認知症カフェという言葉を耳にしたことがありますか?認知症カフェは認知症の方とその家族を支援することを目的とした、今日本でも徐々に普及しつつある福祉活動のひとつです。その存在はまだ知らない方も多く、内容やどこで開催されているのかご存知ない方も多いでしょう。ここではそんな認知症カフェについて詳しく解説していきます。
認知症カフェとは
認知症カフェとは、認知症の方や介護をしている方、認知症に関心のある方が集まって、お茶や軽食を楽しみながら参加者同士がおしゃべりやレクレーションを通して楽しく交流できる場所です。
認知症カフェは、1997年に認知症ケア先進国であるオランダの「アルツハイマーカフェ」から始まり、ヨーロッパを中心に広がっていきました。日本の認知症カフェは2012年に認知症施策の一環として誕生、全国各地で運営され、高齢者の増加と比例して現在も設置の動きが進んでいます。
オレンジカフェとも呼ばれる
「NCNPオレンジカフェ(認知症カフェ)」2022年10月26日(水)14:00〜15:30 開催 https://t.co/IYPoDxe6Kt — 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター (@NCNP_CBT) October 26, 2022
認知症カフェは、別名「オレンジカフェ」とも呼ばれています。認知症カフェは日本で2012年に発表された認知症施策の「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」のモデルケースで設置されたのが始まりです。その後、2015年の「認知症施策推進総合戦(新オレンジプラン)」によって急速に広がりを見せました。
新オレンジプランとは「認知症の人の意思が尊重され、出来る限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らしを続けることが出来る社会を実現する」ことを目的とした施策です。
この施策の名称から「オレンジカフェ」とも呼ばれるようになりました。この他にも、地域によって「メモリーカフェ」「ふれあいカフェ」など親しみやすい名称を用いているところもあります。
認知症カフェの目的
認知症カフェの目的は、認知症の方とその家族を支援することです。その地域に住む高齢者が住み慣れた場所で交流深めることで、孤立防止にも繋がります。また、介護者も専門家や同じ境遇の方と交流できるため、介護の悩みを相談、共有できることでストレスが軽減されるでしょう。
認知症カフェの種類
認知症カフェは地域の高齢者やその家族など、誰でも気軽に参加でき交流できる場所ですが、運営は、住民主体や社会福祉法人、各市町村、NPO法人など様々です。以下にそれぞれの特徴を見ていきましょう。
種類①家族会の運営
家族会とは、精神障害者を身内に抱える家族が集まり、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会です。家族会が主催する認知症カフェは、家族と当事者が両方参加するスタイルで月に1回ほど、家族会のメンバー宅で開催されています。
一般的に飲み物・昼食が用意され、参加費は500円ほどで利用できます。家族会のメンバーや地域のボラティア、専門職の方もスタッフとして参加し、認知症本人やその家族の精神的ケアを行います。
種類②社会福祉法人の運営
社会福祉法人の運営するカフェは、週に1回ほど社会福祉法人の施設の一室に10~20人ほど集まり開催されており、参加費が100円程度と大変安く利用できるのが特徴です。
お茶会だけでなく、筋力トレーニングやエクササイズ、ゲームといったアクティビティや料理、手芸、将棋など様々な企画が用意されています。これらの活動を通じて、心身の健康をサポートするだけでなく、ストレスを発散させることができ、楽しい時間を過ごすことができるでしょう。
種類③市町村の運営
市町村が運営するカフェは、地域のどなたでも気軽に参加でき、お茶やお菓子を囲んでおしゃべりや相談ができる場です。スタッフは職員や介護職の方、医療の関係者が務め、軽度の認知症の方の支援と制度に関する情報提供を目的としています。
週に1回ほど市町村の施設にて参加費無料で開催され、10~20人ほど集まり、お茶を飲みながら会話を楽しんだり、体操やクラフトワークなどをして、当事者同士の交流を図ります。介護についてのミニ講座や相談会もあり、家族へのサポートも行われます。
種類④NPO法人の運営
認知症カフェが始まりました。NPO法人ピクニックケア pic.twitter.com/7dLiilmGqU — 🌈ついてる和道🌹ツキを皆んなで分けてさらに増やす🌺 (@npokaz) December 15, 2015
NPO法人の運営は、地域高齢者の見守りを目的とし、一般の家や空き店舗を利用し常時オープン型で開催されていることが特徴です。
スタッフはNPO法人の職員や、地域ボランティアが勤め、地域の高齢者を対象に、手芸やサークル活動、会話を楽しむ場所を提供しています。参加費は食事をする場合は500円、飲み物だけなら100円といった、選べるかたちが多いです。
認知症カフェの探し方
認知症カフェに参加したいと思っても、どうやって情報を得れば良いのか分からない方も多いでしょう。以下に開催されている場所を探す方法をご紹介します。現在新型コロナウイルス感染症の影響により、活動を自粛していることもあるので、事前にしっかり確認してください。
探し方①地域包括支援センターに問い合わせる
ひとつはお住まいの地域包括センターに直接問い合わせる方法です。地域包括支援センターとは、地域に暮らす高齢者のための医療・介護・福祉の総合相談窓口として機能する、各自治体が設置している機関です。担当のセンターが分からない場合は、市役所・区役所などで教えてくれます。
専門的なスタッフが高齢者のためにサービスを検討して問題や悩みを解決したり、介護が必要になった高齢者の手助けをすることが、地域包括支援センターの役割です。
参加したい旨を伝えると、その地域で開催されている情報を教えてくれます。場所や日時の他にも、参加条件や内容なども確認してみましょう。
探し方②市区町村のホームページを見る
もうひとつが、お住まいの市区町村のホームページで確認する方法です。認知症カフェの一覧を載せている自治体も増えており、認知症カフェがホームページを作成している場合は、リンクされていて飛べることも多いです。問い合わせ窓口も掲載されているので、詳しく知りたい方は直接連絡してみてください。
市区町村が把握している団体なら安心して利用できるでしょう。またネットで検索するといろいろ情報が得られるので、ご自身で調べてみるのもおすすめです。
認知症カフェのメリット
認知症カフェはいわゆる営利目的の喫茶店や飲食店ではなく、認知症の人とその介護をする家族、介護・医療の専門職の方が自由に集い交流できる場です。
そして、ただおしゃべりをして過ごすだけでなく、様々な活動を通して肉体的、精神的にも良い影響を与えてくれます。ここでは、認知症カフェの主なメリットについて見ていきましょう。
メリット①同じ境遇の仲間と会話できる
認知症カフェの最も大きなメリットは、同じ境遇の人達と交流を深められることです。今、認知症当事者の孤立や引きこもりが社会問題になっています。認知症カフェでは同じ仲間との会話、運動やゲームといったアクティビティ、クラフトワーク、料理などを通して孤立や引きこもりを防止することができるのです。
カフェに参加し、出かける目的ができ自分の居場所が見つかることで、張り合いのある生き生きとした生活が送れるようになります。
認知症を患いつつも、仲間との交流で笑顔を取り戻した高齢者も少なくありません。認知症カフェはふさぎ込みがちな高齢者にとって、病気であることを意識せずに過ごせる憩いの場になってくれるでしょう。
メリット②認知症の進行抑制
認知症カフェに参加することで、病気の進行抑制にも繋がります。認知症の抑制には人との関わり、コミュニケーションが最も効力を発揮します。また、体操やゲーム、手芸、料理なども、脳を活性化できる生活習慣として効果的です。
カフェでは様々なレクレーションを通して、病気の予防・抑制の取り組みが行われています。そして患っていない高齢者がカフェに参加することは、認知症予防にもなります。病気の予防&抑制には、人とのコミュニケーションや体を動かして脳を活性化することがいちばんです。
メリット③介護者も同じ境遇の人と出会える
認知症カフェは、介護される側だけでなく、する側にも良い影響をもたらします。カフェを通じて同じ立場の介護者や家族に出会えることで、悩みを相談し合ったり気持ちを共有でき、心の負担や孤独感から解放されされるでしょう。
また、専門家も参加しているため、介護のヒントやアドバイスを受けることもでき、不安を軽減できます。そして何よりも当事者がカフェに参加し、笑顔が増えて症状が落ち着けば、家族の精神的負担も大きく和らぐでしょう。認知症カフェは、支える家族にとっても貴重な息抜きの場となってくれるのです。
認知症カフェの課題点
全国的に設置が進んでいる認知症カフェですが、まだまだいくつかの課題も残されています。今以下のような問題解決に向けて取り組んでいる最中なので、近い将来もっと利用しやすい活動となることを期待しましょう。
課題点①地域により温度差
高齢者救済の福祉サービスは多岐に渡り、すでに他の施策を試みている自治体では、認知症カフェの理解が乏しく、あまり力を入れていないところもあります。
また、補助金がカフェにまで手が回らず、運営すること自体難しい地域もあります。よって地域によって活動の充実度に差があり、活動内容もバラバラ、格差・温度差が生じてしまっているのが現状です。
課題点②企業や個人経営者が参画しにくい
企業や個人経営者が参画しにくいのも今後の課題になります。現在企業や個人経営者による認知症カフェが成功している事例が少なく、興味があっても二の足を踏んでしまっているのが現状です。
特に飲食を提供する場合、市区町村からの補助金があっても赤字になるリスクが高く、企業や個人が計画・開催するまでに至らないのです。
課題点③収入が少なく資金不足に
認知症カフェを始める団体に対して補助金を支給するなどの支援をしている自治体も多いですが、全ての自治体が補助金を交付しているわけではなく、金額にも地域差があります。
カフェ利用者の負担額は安く設定されているため利益に繋がらず、足りない分は自分達で賄わなければならず、資金不足に陥り継続的に運営をすることが厳しい状態です。全国統一して補助金を支給し、そして増額することが今後の大きな課題となるでしょう。
課題点④人材不足
高齢化社会の今、設置数は人口と共に増加傾向にあるのに対して、運営側の人材不足という問題があります。介護に関わる人材が不足している中、地域のボランティアに頼って開催しているところも少なくありません。参加費や自治体の補助金だけでは専門職の人件費が捻出できず、人材確保ができないのです。
最低限の専門知識を持つスタッフがいなければ、認知症カフェの目的のひとつである、介護のヒントやアドバイスを受けることができなくなります。人材確保もまた、資金不足が今後の大きな課題となるでしょう。
課題点⑤参加者が少ない
認知症カフェは、当事者だけでなく、その家族や地域の一般の方など、誰でも参加できる場所です。しかし、”認知症カフェ”という名称から、認知症の人しか参加できないという誤解が生まれ、一般市民が利用しにくいケースが多いです。
内容は理解していても、認知症というデリケートな問題から、別の地域の活動に参加する方もいます。また、認知症カフェの存在意義や、内容が地域住民に十分周知されておらず、認知症カフェ自体どのようなものなのか知らない方も少なくありません。
「誰でも参加できる」ところが大きな特徴ですが、知らない方が多く利用者が少ないのです。地域の方に対して認知症カフェについて周知し理解してもらうこと、そしてその名称自体の変更も検討する必要があるでしょう。
課題点⑥衛生面の問題
閉鎖した空間で近距離で人と会話するなどの環境では、感染を拡大させるリスクがあります。現在新型コロナ感染症の影響により、認知症カフェに限らず、デイサービスや昼カラオケ、教室など自粛しているところも多く、高齢者の集いに大きな影響を及ぼしています。
高齢者施設や昼カラオケでクラスターが発生したニュースをよく目にしたことでしょう。特に高齢者はインフルエンザやコロナに感染すると重症化リスクが高く命の危険があります。
開催するにしても、机やイス、使用する食器を始めとする様々なものの消毒、マスクの装着、一定の距離を保つなどを徹底しなければ一気に感染が広がってしまいます。徐々に規制も緩和されつつありますが、衛生面の問題はこれからも大きな課題となってくるでしょう。
認知症カフェは当事者や家族が談笑して交流を図れる場所
認知症カフェは、当事者だけだなく、その家族も同じ境遇の人と談笑したり、介護のアドバイスを受けたりできるコミュニケーションの場です。地域住民で高齢者を支えることで、今社会問題となっている孤立や引きこもりを防ぐことができます。
資金不足や人材不足などの課題も残されますが、認知症の理解を深める場所、不安を解消してくれる場所として、地域に欠かせない大切な活動と言えるでしょう。認知症を患って孤独な高齢者を支えているご家族は、一度認知症カフェに一緒に訪れてみてはいかがでしょうか。