介護の分野では、似たような言葉がよく使われ、なんとなく理解しているつもりでも、実はまったく違う意味だったということがあります。例えば、起床介助、離床介助、就寝介助、臥床介助など、紛らわしい言葉が使われるのを聞いたことがあるでしょう。そこで、今回は、普段は聞き慣れないこれらの言葉が介護の現場で何を示しているのかを確認しておきましょう。

目次

臥床の意味とは?

「臥床(がしょう)」とはベッドや布団に横たわることです。仰向けに寝ることを「仰臥位」、横向きに寝ることを「横臥位」、うつ伏せに寝ることを「腹臥位・腹臥位」といいます。

介護の現場では「臥床介助」という言葉がよく使われ、目ざめている状態の患者を寝かせることを指します。例えば、車いすに座っている人をベッドに寝かせ、おむつを交換する場合などは「臥床介助」を行います。

通常、自由に動ける人は寝ている間に無意識に何度も寝返りを打ち、体位や姿勢を変えています。しかし、障害や高齢のために自分で体を動かせない人は、寝返りがうまく打てません。

そのため、体にかかる圧力を分散させることができず、結果的に負担が大きくなってしまうのです。また、寝たきりの状態で長時間同じ姿勢でいると、体の同じ部分に圧力が集中し、血液の流れが悪くなってしまいます。

その結果、床ずれや血行障害、痛み、感覚マヒなどが引き起こされることがあります。血行不良は床ずれだけでなく、全身の血液循環に影響を与え、心臓や肺の機能低下にもつながるため大変危険です。

これらの症状を防ぐためには、定期的に体勢を変えて血流を良くしておくことが大切です。基本的には、2時間以上同じ姿勢でいることがないように、こまめに体勢を変えることが大切です。介護の中では、「臥床介助」以外にも、さまざまな体位変換が行われます。

臥位の3つの種類

次に、「臥床(がしょう)」の種類を紹介します。「臥床(がしょう)」には大きく分けて、「仰臥位」「側臥位」「腹臥位」の3つの体位があります。確認しておきましょう。

種類①仰臥位

仰臥位は、仰向けに寝た状態です。お腹と顔を上に向けて、下肢を伸ばした姿勢を取ります。

種類②側臥位

側臥位(そくがい)とは、横向きに寝たときの姿勢です。横向きにまっすぐ寝かせると不安定なことが多く、腕が圧迫されることがあるので、上肢を前に引いて脱力させます。また、不安定なため、背中にクッションなどを入れるとよいでしょう。

種類③腹臥位

腹臥位(ふくがい)とは、顔を無理のない範囲で横に向けて、身体はうつ伏せにする姿勢のことです。下肢か上肢のどちらかを曲げて寝かせると、リラックスした姿勢になります。「伏臥位」と書かれることもあります。

臥床状態が長く続く危険性とは?

では、ここからは、長期臥床による弊害について見ていきましょう。脳血管障害や骨折などの病気やケガによって、長時間のベッド上安静を余儀なくされることがあります。また、過度に長時間の臥床や安静を続けると、心身の機能が低下し、廃用症候群となる恐れも生じます。

臥床が長く危険性①筋力の低下

長期臥床の「長期」の定義はあいまいですが、臥床が一定期間続く状態を指し、過度の臥床と活動量の低下により身体に起こるさまざまな状態を「廃用症候群」と呼びます。

かつては、重症患者の傷病回復には安静臥床が有用と考えられていましたが、安静臥床による合併症がその後の患者のQOLに影響を与える可能性があり、早期の離床が必要と考えられるようになりました。

治療と並行して早期にリハビリを開始することの重要性は、2008年の診療報酬改定で「早期離床・リハビリテーション実施加算」が新設されたことからも伺えます。また、早期かつ集中的なリハビリテーションは、平均在院日数の短縮に有効であると言えます。

健康な人でも寝たきりの状態が続くと、1週間で10~15%の筋力が低下すると言われていますが、身体機能が低下した高齢者は廃用症候群になりやすく、機能回復に若い人よりも時間がかかると言われています。

廃用症候群が続くと、寝たきりの状態が続き、やがて寝たきりになって自立した生活が送れなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。

臥床が長く危険性②認知機能の低下

病気や骨折、けがなどによる長期間の寝たきりは、さまざまな機能に悪影響を及ぼします。認知機能の低下が進行すると、「認知症」や「生活不活発病」の発症につながる可能性があります。

その予防策として、病院や介護施設では、リハビリテーションのために早期の離床を促すなど、寝たきりや機能低下の予防に取り組んでいます。日々、介護施設で働く介護士にとって、「寝たきりの方が楽だから」というのは事実かもしれません。

しかし、患者さんのQOLを向上させるためには、長期間寝たきりの患者さんの体調を見ながら離床を促し、運動器の機能向上などの予防策を講じることが重要であると言えます。

臥床介助以外で知っておきたい介護用語

介護で良く使われる言葉の中には、「起床介助」「離床介助」「就寝介助」「臥床介助」などがあり、どれも同じように思われるかもしれませんが、厳密には違いがあります。ここでは、その意味の違いと、介護の現場でこれらの言葉がどのような意味を持つのかについて解説します。

介護用語①離床介助

「臥床」の反対語は「離床」で、横になっている状態から起き上がることを指します。介護士はベッドに寝ている利用者をトイレに誘導したり、入浴のために起き上がらせたりと、寝ている状態から起き上がるための手助けをします。これを「離床介助」と呼びます。

介護用語②起床介助

また、似たような言葉として「起床介助」があります。これは、介護士が朝、患者さんを起こすときに行う一連の動作のことを指します。

朝、介護士が患者の部屋に行き、「起きてください」と声をかけてることから始まり、着替えやオムツの交換、洗面といったいわゆる朝の身支度を行うのが目的です。つまり患者の一日は、介護者の「起床介助」から始まるという訳です。

介護用語③就寝介助

「就寝介助」というと「臥床」と同じように聞こえるかもしれませんが、これはただ横に寝かせるだけでなく、「寝る前」のケア全般を指す言葉です。介護士は、歯磨き、着替え、排泄介助、寝かしつけなど、患者さんが眠りにつくまでの一連の流れをサポートします。

体位変換のコツとは

体位変換を行うときは、必ず患者さんに声をかけ、準備をしてもらってください。例えば、「これから体を横に動かしますね」など、どのように体を動かすかを患者さんに伝えることがとても大切です。

また、最初だけでなく、体位変換の際にも「次は足を上げますね」のように声をかけ、「準備はいいですか」と呼びかけることも大切です。

患者さんが協力できるようであれば、声をかけることで「体を動かそうとしている」という意識が芽生え、力を入れることができるようになります。

身体の構造を理解していれば、より少ない力で体位変換を行うことが可能です。無理な体位変換は、介護される患者さんに苦痛を与えるだけでなく、介護する側にも身体的負担がかかります。

重心をなるべく近づけることで、楽に移動することができます。体位変換をスムーズに行うためには、ベッドと身体の接触面積をできるだけ少なくすることが重要です。

ベッドとの接触面積が多すぎると摩擦が大きくなり、より大きな力が必要になってしまいます。摩擦を少なくすることで、必要最小限の力で体の位置を変えることができます。

体位変換の注意点とは

体位変換の際に最も重要なことは、介護者が自分のペースで急に行わないことです。声をかけずに無理に動かすと、患者さんが不安になるだけでなく、筋肉が硬くなり、思わぬケガをすることもあります。

安心して介護を受けられるように、体位変換の際には必ず声掛けをし、どのように動かすかを伝えて、準備を整えておきましょう。

無理に動かそうとすると、介護する人の体に負担がかかり、ケガをする危険性があります。少ない力で介助できるように、ベッドの高さや力加減を調整して、体への負担を減らすようにしましょう。

体位変換のどの部分でも患者さんに手伝ってもらうと、介護者の負担が軽くなるだけでなく、患者さん自身の能力の維持・向上にもつながります。常に介助するのではなく、できるところから協力してもらい、患者さんの自立を促すことが大切です。

介護士なら臥床介助への知識を深めておこう

以上、介護に携わるなら知っておきたい「臥床」について解説しましたが、いかがでしたか?長期間の安静が必要な方の中には、脳血管障害や骨折などの「病気」や「ケガ」を患っている方もいらっしゃいます。

しかし、横になっている状態が続けば、さまざまな臓器機能が低下し、「認知症」や「廃用症候群」を発症する可能性が出てきます。体力・筋力が健康な人でも、インフルエンザで1週間も「横になっている」と、同じような症状が出ることがあります。

1週間で足の筋力が20%弱まることもあり、長く寝たままの状態が続くと「廃用症候群」になりやすく、高齢者の介護は若い人に比べて機能回復に時間がかかります。こうした問題をできるだけ減らすためには、「臥床」介助で体を動かしてあげることが重要です。

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