠気を感じることが多いようです。認知症の初期には、無気力も傾眠の原因になることがあります。

日中は意識的に活動し、夜はしっかりと睡眠をとることが大切です。認知症が進行すると、傾眠以外にも理解しがたい行動をとることがあります。ご家族もなかなか現実を受け止められず、今後の介護に不安を抱かれる方も少なくありません。

そうした不安を解消するためにも、できるだけ早い段階でケアプランの検討を始めることをおすすめします。認知症と診断されると、もちろんご家族もショックを受けますが、何より不安を感じるのは認知症の方ご本人です。

本人の気持ちに寄り添いながら、本人や家族の希望に沿った介護計画を考えることが大切です。介護に関する正しい知識を身につけ、ご本人とご家族にとってより良い介護を目指しましょう。

傾眠の原因③薬の副作用

脳細胞の興奮を抑える抗てんかん薬は、副作用として傾眠を引き起こしやすい傾向があります。また、認知症治療薬の中にも、副作用として軽い傾眠を起こす傾向のあるものがあります。薬の種類によっては、副作用について医師や薬剤師に確認した上で使用することが大切です。

例えば、花粉症の薬には、傾眠の原因となる抗ヒスタミン剤が含まれています。医師の処方箋がなくてもドラッグストアで買える身近な市販の花粉症薬も多いので、薬剤師に相談して、眠くなる成分がなるべく少ないものを選びましょう。

傾眠の原因④加齢

また、大きな原因がなくても、年齢とともに自然と傾眠が強くなることがあります。夜眠れなくなることで、昼夜のサイクルが逆転し、日中に眠れなくなることもあります。

傾眠の高齢者に対して介護士が気を付けること

高齢者の傾眠の原因はさまざまですが、中には深刻なものもあり、できるだけ早く治療する必要があります。ここでは、介護する側が気をつけるべきポイントを取り上げます。

病気が原因の傾眠がある

持続的な傾眠にはさまざまな原因がありますが、例えば、体に炎症が起きている場合や、発熱など風邪に似た症状に体が対処するため、強制的に傾眠という形でシャットダウンさせている可能性があります。

このような場合、病気が治ったり熱が下がったりすると、自然に元に戻っていきます。また、慢性硬膜下血腫の可能性もあります。

慢性硬膜下血腫とは、頭を打ったときに血管が傷つき、硬膜と脳の間に血腫ができる脳の病気です。高齢者の血管はもろく、頭を少しぶつけただけでも硬膜下血腫になることがあります。

症状は頭部外傷後すぐには現れず、1~2ヶ月くらい経ってから現れることが多いようです。小さな血腫であれば自然に治ることもありますが、一般的には手術が必要になるため、早期発見が大切です。

傾眠のもう一つの原因には、食事性低血圧があります。アルツハイマー病、脳血管障害、高血圧、糖尿病、高齢などが原因で起こり、降圧剤や利尿剤を服用している人に多くみられます。急激な血圧の低下を防ぐためには、食生活を見直し、ゆっくりと時間をかけて食事をすることが大切です。

誤嚥しないようにする

傾眠傾向があると、食欲不振や持病の悪化につながることがあります。薬の変更により傾眠の増加や食欲の減退を感じた場合は、医師や看護スタッフにその情報を伝えましょう。食事中に誤嚥する危険性があります。

傾眠のある患者さんは、噛まずに飲み込むことが難しかったり、スープなどを咳き込んでしまうことがあります。患者さんが起きているときに、どのような食事をどのように提供するか、医師や介護スタッフ、管理栄養士と相談しておくとよいでしょう。

介護事故を未然に防ぐ

介護施設では、多くの患者さんが椅子や車椅子で寝ています。転倒や転落などの事故が起こる危険性があります。安全を確保するために、日頃から目を離さず、声かけをすることが大切です。

傾眠傾向がある高齢者への対処法

高齢者の傾眠が疑われる場合は、ご家族や介護者の方で、対策を講じることが大切です。日中の傾眠が続くと、飲んだり食べたりできなくなったり、必要なケアができなくなるなどの問題が生じることがあります。それでは、傾眠症の対処法について見ていきましょう。

話しかけたり外に連れ出したりする

まずは、積極的に話しかけることで、起きている時間を長くするように試してみましょう。また、できるなら買い物や散歩などのアクティビティーに参加させてあげることで状況が改善するかもしれません。適度な運動は身体能力を向上させるだけでなく、日中活動することで夜間の快眠にもつながります。

薬や食事を見直す

また、かかりつけの医師に相談することも大切です。一番心配なのは、内臓疾患などの病気が原因である可能性です。その場合、基礎疾患の治療を行うことで、傾眠の傾向がなくなる可能性があります。

もし、傾眠が薬の副作用によるものだと思われる場合は、主治医に相談して薬の見直しをしてみてください。家族も薬の成分や副作用を把握し、日頃から患者さんの行動を注意深く観察しておくことが必要です。

できれば気づいた点を記録を残しておくとよいでしょう。また、もし食後に傾眠の傾向が強く出るようなら、食事や食習慣を見直すことが望まれます。高齢者の食事について気になることがあれば、医師に相談するのも良いでしょう。

こまめに水分を摂取させる

また、こまめな水分補給は熱中症の予防につながります。また、早朝の時間帯に意識して水分を摂ることで、傾眠傾向を緩和することが可能になるといわれています。

健康維持のためにも水分補給は欠かせませんので、気をつけるようにしてください。夏の一定期間には重度の脱水症状が多く見られますが、かくれ脱水を含む脱水症状は夏に限ったことではありません。

高齢者の水分補給に有効なのは、1日の水分摂取量を1500mlを目安にすることです。水分(お茶などを含む)に加え、食事や汁物などで補うことで、1500ml以上の水分を摂取することが可能です。

例えば、昆布茶や味噌汁にはミネラルが含まれており、適量摂取することで塩分補給や熱中症予防に効果的です。1日にコップ1杯(約200ml)の水を6~8回飲むのがおすすめです。

タイミングとしては、朝起きた時、朝食時、昼食時、夕食時、入浴後、就寝前に水を飲むことを習慣化するとよいでしょう。

医師やスタッフと協力して傾眠に対処しよう

以上のように、高齢者の傾眠には様々な原因があります。介護の現場で日中の傾眠が見られる場合、高齢ということもあり、生活リズムが乱れているケースが大半です。

まずは、昼夜逆転の傾向がないかなど、状態を観察して対処法を考えましょう。とはいえ、急に傾眠の頻度が高くなった、あるいは強くなった場合や、生活リズムが整っているはずなのに傾眠傾向が強い場合は、他の原因が考えられます。

重い病気が隠れている可能性もありますので、手遅れになるまえに、早めに主治医や経験のある看護スタッフに相談し、多角的にアプローチしましょう。

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