超高齢化社会を迎えた日本では、介護の担い手が不足しており、より専門的なスキルを持った有資格者の確保が急務となっています。介護業界では、職場によっては無資格・未経験でも働くことができますが、資格取得や資格の種類によって昇給や待遇に大きく影響します。今回は、介護・福祉分野の資格をまとめましたので、介護業界を目指す方、スキルアップしたい方はぜひ参考にしてください。
介護の仕事の種類は多くニーズも多い
介護の仕事といっても、さまざまな種類があります。きっと自分の得意分野を活かせる資格もあるはずです。また、複数の資格を組み合わせて、自分の得意分野を磨いていくのもおすすめです。
たとえば、レクリエーション介護士は、日常生活の中で高齢者に笑顔を届ける仕事です。高齢者の体調や施設の環境、安全性など総合的な状況を考慮し、高齢者が楽しめるレクリエーションを企画・実施する仕事です。
すでに介護に携わっている方は、レクリエーション介護士として現場で役に立つかもしれません。介護士として働きたいけど未経験という方には、資格不要のレクリエーション介護士がおすすめです。
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者のために安心・安全な住まいを提案する仕事です。在宅介護のために住宅に手すりを取り付けたり、リフォームの際に各専門家の橋渡しをしたり、補助金の相談に乗ったりするのが仕事です。
ケアマネジャーや介護福祉士の資格に福祉住環境コーディネーターを加え、住宅リフォームの実践的なアドバイスを強みにする方おり、医療・福祉業界だけでなく、建築業界や福祉用具メーカー、本人や家族にも役立ちます。
準サービス介助士は、高齢者や身体の不自由な方の移動支援を行う仕事です。「おもてなしの心」と「安全な介助技術」を学ぶことができる資格です。百貨店や金融機関、公共交通機関など、さまざまな場所で准サービス介助士の活用が積極的に進められています。
また、観光や小売などのサービス業に携わる方や、ボランティアとして人の役に立ちたいという方も増えているようです。
介護の主な資格一覧
介護業界で人気の資格は、「介護職員初任者研修」「介護職員実務者研修」「ケアマネージャー」「介護事務」「介護福祉士」の5つです。「認定介護福祉士」も今後、需要の増加が見込まれています。それぞれの資格についてみていきましょう。
主要介護資格①介護職員初任者研修
「介護職員初任者研修」は、介護職として就職するために最低限必要な資格です。「在宅・施設を問わず、介護職員として働くための基本的な知識・技術を習得するための研修」とされています。
この資格があれば、介護の仕事を始めることができ、正社員やパートなど、さまざまな働き方ができます。最近では、家族介護を意識して資格取得を目指す方も増えています。
資格取得のためには、講義と演習からなる約130時間の研修を受講し、全課程を修了した上で修了試験に合格する必要があります。
主要介護資格②介護職員実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護福祉士の国家試験を受験するために必ず受講しなければならない講座です。試験を受けるだけでなく、より質の高い介護サービスを提供するために、実践的な知識や技術を身につけることが目的です。
2019年4月より、訪問介護事業所に配置することが義務付けられている「サービス提供責任者」になるためには、実務者研修の修了または介護福祉士資格の取得が必要となります。
主要介護資格③ケアマネジャー
介護支援専門員は「ケアマネージャー」とも呼ばれ、介護保険制度に基づき、要介護者の心身の状況や周囲の環境に応じて介護サービスを利用できるようにケアプランを作成します。
数ある介護サービスの中から、利用者に合った介護サービスを選択し、利用者や家族に提案・実施することから、「介護のコーディネーター」といっても過言ではないでしょう。
また、ケアプランの作成にとどまらず、介護サービスを受ける利用者が介護施設に直接要望を言いにくい場合、ケアマネジャーが利用者に代わって施設に意見を伝えることもあります。専門性が高く、長期間の実務経験が必要な資格です。
主要介護資格④介護事務
介護事務は、介護施設で活かせる有望なスキルです。介護事務は、介護サービス事業所や介護施設での事務作業、ケアマネジャーのサポート、介護報酬の請求、「介護給付費明細書」の作成などが主な業務となります。
多忙なケアマネジャーをサポートする専門スタッフとして、今や介護事業の運営に欠かせない存在となっています。
デスクワークが中心なので身体的負担が少なく、年齢に関係なく長く安定して働けるため、家事や育児と両立しながら働きたい女性にはピッタリの仕事です。
主要介護資格⑤介護福祉士
介護福祉士は、国家資格です。身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むことが困難な者に対して、専門的知識及び技術をもってその心身の状況に応じた介護を行うとともに、当該者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う者と定義されています。
介護福祉士は、介護を必要とする人の日常のさまざまな動作や行為を支援・援助するための知識と技術を備えた、介護の専門資格として認められています。
介護で役立つ専門知識と資格一覧
資格 | 内容 |
---|---|
介護職員初任者研修 | ・介護業界の第一歩 ・ホームヘルパーや福祉施設介護員へ ・旧ホームヘルパー2級 |
介護職員実務者研修 | ・実践的スキル ・サービス提供責任者へ ・介護福祉士の受験資格 |
ケアマネジャー(介護支援専門員) | ・ケアプランの作成 ・介護におけるコーディネート |
介護事務 | 事務職のノウハウ |
介護福祉士【国家資格】 | ・介護業務特化の国家資格 ・サービス提供責任者へ ・生活相談員へ ・チームリーダーへ |
レクリエーション介護士2級 | レクリエーション知識や実行スキル |
介護予防運動指導員 | 運動を通した身体ケア |
福祉用具専門相談員 | 福祉用具の選び方や使い方のアドバイス |
喀痰吸引等研修 | 「たんの吸引」と「経管栄養」 |
サービス提供責任者 | 介護サービス提供に関する責任者 |
介護のスキルアップにおすすめの資格
介護職としての資質を高め、質の高いサービスを提供するためにも、介護に関する資格の追加取得が推奨されています。スキルアップを図り、介護の仕事をよりやりがいのあるものにするための資格について見ていきましょう。
スキルアップにおすすめ資格①認知症ケア
「認知症ケア専門士」とは、日本認知症ケア学会が認定する民間資格で、認知症ケアに関する専門的な知識と高度な技術を持つ専門家です。
認知症ケアに関する実務経験が3年以上あり、認知症ケア専門士認定試験に合格し、登録申請することで取得可能です。
資格を取得することで、配置基準や認知症ケアに力を入れている事業所などに採用されやすくなり、給与アップも期待できるでしょう。
スキルアップにおすすめ資格②+αの介護
+αの介護が可能な資格もおすすめです。例えば、「ガイドヘルパー」とは、視覚障害や全身障害、知的障害など、何らかの理由で一人で移動することが困難な人の移動をサポートする人のことです。
注意したいのは、各都道府県ごとに資格要件が異なることです。取得を検討する際は、必ず自分の住んでいる地域の資格要件を確認するようにしましょう。
もうひとつの介護資格は「介護予防運動指導員」です。高齢者の筋力トレーニングや介護予防のためのプログラム作成などを通じて、高齢者が自立した生活を送れるようサポートする専門職です。
スキルアップにおすすめ資格③障碍者ケア
「相談支援従事者初任者研修」は、障害者の地域生活支援を目的とした指定相談支援事業所での相談支援業務を総合的に習得するための資格です。
指定相談支援事業所で相談支援専門員として勤務する方、指定重度障害者総合支援事業所でサービス提供責任者として勤務する方が取得できます。
「行動援護従業者養成研修」は、行動援護を必要とする知的障害者、精神障害者、発達障害者を対象に、行動障害に関する知識・技術を習得するための研修です。
行動援護従業者養成研修修了後、行動援護従業者として働くには、最低1年間の直接業務経験が必要です。
スキルアップにおすすめ資格④介護業務以外
視覚障害の方などの援助、知的・精神障がいの方などの援助、難病患者などの介護に携わりたいと目指している方には、それぞれの業務に適した資格があります。こうした専門的な知識や資格を有することで、業務の幅を広げることもできます。
スキルアップにおすすめ資格⑤介護事務
「介護事務」は、技能検定振興協会が認定する資格で、介護サービス施設におけるレセプト業務、受付業務、会計業務などの業務に関する知識・技能を有することを証明するものです。
多忙なケアマネジャーをサポートする専門スタッフとして、介護事業の運営に欠かせない存在です。超高齢化社会を迎え、介護サービスの利用者は年々増加し、技能職のニーズも高まることが予想されます。
資格を取ってスキルアップを目指そう!
いかがでしたでしょうか。介護に関する資格はたくさんあり、目的や難易度もさまざまです。無資格・未経験でも働くことは可能ですが、資格を取得することで転職に有利になったり、資格手当がつくことで給与がアップしたりと、待遇改善につながることもあります。
これから介護の仕事を目指す方も、現在無資格で働いている方も、今回ご紹介した資格の中から、目標を定めてみてはいかがでしょうか。