介護職は体力的にきつい業務が多く、勤務時間も変則的であることから、「辞めたい」と思っている方もいるのではないでしょうか。利用者の家族、他の職種の方と関わる機会が多いなど、身体的・精神的に負担がかかることもあるため、介護系の職場は、転職をされる方もいるのが現状です。

今回は、介護職から転職を考える理由や、介護職の離職率、介護職のメリット・デメリットなどについてご紹介させていただきます。

目次

「辞めてよかった」介護職から転職を考える理由

人間関係

介護職に限ったことではありませんが、「人間関係」は、転職を考えるきっかけになることが多い理由の一つです。

介護職の場合、利用者や同じ職場のスタッフ間だけではなく、連携する病院の医療関係者、また、利用者の家族と関わる機会があったりします。

介護の現場では、身体が動かしづらい方や認知症の方を預かっています。

そのため、普段から介護事故の予防対策をどれだけとっていても、思わぬトラブルが発生することもあり、事故を完全に防ぐというのは現実的に難しい場合があります。もちろん、予想外のトラブルが起きてしまった際は、施設側として今後は同じことが起きないよう対策をとっていく必要はありますが、介護スタッフがきちんと業務を行っているにも関わらず、利用者の家族から理不尽なクレームを言われることもあります。

また、スタッフ間でやり取りをする際、例えば介護士の方が看護師の方に看護専門の業務について口出しをしてしまったり、逆に看護師の方が介護士の方に過度に口出しをしてしまったりしていてもうまくいきません。多職種間の溝が大きく、職種間のコミュニケーションがうまく取れないといった問題もあります。 そのため、職場内や利用者・利用者家族との人間関係など、様々な理由から介護職を辞めていく方も多いようです。

業務内容のわりに給料が低いと感じる

個人の感覚にもよりますが、介護職は、ハードな業務で労働時間や残業も長いわりに、給料が安いと感じる方が多くいます。

実際、入浴介助や、ベッド・車椅子などへの移乗介助、トイレ介助など、肉体的に負担がかかる業務が多く、さらに夜勤勤務となると、場合によっては、一人で複数の利用者を見守らなければならないこともあります。肉体的な負担で、腰や膝などを故障してしまう介護スタッフの方も少なくありません。

さらに、転倒や誤嚥などの介護事故を防ぐため、周囲に常に気を配っておく必要があります。

また、施設によっては、慢性的な人手不足で休みが取りづらいところもあります。

出勤の間隔が狭く、休みのペースがおかしかったり、自分だけ夜勤が多かったりなど不公平なシフトが組まれ、体力的に限界を感じている方も多いでしょう。

介護職は、未経験からでも採用するところが多く、仕事を始めてから資格を取得することで給料アップを目指せるというメリットがあります。 しかし、無資格で未経験の場合、スタート時は基本給が低めの職場もあるため、出世する意欲が出ないという方もいるようです。

不規則な生活サイクル

介護職は基本的にシフト制で、一般的には日勤・夜勤・早番・遅番に分かれてシフトが組まれていますが、施設や事業所によっては、日中に働いたり夜間に働いたりと、勤務時間がバラバラになることも多くあります。 一ヶ月の収入を増やすため、あえて夜勤を入れる方もいますが、夜勤が増えれば生活サイクルが不規則になりやすいため、体調を崩して転職せざるを得ない状態になることもあるようです。

結婚・妊娠・出産・育児

女性の場合は、結婚や妊娠などを機に退職あるいは転職する方もいます。 介護職は体力を使いますし、不規則な生活サイクルになりやすいといった理由から、仕事と育児を両立させるのは難しいと感じる方もようです。

理想と違う

高齢者が好きで、将来は介護に携わる仕事に就きたいと考え、学生時代から介護士などを目指し介護施設に就職する方もいます。

しかし、効率さや利益などを重視して利用者に向き合う時間がなかったり、「介護サービス計画書(ケアプラン)」に沿って決められた介護サービスを提供するということに違和感を覚えたりして、理想と違っていたと感じる方も多いようです。 また、業務だけではなく、介護をすること自体は嫌いではないが、勤務先の環境や待遇などに不満を持って辞める方もいます。

介護職の離職率

介護労働安定センターの令和元年度「介護労働実態調査」によると、訪問介護員、介護職員(2 職種計)の1年間(平成 30年10月1日から令和元年9月30日まで)の離職率は、「15.4%」と表記されています。業種全体の離職率と比べると、若干ですが高い傾向にありますが、実は介護職の離職率は他の産業と比べても特別に高いというわけではありません。

一方、訪問介護員、介護職員(2 職種計)の1年間(平成 30年10月1日から令和元年9月30日まで)の採用率は18.2%で、採用率は離職率を上回っている状況が続いています。 介護職の採用率が高いのは、未経験からでも採用してくれるところが多く、要介護高齢者が増え続けていることによる慢性的な人手不足というのも関係していますが、それでも採用率が離職率を上回っている状況が続いていることは、介護の仕事が続いている方も多いというのが分かります。

介護職のメリット・デメリット

これまで、介護職から転職を考える主な理由や、介護職の離職率についてご説明してきました。マイナスなイメージが持たれやすい介護職ですが、そもそも、介護職は、実際にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

介護職のメリット

基本的に、年齢や性別、経験や能力などを問われない

施設や事業所により違いはあるものの、年齢や性別に関係なく採用してくれるところが多いため、何歳になっても職場にいやすく、職歴などが不安な方でも応募しやすいというメリットがあります。

キャリアアップが図りやすく、雇用が安定している

介護職は、未経験からでも正社員として採用してくれるだけでなく、入ってから国家資格である「介護福祉士」といった資格取得を目指せます。それにより、収入UPや、将来は管理職を目指せるなど、未経験からでもキャリアアップを図ることができます。 また、超高齢社会により、要介護高齢者の人口は今後も増え続けると予想されるため、雇用も安定しているといえます。

自分の親の介護に活かすことができる

職場で身に付けた介護の知識やスキルは、将来、自分の親が介護を必要とするようになった時、適切な判断や対処をするのに活かすことができます。

時間の融通が利く場合もある

施設や事業所、その時の職員の人数や利用者の状況等にもよりますが、介護職はシフト制のため、時間の融通が利く場合もあります。 例えば、時短勤務を認めている職場であれば、お子さんがいる家庭では、保育園の時間に合わせて勤務時間を決めることが可能となります。

夜勤勤務専門のスタッフを募集している施設もあり、「夜勤専従」であれば、比較的高い給料がもらえますし、働く時間は夜間にはなりますが、勤務時間が変則的になることもありません。

介護職のデメリット

他業界と比較すると待遇が低い傾向にある

介護職は、未経験からでも働きながら資格取得を目指すことができ、介護福祉士などの資格を取得すれば、手当などで収入UPが見込めるなど、目に見える形でキャリアアップが図れるというメリットがあります。しかし、未経験となると、賃金が安く抑えられている場合が多いため、介護職の場合、基本的に待遇をアップさせるには資格の取得が必要です。つまり、資格取得の予定がない方は、昇給などが見込めない可能性があります。

シフト制の土日勤務、夜勤がある

介護職は基本的にシフト制のため、土日勤務があったり夜勤があったりします。勤務時間は日勤だったり夜勤だったりと変則的になることも多く、休みの間隔もバラバラです。 そのため、不規則な生活に繋がりやすく、長期間での勤務が続きにくいというデメリットもあります。

体力が必要

介護は業務上、人一人を持ち上げたり、中腰・前傾姿勢などきつい姿勢をとったりする場面が多く、ある程度の体力が必要となります。 また、「腰痛」などの職業病に悩む介護スタッフも少なくありません。

介護職を辞める前にするべきこと

介護職にかかわらず、仕事をしていれば、必ず、人間関係や仕事の悩みが出てきたり、嫌なこと、辛いこと、自分の思い通りにならないことなどを経験したりします。

転職や退職を考えている方の中には、現在の環境から抜け出すことしか頭になく、感情的になって退職に踏み切ってしまう方もいるのではないでしょうか。

しかし、仕事を辞める理由や明確な目標がないまま勢いに任せて仕事を辞めてしまっても、結局すっきりするのはその時だけで、後々後悔するケースもあります。

状況によっては、もしかしたら解決策や打開策を見つけられたかもしれません。転職活動の実情を把握できていない状態で退職すれば、次の職場を探すのに時間がかかってしまうこともあります。

辞めてから転職活動するとなると、一時的に収入はなくなります。貯金に余裕がなくなってくると、日々の生活に影響が出るのはもちろん、心の余裕もなくなり、就職活動の焦りに繋がってしまいます。

目の前の不満ばかりに意識を取られるのではなく、まずはいったん、冷静になって考えることが大切です。

仕事を辞める前にやるべきこと

辞めたい理由を洗い出し、解決策や対策がないか考える

例えば、人間関係の悩みであれば、勤務時間を少し変えてみる、人数の少ない夜勤にするといった対策をとることができます。 給料の低さが原因であれば、上司に昇給の相談をするのも一つの方法です。

必ず第三者に相談する

仕事を辞めるか最終的に決めるのは自分自身ですが、まずは、家族や友人など、信頼できる第三者に相談するようにしましょう。
ただ話を聞いてもらえるだけでも楽になりますし、場合によっては、自分では気づかなかった視点からのアドバイスをもらえたりすることもあります。感情的になっていると、どうしても視野が狭くなりがちなので、第三者に話すことは冷静になれるきっかけになります。
相談する相手は、自分の家族や友人だけでなく、転職エージェントなどでも良いでしょう。

介護現場において、

■時間外労働が当たり前になっている(残業が極端に長い)
■施設や事業所の管理者が介護現場の理解に乏しい
■違法な医療行為が行われている

といったものは、転職や退職を考えるポイントになります。

転職する前に就職先を決めておく

退職による一番のリスクは「収入がなくなること」です。辞めてから就職先を探すのではなく、働きながら就職先を見つけるのが理想的です。仕事を辞めて収入がなくなっても、生きていくには、家賃や光熱費、国民年金や住民税など、支払い続けなければならないものがあります。
就職先がみつかるまでの期間は人それぞれです。企業が募集をかけるタイミングや、その時にどのような応募が集まるかなど、大きく影響してきます。
面接の日程の調整等も必要なため、職場によっては、仕事をしながら転職先を探すというのはなかなか難しいと感じる方もいるかもしれませんが、仕事を辞めたらすぐ動けるように、退職する少し前のタイミングから履歴書を送っておくなど、前もって準備しておくと良いでしょう。

介護業界内or他の職種への転職のポイント

介護業界内で転職先を考える場合

夜勤がきつくて仕事を辞めた場合

夜勤が原因で仕事を辞めた場合は、夜間対応のないデイサービスや訪問介護事業所に転職するのがおすすめです。入所型の施設などでは24時間の対応が必要となりますが、利用者が施設に通う日帰りの介護サービスであれば、夜間の対応は必要ないため、不規則な生活を送る心配もありません。

給料が原因で仕事を辞めた場合

日本の超高齢社会により、今後も介護人材の需要は増え続くことが予想されます。賃金改善など、介護職員の働きやすい環境を整えるため、国としても、現在、さまざまな対策が取られています。

介護人材の処遇改善として、2019年10月には、「介護職員等特定処遇改善加算」が創設されました。これは、「勤続年数 10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」というものです。この申請は、職員個人ができるものではなく、施設が行う必要があります。

施設のHPでは、「介護職員等特定処遇改善加算」を行っていることや、賃金以外の処遇改善に関する具体的な取り組みを掲示しているところもあります。待遇が原因で仕事を辞めた方は、こちらを確認してみるようにしましょう。

また、手当やボーナスの支給の有無、交通費や残業代の規定、職場の改善等に積極的に取り組んでいることをオープンにしているか、見極めるのもポイントです。

他の職種に転職する場合

介護職から他職種に転職する場合におすすめの仕事には、以下のようなものがあります。

コミュニケーション能力が生かせる営業・接客

利用者や利用者の家族、他職種の方とのやり取りなど、介護職で、様々な方とコミュニケーションをとる機会が多かったことを活かし、コミュニケーション能力が生かせる営業職や接客業への転職がおすすめです。営業職や接客業は未経験でも採用してくれるところが多く、選択肢が幅広いという特徴があります。医療や介護などに携わる営業であれば、初めての仕事でもスタートが入りやすいかもしれません。

体力の消費が少ない事務職

体力的にきつかったため仕事を辞めたという方は、比較的、肉体労働が少ない事務職がおすすめです。事務職は即戦力を求めてくる企業もありますが、未経験からでも募集しているところも多くあります。 ある程度、パソコンのスキルが必要ではありますが、病院の受付など医療系の事務であれば、介護の知識を活かすこともできます。

人とかかわることが苦手な方は、工場勤務

人間関係で悩んで仕事を辞めてしまったという方は、工場勤務などがおすすめです。製造業務などは比較的単純作業で覚えやすく、基本的には未経験でも採用してくれます。

人と関わる機会も少ないため、黙々と仕事をしたい方は工場勤務への転職もおすすめです。

介護業務に似ている保育士

保育士の場合資格を取得する必要がありますが、保育士は介護士の業務と似ているところがあるため、未経験でも比較的仕事に馴染みやすいというメリットがあります。

また、介護福祉士の資格を取得していれば、保育士試験の一部科目が免除されるため、保育士の資格が比較的取得しやすくなっています。

介護施設と違って夜勤もありませんから、生活サイクルが乱れる心配はありません。

まとめ

人間関係・給与・勤務時間など、全ての条件が良い職場というのはなかなかありませんから、本当に転職する必要があるのか、転職することでメリットがあるのか、「辞めてよかった」と最終的に思えるのか、冷静に検討することが必要です。 最近、賃金改善や労働環境の改善に積極的に取り組んでいる施設も増えてきています。介護職で転職を考えている方、施設の待遇や労働環境を見極められるようにしましょう。

facebook
twitter
line