家族に一人暮らしをする高齢者がいる場合、万が一のことを考えたときの安否確認や見守りサービスを受けることが重要です。そこで今回は、一人暮らし高齢者に向けた安否確認サービスを行う地方自治体の代表的なサービスや、トラブルを事前に防ぐための高齢者見守りグッズなどをご紹介していきます。

一人暮らし高齢者の安否確認は?

一人暮らしをする高齢者の安否確認は、遠方に住む家族からの依頼で警察や自治体が行ったり、集合住宅の管理人が家賃の未払いなどを理由に行ったりなどが大半の理由となります。では、具体的にどのように安否確認を行うのか、また安否確認を警察に依頼した場合の対応なども解説します。

安否確認とは具体的には?

一人暮らしの高齢者に向けた安否確認とは、まず対象の高齢者が住む自宅まで出向き、室外から声をかけて在宅しているか確認します。この時点で対象者が在宅しており、会話をするなどのコミュニケーションが取れれば特に問題はなく、終了となります。

しかし何も応答がない場合は、手紙を投函して後日また出向き、再び室外から呼びかけるということを行います。何度手紙を出したり訪問しても応答がない場合や連絡さえ取れない場合は、何らかの方法で鍵を開けて、住居内を確認します。

安否確認というと、自宅の中に入り、本人が健康かどうか確かめるという部分を想像しがちですが、室外から呼びかけたり頻繁にコミュニケーションを取るという行為も安否確認に繋がるのです。

高齢者の安否確認を警察に頼んだ時の対応

万が一高齢者家族と連絡が取れなくなったなどの理由で、警察に安否確認を依頼した場合は、基本的に確認を行ってくれるのは頼んだ時のみになります。地方自治体や公共団体などのサービスで安否確認を依頼した場合は、週に1回から月に1回程度となるので、緊急時の対応はほぼ不可能と言えます。

例えば高齢者に持病があり、突然倒れたり意識を失う危険性があったとしても、警察は頻繁に安否確認を行ってくれるわけではないため、手遅れになる可能性は高いということです。つまり、警察による安否確認は対象者が「生きているかどうか」を確認するだけなのです。

高齢者の安否確認を警察は必要か

高齢者の安否確認が警察の立ち会いが必須なのかと言えば、そうではありません。警察がいなくとも、家族以外の人物が住宅に入って安否確認を行うことに関しては何ら問題はないのです。

しかし、万が一高齢者が室内で亡くなっていた場合は、その人が第一発見者となり、警察での聴取に応じて状況を細かに話すなどの役割を果たす必要があります。一方で、応答が無いからと鍵を開けて入ってしまい、本人と鉢合わせると「不法侵入だ」などの言いがかりを付けられて面倒なトラブルに発展しかねません。

こういった事態を避けるためには、警察に立ち会いを依頼すると正しく対処してもらうことができ、第三者に面倒をかける心配もないでしょう。従って、住居内に入って安否確認を行う場合は、警察に依頼することをおすすめします。

警察に相談するのは最終手段

安否確認をする際は警察に依頼するのが良いとは言いましたが、高齢者家族と連絡が取れなくなったというだけで、警察に連絡して「家に入って確かめてきてください」と依頼する方も少ないでしょう。

まずは、近くに住む知り合いや地方自治体などに依頼して、室外から声をかけてもらったり、一定期間自宅周辺を気にしてもらうなどの対策を取っておきましょう。それでも応答がない場合には鍵を開けて住居内に入るという流れが妥当です。

この際に警察に同行してもらったり、立ち会いを直接依頼するなど、警察への相談は最終手段として考えておくべきです。なぜなら、警察が動くということは大事であり、近所からの野次馬なども予想されるので、万が一対象者が普通に暮らしていた場合、かえって面倒をかけてしまいます。

安否確認を警察以外に頼めるのか?

一人で暮らす高齢者の安否確認は、警察以外の人や団体などに頼むこともできるのか、詳しく解説していきます。最近では、地域ごとに高齢者に向けたサービスも数多く行われているため、非常におすすめです。

安否確認に特定の規定はない

前述したように、安否確認を行う人物に特定の規定はないため、出向ける人が行けば良いのです。家族が近くに住んでいない場合は、近所の知り合いにお願いしたり、地方自治体や警察に依頼するケースもあります。対象の高齢者が集合住宅に暮らす場合は、管理人や管理会社のスタッフに依頼することも可能です。

ほかにも、本人が働いている場合、勤務先の同僚や上司などに連絡して確認してもらうという方法も良いでしょう。どちらにしても連絡が取れないのであれば、誰かが自宅まで出向き直接声をかけてもらうことが最適です。

自治体や地域で提供される見守りサービス

最近では高齢化社会により一人で暮らす高齢者も増えているため、地域ごとに高齢者を支援するサービスも数多く行われています。家族の安全や豊かな生活を守るために、こういった行政サービスに頼ることもおすすめです。

また、厚生労働省では、住まい・医療・介護・介護予防・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の推進を行っており、高齢者が最も住みやすい場所で最期まで暮らし続けられるよう、支援する体制も強化しているのです。

全国自治体の代表的な高齢者見守り・安否確認サービスを紹介

ではここで、全国自治体が行う高齢者の見守りや安否確認サービスについて解説していきます。多くの地域で何らかの高齢者見守りサービスが行われていますが、その中でも代表的な例をご紹介しましょう。

東京都の安否確認サービス

東京都内では、103地区で「高齢者見守り相談窓口設置事業」が実施されています。これは、高齢者の在宅生活の安心や安全を提供するために、地域に高齢者を見守る拠点を設け、高齢者からの相談受付や生活実態の把握、関係機関と連携した見守り等を行うサービスです。

社会福祉士や介護支援専門員の資格を有する相談員が、電話相談や高齢者宅への戸別訪問、高齢者を見守るネットワークの構築などを通して在宅高齢者の情報収集や安否確認に務めてくれます。家族からの相談にも対応してくれるので、設置される地域に住む場合は、相談窓口に連絡してみると良いでしょう。

大阪市の安否確認サービス

大阪市では、高齢者だけで暮らす世帯を対象に、環境局の職員が家庭までゴミの収集に伺うという「ふれあい収集」サービスを行っています。普通ゴミや資源ゴミ、容器包装プラスチック、古紙・衣類を自宅まで収集に来てくれるほか、粗大ゴミの持ち出しも行ってくれます。

万が一約束した日にゴミが出されていないという場合は、希望すれば環境事業センターから登録された連絡先に安否確認をするサービスもあるので、家族も安心できるでしょう。

全国自治体の安否確認サービス例

前述した東京都や大阪市以外でも、全国の自治体で一人暮らしや高齢者のみの世帯に向けた、安否確認サービスを行っている地域は多数あります。以下で、いくつか例をご紹介しましょう。

【北海道帯広市の「ひとり暮らし高齢者訪問活動」事業】

帯広市では、週3回まで専門スタッフが一人暮らしをする高齢者宅へ訪問し、安否確認を行うというサービスを行っています。事前に連絡が無かったり、訪問時に不在だった場合は市役所と連携して離れた家族に連絡を取り、再度の訪問などを通して安否確認を徹底してくれます。

【茨城県阿見町の「愛の定期便」事業】

阿見町では、町に3か月以上住所を有する65歳以上のひとり暮らしの高齢者で安否確認の必要性が高いと民生委員が確認した方を対象に、週2回、決まった曜日に乳製品を手渡し配達し、孤独感軽減と安否確認を行うサービスを提供しています。

【大阪府貝塚市の「愛の一声運動」】

貝塚市では、一人暮らしや高齢者のみの世帯を対象に、月曜日から土曜日までの1週につき6回まで、乳酸菌飲料を配りながら声をかけるという、安否確認サービスを行っています。訪問頻度が高いので、家族もより安心して市に任せることができるでしょう。

高齢者と連絡が取れなくなる前にしておきたいこと

安否確認サービスも大切ですが、高齢者と連絡が取れなくなってからでは手遅れという場合もあります。そこで、万が一に備えて事前に準備できることをご紹介します。

見守りカメラを設置する

見守りカメラは、部屋に設置しておくとスマートフォンなどから、24時間いつでも部屋の中を見ることができるため、高齢者が元気に過ごせているか、何か問題が起きていないかなどを遠方からでも見守ることができます。中には会話機能が付いているものもあるので、コミュケーションを取ることも可能となります。

宅配サービスの利用もおすすめ

毎日から週に数回と食事を配達してくれるサービスや、定期便などの宅配サービスを利用するというのも、おすすめです。宅配業者の方が安否確認を同時に行ってくれるだけでなく、バランスの取れた食事を届けられれば健康面でもサポートできます。

中には、高齢者宅を対象に安価で食事を届けてくれるサービスを行っている地方自治体もあるので、まずは住まいの地域が行う事業をチェックしてみると良いでしょう。

地域包括支援センターに相談

高齢者家族の見守りが必要ではないかと感じていても、どのような方法が適切なのか悩んでいるという方も多いでしょう。その場合は、地域包括支援センターに相談すると、経験豊富な相談員がおすすめのサービスやアイテムなどを教えてくれます。

無料や安価で利用できる地域のサービスを紹介してくれる場合もあるので、悩んでいる時やどうしたら良いのかわからないという時は、ぜひ頼ってみましょう。

連絡が取れなくなる前に対策を取っておくことが大切

警察や行政の高齢者見守り・安否確認サービスを利用することは良いのですが、連絡が取れなくなってしまう前にできる限りの対策を取っておくと、急な体調の変化やトラブルなどに対応できる可能性も大幅に上がります。家族の安全な生活を守るために、地域のサービスなども最大限利用しましょう。

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