様々な人生経験やキャリアを積んできた50代は、他の年代と比べて多様な利用者に対応しやすいため、介護の仕事に向いていると言えます。とはいえ、転職活動には長い時間がかかりやすいため、施設の種類や働き方を重視することが大切です。そこで今回は、50代の転職の実態と成功するためのコツをご紹介します。

目次

50代の介護職への転職の現状は?

福祉人材センターへの新規求職登録時の年齢傾向を見ると、40代が27.4%、50代が23.8%と続き、40代と50代が半数を占めています。

資格別では、介護職員初任者研修修了者が26.3%、介護福祉士が23.8%となっており、介護福祉士の資格を持っている求職者が多いようです。

このデータから、転職者の半数は介護職に関する資格を持っていることがわかります。また、介護業界経験者の場合、50代は長年の経験がある方が多く、即戦力として若手への指導が期待できます。

2018年度、政府はさまざまな年代の方が介護職に就きやすくするため、新たに2つの研修制度を設けました。

「入門的研修」とは、介護業務の入門的な知識・技術を習得するための研修で、「生活援助従事者研修」とは、訪問介護における生活援助のみを行うための研修です。今後、これらの資格を取得して転職する人も出てくると思われます。

50代からの転職は厳しい?

日本では、まだまだ年功序列が根強く残っている企業が多いと言われています。50代でも安定した給与や役職が与えられることが多いため、いざ50代の新社員を雇うことに二の足を踏む企業が多くなりがちです。

未経験の若手社員をポテンシャルで採用し、育てていくのとは違い、50代の求人は即戦力がメインとなります。

企業は入社後すぐに指示通りに動いて成果を出せる人材を求めていることを考えると、50代での就職がいかに厳しいかを計り知ることができるのではないでしょうか。

また、50代の方の中には、年齢とともに積み上げてきたキャリアがあり、プライドが高く、自己責任で仕事をするスタイルが染みついている方もおられます。

さらに、職場の上司が自分より年下である可能性も高いです。そのため、扱いにくいイメージがあり、企業側も50代のベテランを採用するメリットを見出せない可能性があります。

50代の転職は厳しい理由

自分の市場価値を理解していない人は、転職に失敗しがちです。自分が思っている市場価値と実際の市場価値にギャップがある場合、転職活動が思うように進まないことが多いようです。自分の市場価値を理解していない人は、以下のようなパターンがあります。

「今の年収と同等かそれ以上が当たり前」と思っている、「今の会社でやってきたことが次の会社でも評価される」と考えている、「上場企業の管理職だから、いくらでも電話がかかってくるはずだ」と信じている、などが挙げられます。

年齢に関係なく、転職を成功させるためには、企業が求める人材像をきちんと理解する必要があります。どんなに優れたスキルを持っていても、それを求めている企業がなければ、転職市場における価値は低くなってしまいます。

50代で未経験の仕事に就ける?

50代で未経験の転職は可能です。しかし、多くの企業が即戦力となる人材を求めているため、ある程度の実務経験を必要とする求人がほとんどです。

ただし、慢性的な人手不足の業界はその限りではありません。人手不足の分野であれば、未経験OKの仕事も見つかりやすいでしょう。

例えば、介護や福祉、警備などの分野も人手不足が課題となっているため、コロナの渦中では安定した求人があります。販売や接客は、50代の方が家庭やこれまでの職場で培ってきたコミュニケーション力を活かせる仕事です。

正社員にこだわらないのであれば、非正規雇用も視野に入れると、さらに仕事の選択肢は広がります。未経験の転職を成功させるためには、広い視野で仕事を探すことをおすすめします。

50代からの転職には介護職がおすすめの理由

50代になると転職は絶望的と思われがちですが、実は介護職は50代にこそ向いている仕事なのです。まずは、介護職が50代におすすめな理由をご紹介します。

おすすめの理由①年齢的な強み

介護の仕事では、高齢者とのコミュニケーションが重要な仕事の一つですが、50代であることが有利に働きます。利用者の子供と同じ年齢である50代だからこそ、悩みや不安を打ち明けることができるのです。

おすすめの理由②培ったスキルを活かせる

「もう若くないし、体力にも自信がない」とあきらめている50代の方もいらっしゃいます。しかし、人生経験や子育て経験が介護の仕事では強い武器になりますし、若い介護職のよき相談相手、助言者として役に立ちます。

また、実務経験だけでなく、長年専業主婦をしていた方は、人生経験や若手にはない人間力があるので、採用したいと考える事業所も少なくないようです。

おすすめの理由③同年代の人が多い

介護労働安定センターが実施した「平成20年度介護労働実態調査」によると、介護の仕事に従事する人の平均年齢は46.8歳です。

各職種の平均年齢も40歳を超えており、最も平均年齢が高いのは訪問介護員で53.3歳となっています。介護業界は40代、50代が多く活躍し、支えている業界といえるでしょう。

おすすめの理由④働き方が豊富

介護職の働き方は、正社員、契約社員、派遣社員、パートなどさまざまで、夜勤、日勤、早番、遅番など、勤務時間の融通が利くというメリットも多くあります。

特に在宅介護の分野では、短時間勤務が可能で、週1回、1時間、1コマから勤務可能な職場もあります。育児や介護に配慮した職場も多く、長時間勤務に自信がない方や、勤務時間に制限がある方にもおすすめです。

おすすめの理由⑤求人が多い

人手不足のため転職しやすい業界とも言えます。実際、介護職の有効求人倍率は3.37倍で、全職種平均の0.94倍を大きく上回っています。

また、要介護者の増加により、2025年には32万人の介護職員が不足すると予想されています。そのため、介護業界は他の業界に比べて働きやすい環境といえるでしょう。

50代で介護職の平均給料額

介護業界への転職を希望する50代以上の方にとって、介護職の平均給与は最も気になるポイントであり、影響力のあるポイントです。ここでは、介護職の平均給与についてご紹介します。

男女別の平均年収で最も高いのは40代の341万円で、次いで30代の337万円、50代の336万円となっています。10代から40代にかけては、順調に収入が伸び、その後下降していきます。

他の業界では、役職者が増える50代が一番収入が高いので、介護業界は10年早く収入が上積みされていることになります。その理由は明白で、介護業界では雇用形態が変わるタイミングが50代以降に集中しているからです。

介護の仕事は体力的にきついので、正社員からパートや派遣に徐々に雇用形態を変えていく人が50代以降に多いというデータが出ています。

介護職の平均給与は、他の一般産業と同様、勤続年数が長くなるほど高くなりますが、勤続1年目でも月給が極端に低くなる傾向は見られません。

また、介護老人福祉施設や介護老人保健施設など、施設の種類によっては平均月収が高くなり、勤続1年目でも30万円を超えることもあります。

そのため、働く施設の種類によっては高収入が期待でき、給与面でも40代、50代の転職先として介護業界はおすすめです。

50代で介護職への転職におすすめ資格

介護業界では40代、50代の方も多く活躍されており、就職の門戸は開かれていますが、40代以下の方と比べると、働ける期間が短いため、転職の難易度は高くなります。

そのため、応募できる求人を増やし、採用される確率を上げるためには、資格の取得をおすすめします。ここでは、50代で介護業界に転職したい人におすすめの資格をご紹介します。

おすすめ資格①介護職員初任者研修

「介護職員初任者研修」は、介護の基礎や応用を学ぶことができる、介護職のスタートラインに立つための資格です。介護業界で働きたい方だけでなく、サービス業で働く方、家族で介護をする方にも役立つ研修です。

介護の原点である介護職員初任者研修を修了すれば、介護職としてのキャリアをスタートさせることができます。介護のスペシャリストとして、フルタイム正社員やパートタイムなど、さまざまな働き方が可能です。

おすすめ資格②介護福祉士実務者研修

「介護福祉士実務者研修」は、介護職員初任者研修の上位資格にあたります。この資格を取得することで、より専門的な介護の知識・技術を身につけることができます。

また、介護現場のリーダーとして活躍が期待できる資格でもあり、就職活動やキャリアアップに有利になります。介護福祉士国家試験の受験資格でもありますので、50代から介護業界で働きたい方は、なるべく取得しておくことをおすすめします。

50代からの介護転職を成功させよう

介護には体力だけでなく、人格面、経験などさまざまな能力が求められます。そのため、これらのスキルを持つ40代、50代の方は、未経験でもアドバンテージとして高く評価されます。面接の際には、こうした点が伝わるような、具体的なエピソードを話せるように準備しておくと良いでしょう。

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