加齢による身体機能の衰えや、病気、怪我などが原因で、握力が低下してしまった方や、手指を動かすのが難しくなってしまった方などにも使いやすく設計されている介護向けのお箸・スプーン・フォーク。
今回は、「介護向けのお箸・スプーン・フォーク」にはそれぞれどういった特徴があるのか、また、種類や選び方などについてご紹介いたします。
高齢者にとって〝食事〟とは、栄養摂取の手段としてだけではなく、毎日の生活の質を高めるための楽しみや生きがいそのものです。〝生活のリズム〟を整える〝食事〟をとるためにも、本人に合ったアイテムを選べるようにしておきましょう。
介護向けのお箸の種類と選ぶおすすめのポイント
介護向けお箸の種類
お箸を使用する際は、握る力や、手・指の細かい動きが必要となってくるため、怪我やリウマチなどが原因で握力が低下している方や、手・指が変形した方、利き手が使えなくなった方は、お箸を使っての食事が難しくなります。
お箸が使えなくても、スプーンやフォークで食事をとることは可能です。しかし、箸には、つまむ、はさむ、すくう、切る、混ぜる、押さえるといった複数の機能が備わっていることから、「今まで使用してきた箸を使い続けたい」、「箸の方が使い慣れている」など、箸での食事を希望する方も多くおります。
介護向けのお箸は、食べ物をはさむ力を補助するバネによって箸2本が繋がっており、ピンセットやトングのような形状になっているのが特徴です。そのため、握力が低下している方や、手や指の変形などでお箸を使うのが難しい方でも、利き手関係なく握って持つことができ、食べ物をはさむことができます。
また、通常の箸とは異なり、2本がバネで繋がっているため、片方を落としてしまうという心配もありません。
介護向けのお箸の種類は、大きく分けて、通常の箸と見た目や持ち方、使っている感覚がほとんど変わらない「ピンセットタイプ」と、箸を握る部分にグリップがあり、トングのような形状をしている「トングタイプ」があります。
介護向けお箸の選ぶポイント
見た目が気になる方は「ピンセットタイプ」を
実際に持つと、バネの位置によっては、指や手でバネが隠れてしまうものもあり、周りからは普通の箸を持っているように見えます。箸の見た目が気になる方や、普通の箸を使っているのと同じような感覚で使用したいという方は、「ピンセットタイプ」がおすすめです。
ただし、使い方は通常の箸とほとんど変わらないため、握力の低下が大きい方や、細かい動作が難しいという方は、「トングタイプ」の方が使いやすい場合があります。
握力の低下や指先の変形が著しい方は「トングタイプ」を
グリップが付いている、あるいはグリップが付いているようなフォルムになっているトングタイプは、軽い力でも食材をはさむことができるため、握力の低下や指先の変形が著しく、細かい動作が難しい方の使用に向いています。グリップ部分の大きさや形は製品によりさまざまで、なかには、位置や角度を自由に調整できるものもあります。手の大きさや手の症状などに合わせて選ぶようにしましょう。
介護向けのスプーンの種類と選ぶおすすめのポイント
介護向けのスプーンの種類
スプーンは、箸とは異なり、単一の機能しか果たせないものの、スープやお粥といった液体状のもの、あるいは液体状に近い食事を摂る際には必須のアイテムです。また、箸が使いづらくなってくると、スプーンの使用回数も増えてくると思います。
スプーンは、箸のように細かい動作は必要ないため、介護向けの製品では、基本的に握りやすさを重視しているものが多い傾向にあります。
介護向けのスプーンには、利用する方の手の症状に合ったものが選べるよう、主に、「指や手首が動きにくい方でも使用できる介護用スプーン」や、「ベルトで手に巻き付けて固定するタイプの介護用スプーン」、先端が固定されておらず、「スプーンの首の部分が曲がるタイプの介護用スプーン」があります。
介護向けのスプーンの選ぶポイント
手や指の力が入りにくい方、指が動かしにくい方は、持ち手が握りやすい形状になっているものを
リウマチなどで手や指の力が入りにくい方、指が動きにくい方は、柄の部分が太くなっているものや、グリップ部が回転し変形するものなど、力がない方でも持ちやすいように工夫されている介護用スプーンを選ぶようにしましょう。
また、木製や金属製のもの、シリコン製のもの、握る部分がスポンジのようなやわらかい素材でカバーされているものなど、素材もさまざまあります。握りやすさはもちろんですが、握り心地の良さも考えて選ぶと良いでしょう。
握力が低下した方、手指が曲がらない方は、ベルトで巻き付けて固定するタイプのものを
握力の低下により、握るという動作が難しくなってしまった方や、手指が曲がらない方などは、スプーンをベルトで固定するタイプのものを選ぶと良いでしょう。
食べこぼしが多い方は、スプーンの首の部分や柄が曲げられるタイプのものを
通常のスプーンは先が固定されているため、握力が低下している方や手指が動かしにくい方などは、口まで運びづらく、食べこぼししてしまうという方もいます。
スプーンの首や柄の部分が、本人に合わせて上下左右に自由に曲げることができるタイプのものであれば、食べ物をすくった後、手首を反らさずにそのまま口まで運ぶことができます。
スプーンの先端部分は口当たりの良いものを
スプーンの素材はもちろん、スプーンの先が、くぼんでいる部分が深すぎたり、幅が広すぎたりすると、食べにくさを感じてしまうことがあります。特に、何らかの理由により口が大きく開けられない方や、口周りに麻痺がある方は注意が必要です。口当たりの良さも意識して選ぶようにしましょう。
介護向けのフォークの種類と選ぶおすすめのポイント
介護向けのフォークの種類
介護向けのフォークは、スプーンと同様、箸のような細かい動作は必要ないため、基本的には握りやすさを重視した製品が多くあります。
掴む部分が太くなっているものや、首の部分が曲がるフォークなどがあり、基本的には介護向けのスプーンと種類は同じです。
介護向けのフォークの選ぶポイント
使い勝手や安全性を考えて選ぶ
選ぶポイントは、介護向けのスプーンとほとんど変わりありませんが、フォークの場合、先端部分が尖りすぎていないものや、フォークとスプーンが一体となっているものなど、使い勝手や安全性などのことも考えて選ぶことが大切です。
介護向けのお箸・スプーン・フォークおすすめ8選
おすすめ①
ピジョン ハビナース 使いやすいお箸
価格 | 1,100円 |
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重さ | 37g |
サイズ | 22cm |
素材 | 本体 : PPS 樹脂(ポリフェニレンサルファイド) クリップ部分 : POM 樹脂(ポリアセタール) |
箸先を合わせるクリップが付いており、握力が弱い方や手指の細かい動作が難しい方でも使いやすいようになっています。クリップをずらすことで、手の大きさに合わせて箸の長さを調整することも可能。箸先は、食材をつまみやすくするためのシボ加工がされています。クリップは着脱可能で、箸を抜いて洗うこともでき、強化プラスチック製で食器洗い機乾燥機にも対応。衛生的に使用できます。左右兼用。
おすすめ②
台和 プチエイド ソフトバリアフリーはし 赤(HS-H)
価格 | 880円 |
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重さ | 約20g |
サイズ | 20.5cm |
素材 | 本体 :原料樹脂 : ABS 表面塗装の種類 : ウレタン塗装 |
食材をつまむ部分が平面になっており、滑り止め機能が付いているトング式の箸であるため、箸先がそろいやすく、軽く握るだけで簡単に食材を挟むことができます。 グリップ部分も滑りにくい波型の形状になっており、通常の箸と同じ使い方ができるのはもちろん、握って使用することも可能となっています。左右兼用。
おすすめ③
箸ぞうくん(グリーン / 右手用)
価格 | 3,520円 |
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重さ | 約42g |
サイズ | (グリーン)約 20cm |
素材 | PBT 樹脂、 ステンレス |
グリップ部分のバネを軽くすることで、特に箸の動かし始めがラクにできます。食材を挟む力や指の細かい動作などは不要で、親指と人差し指でピンポン玉をつまむことができれば使用することが可能です。症状の重い方から軽い方まで幅広く対応できます。抗菌剤が練り込んであるため、衛生的にも安心です。左手用もあります。
おすすめ④
ウィルアシスト バルーン スプーン M
価格 | 1,210円 |
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重さ | 65g |
サイズ | 本体サイズ:20.2cm スプーンヘッド部寸法:幅 37× 長さ 37mm |
素材 | 18-8 ステンレス、 発砲ポリプロピレン |
先端部を最も食べやすい角度に自由に曲げることができます。持ち手部分は太くなっており、裏には握りやすさと滑り止めの機能を兼ね備えた 2 つのコブがある形状です。さらに、素材には最軽量級のポリプロピレンを採用しており、滑らかで軽い握り心地でありながら、耐熱 ・ 耐衝撃も兼ね備えています。 利き手問わず使用できます。
おすすめ⑤
箸ぞうくん おたべやす スプーン/左右兼用
価格 | 2,750円 |
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重さ | 約36g |
サイズ | 長さ20cm |
素材 | 天然木、 真鍮、 ステンレス、 ウレタン塗装 |
グリップ部が回転し、3つに分かれているパーツを自由自在に動かすことができます。手の拘縮や変形などで握るのが難しいという方でも、この3つのパーツをそれぞれ調整することで、指に引っ掛けたり指の間に差し込んだりすることで食べやすいかたちに安定させることができます。ぬくもりのある木製です。
おすすめ⑥
斉藤工業 万能カフ 木付き革製差込バンド(貫通式)
価格 | 1,870円 |
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重さ | 36g |
サイズ | 長さ 11cm 幅 3.3mm 厚さ 25mm |
素材 | 革、 ナイロン |
こちらはスプーンやフォークを手に固定するための専用のバンドになります。握力の低下や手指を曲げることができないといった理由で、スプーンやフォークを握ることができないという方に適しています。ボールペンや歯ブラシなどを差し込んで使用することも可能です。スプーン、 フォークは別売りとなります。
おすすめ⑦
斉藤工業オールステンレスハンドル 平型スポンジ付 スプーン・フォーク兼用 大
価格 | 1,078円 |
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重さ | 45g |
サイズ | 全長20.1cm |
素材 | 金属部 : XM-7 ステンレス スポンジ部 : エチレン ・ プロピレンゴム(EPT) |
使う人に合わせて、首の部分を上下左右自在に曲げることができます。持ち手の部分には、握りやすく滑りにくい平型スポンジハンドルが付いており、握ったときに固定しやすい楕円形になっています。握力が弱い方や手指の動作が難しい方におすすめです。ステンレス部分は錆びにくくなっているため、お手入れがしやすくなっています。
おすすめ⑧
スケーター カーブネックフォーク 右手用 ブラック
価格 | 767円 |
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重さ | 38g |
サイズ | 長さ19cm |
素材 | 柄 : ナイロン 先 : シリコーンゴム |
先が曲がっているため、手首を曲げにくい方でも使いやすくなっています。グリップ部分も太くなっており、 指を安定させるくぼみがあるため、握りやすい形状です。すくい持ちや握り持ちなど、さまざまな持ち方に対応できます。 フォークの枝の部分が凹凸しているため、麺類などの滑って落ちやすい食材も食べやすく、シリコン製で口当たりも良くなっています。
介護向けのお箸・スプーン・フォークを使って食事をとることの〝重要性〟
食べ物を噛んで飲み込み、美味しいと感じることが、脳への刺激となり、認知症の進行を遅らせるとも言われているのをご存知でしょうか。〝自分で食べる〟ということは、生きがいや生活リズムを感じるための重要な行為です。
ただ、必要な栄養素を摂取し、健康を維持するためだけに、食事を摂っている訳ではありません。今ある残存機能を生かしながら、自分で食事を摂る行為は、認知症予防だけではなく、その人の「生きる意欲」や「生きる喜び」にも繋がります。
何らかの理由で口から栄養を摂ることが難しくなってくると、胃ろうや点滴などで身体に直接栄養を補給することになりますが、口からの食事を摂れなくなると、口腔内の細菌叢が乱れ、肺炎の原因菌が増えてしまうとも言われています。
自分の力で食事を摂ることは、その人が持っている機能を活かすことに繋がるため、加齢などによる機能低下を遅らせる手助けにもなります。たとえ、食べる機能が衰えている方でも、リハビリを続ければ、症状が改善したり、悪化を防いだりする可能性もあります。
介護向けの箸やスプーン、フォークを上手に取り入れながら、自分の力で、自分の口で、できる限り継続して食事を摂ることこそが、残存機能の維持、そして高齢者の心身の健康へと繋がっていくのではないでしょうか。
まとめ
今回は、「介護向けのお箸・スプーン・フォーク」の種類や選び方などについてご紹介させていただきました。
〝食事〟は、少しでも自分の力で、そして、自分のペースで食べたいと思うのは当然のことです。高齢者の楽しみの一つである〝食事〟を、より有意義な時間にするためにも、握力や手指の状況などに合わせて、今回ご紹介したような介護向けのお箸・スプーン・フォークといった自助具を取り入れてみましょう。