モニタリングとは、ケアマネジャー(介護支援専門員)が行う業務の一つです。ケアマネジャーの主な業務には、アセスメントの実施、利用者一人ひとりに合ったケアプランの作成・提案などがありますが、モニタリング業務も大切な仕事の一つです。そこで当記事では、ケアマネージャーの業務の一つである「モニタリング」とはどのような業務なのか詳しく解説します。
介護サービスのモニタリングの意味と目的
介護におけるモニタリングの意味とは何でしょうか。まず、介護におけるモニタリングの目的や、介護におけるアセスメントとの違いについて説明します。
モニタリングの意味
モニタリングとは「観察」という意味で、介護ではケアマネージャーの業務の1つを指します。介護サービスにおけるモニタリングの内容は、ケアプランが実態に合っているか、利用者や家族のニーズが満たされているかを確認することです。
モニタリングの目的①サービス実施状況を定期的に評価する
介護事業者は、あらかじめ立てたケアプランに沿って介護サービスを提供しますが、すべてが思い通りにいくわけではありません。利用者の心身の状態や生活環境は日々変化している可能性があります。
そのため、新たな課題はないか、プランにズレはないか、随時確認し、ニーズに合わせて微調整していくことが大切です。
サービスを利用することで自立した生活を送ることができるよう、より適切なケアプランを作成することがケアマネジャーの重要な役割です。
モニタリングの目的②ミスマッチの確認
利用者や家族の状況は変化するため、ケアマネジャーは利用者の生活ニーズや利用状況が提供するサービスとミスマッチしていないか確認し、必要に応じて修正・調整を行います。サービスの過不足は、利用者や家族の負担になりますが、それに気づけるのは専門家だけです。
そこで、プロのケアマネジャーは、利用者や家族の声、介護サービス事業所からの情報などをもとに、現在のケアプランに過剰なサービスや不足しているサービスがないかどうかを判断します。
介護サービスのモニタリングの頻度
提供しているサービスが施設型か居宅型かによって、モニタリングの対象者やタイミングは異なります。
福祉施設や訪問介護などにより頻度が違う
介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの施設型サービスでは、施設に勤務するケアマネジャーが3カ月に1回程度、モニタリングを実施します。
施設によっては、毎月実施する場合や半年に1回実施する場合もあります。一方、訪問介護や訪問リハビリテーションなどの居宅サービスの場合は、各利用者を担当するケアマネジャーやサービス提供者が月1回程度、利用者の自宅を訪問します。
なお、モニタリングの期間が1ヶ月を超えて放置された場合は、減額の対象となります。また、福祉用具貸与に係るモニタリングの場合、福祉用具専門相談員による年2回の実施が義務付けられています。
介護サービスのモニタリングのポイント
ケアマネジャーには、利用者の状況を考慮し、より最適なケアプランとなるよう、各専門職と連携して柔軟に対応することが求められています。
そのために、モニタリングは欠かすことのできない業務です。ここでは、モニタリングで確認すべき4つのポイントについて解説します。
ポイント①計画通りにサービスが実施されているか
要支援の利用者やその家族は、介護サービスを受けることで自分の問題や課題が解決されることを期待しています。
ケアマネジャーはケアプランの提案にとどまらず、サービスが計画通りに実施されているかをモニタリングし、確認することが必要です。常に最適なプランを提供できるよう、現場の実態を把握することが求められます。
ポイント②利用者や家族のニーズが満たされているか
ニーズの充足とは、利用者の欲求や要求がどの程度満たされているかということです。モニタリングでは、ケアプランの実施度合いだけでなく、その結果、利用者や家族のニーズがどの程度満たされているかを把握することが重要です。
サービス開始時の利用者のニーズと、しばらくしてからのニーズに乖離が生じることは少なくありません。
利用者、家族、介護事業者の間でニーズの認識に齟齬が生じないようにするためには、利用者、家族との面接を頻繁に行うことが必要でしょう。
ポイント③利用者や家族の要望を聞き取る
患者さんの健康状態などによって、患者さんやご家族が必要とするサービスが変わることは珍しくありません。そのため、介護サービスをどのように感じているのか、どのような要望があるのかをヒアリングすることが重要です。
ポイント④目標の達成状況と評価
ケアプランでは、ニーズに応じた長期・短期の目標を設定し、その達成状況をモニタリングにより評価します。
例えば、「デイサービスで週3回の入浴を拒否しているが、全く利用できない」という場合、なぜ拒否しているのかを介護サービス事業所と分析し、サービス内容を再検討する必要があるでしょう。
ポイント⑤利用者本や家族との信頼関係を強める
利用者さんからの信頼はとても大切です。信頼関係がないと利用者や家族の中には本音を話しにくく、ケアプランのズレに気づきにくい人もいます。
そのため、本人だけでなく家族の状況も考えたケアプランを調整することで、利用者・家族との信頼関係を強化することができます。
介護サービスのモニタリングの注意点
利用者や家族のニーズに合ったモニタリングを行うには、どうすればよいのでしょうか。適切なモニタリングを行うための留意点を説明します。
注意点①利用者の変化に気を配る
モニタリングでは、前回の訪問と比べて利用者さんに起きた変化などを見逃さないことが大切です。事前にサービス情報を整理しておくと、モニタリングがスムーズに行えます。
また、当初の計画と現在のニーズが異なる場合は、最適なサービスが提供されるよう、計画を微調整します。
注意点②サービス担当者とコミュニケーションを取っておく
サービスを担当する介護職員やホームヘルパーは、ケアマネジャーよりも利用者と接する時間が長いです。そのため、モニタリングにおいてはサービス担当者の情報や意見が非常に重要です。
そのため、いつも良いコミュニケーションを図ることでモニタリングや計画の調整が行いやすくなることでしょう。
注意点③モニタリングの内容は具体的に書く
モニタリングの内容を具体的に書くことで、報告書を見た人が利用者の状態をしっかり把握することができます。
例えば、「入浴できた」「入浴できなかった」という結果だけを書くのではなく、「脱衣に抵抗があり拒否しているが、丁寧に声をかけると入浴できるようになった」など、利用者の気持ちや拒否している理由も書くとよいでしょう。
モニターには決まった書式がないので、利用者の状態を具体的にわかりやすく書くことを心がけましょう。
注意点④事前の準備はしっかりしておく
モニタリングの準備をしっかりしておくことで、当日の現場確認がスムーズに進み、利用者の負担も軽減されます。
また、訪問日時は必ず事前に了承を得て、突然の訪問にならないように注意しましょう。案内してほしいサービスについて要望がある場合は、事前に担当者に連絡し、相談するとともに、訪問時間の調整をお願いします。
ただし、利用者から苦情があった場合は、抜き打ちでチェックを行うなど状況に応じた対応が必要です。
注意点⑤デリケートな質問は負担にならない聞き方で
お金や家族関係などのデリケートな質問は、聞き方を間違えると不信感や嫌悪感につながることもあります。
直接的すぎない表現、「はい」「いいえ」で答えられる質問形式など、ユーザーに負担をかけない質問の仕方を身につけましょう。
また、質問の内容によっては、家族の前でユーザーが回答しにくい場合もあります。逆に、ご家族が患者さんの前では伝えにくい要望もあるかもしれません。
それぞれの本音を引き出すためには、患者さんとご家族の双方に配慮する必要があります。患者さんだけでなく、ご家族も一緒になって、気になる点がないか確認するとよいでしょう。
モニタリングシートの書き方
モニタリングを実施した場合、その結果を文書化する必要があります。そこで用いられるのがモニタリングシートと呼ばれる書面です。
シートの書式に決まりはありませんが、わかりやすく整理して書くことが大切です。シートの作成にあたっては、誰が読んでも理解できるように、客観的な視点で記入することを心がけましょう。
記入日 | 令和2年1月1日 |
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担当者名 | 鈴木慶子 |
利用者名 | 加藤善子様 |
短期目標 | できる限り自力で入浴する |
目標期間 | 3カ月 |
サービスの内容 | 入浴の際に転倒しないようにスタッフが補助に入る |
評価 | ・手が届く範囲で自力で洗うことができている ・介助サービスにより安心して入浴ができるため、体も清潔に保たれ、良い気分転換になっている |
今後の課題 | 入浴習慣の継続 |
モニタリングはより良い介護サービス提供のために欠かせないもの
モニタリングとは、ケアマネジャーが定期的に行うことを指し、ケアプランの見直しや調整には欠かせないものです。また、モニタリングはケアマネジャーの資料として、ケアマネジャーから提出されるものです。
介護職員ならではの視点で行われた具体的なモニタリングをケアマネジャーに反映させることで、利用者によりよい介護サービスを提供することができるのです。
介護における見守りの目的をしっかりと理解し、モニタリングシートを活用しながら支援に関わる様々なスタッフとの連携を深め、利用者や家族から信頼されるケアマネジャーを目指しましょう。