自分の親の介護について、考えたことはあるでしょうか?認知症になってしまったり、要介護認定されて自分が介護をするときが来る可能性がありますし、それを考えると不安になることも色々と多いことでしょう。今回は、親の介護と自分の生活の影響などについて詳しく解説します。

目次

親の介護について心配している人は多い

少子高齢化が進み続けている日本においては、介護の需要は年々高まっています。そして、最も身近にある介護で言えば、自分の親の介護です。ただ、具体的に何をすればよいのか分からない、と思われている方も、実際に多いものです。

特に心配しているのは費用と時間

ある調査によれば「親の介護について心配はあるか」という質問に対して、心配していると答えたのが42.8%、心配がないと答えたのが8.6%、まだ分からないという答えが39.8%で、既に介護をしているのが8.8%という結果になっています。

そして、実際にどんな事が心配なのかという質問に対しては、最も多かったのが「介護にかかる費用」とダントツで多く、全体の8割近くが心配していると回答しています。

次いで「介護にかかる時間」も多く、費用に準ずる多さの回答数です。そのほかにも「家族に対しての負担」も相当数の回答が集まっていますし、介護施設や仕事が見つかるかどうかといったところも心配なようです。

親の介護が自分の生活に与える影響

自分が親の介護をするとなれば、生活をする中で付きっきりで面倒を見なければなりませんし、施設を利用するという場合には費用面の問題も出てきますから、時間とお金に心配が行くのも当然の帰結かもしれません。

続いては、実際に親の介護をした時に自分の生活に与える影響はどんなものになるのか、という点についてですが「お金」「時間」「ストレス」という3つの観点から見ていきましょう。

影響‭①お金

まずはお金、費用面についての影響です。介護を行う場合には様々な費用が発生するわけですが、特に介護施設を利用するなどのサービスを使う場合、その都度費用が発生するのは間違いありません。

介護サービスで代表的なのは、有料老人ホームや特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅といったものが挙げられます。特に有料老人ホームの「介護付き」という種類は、月々数十万円は確実にかかってくると言われるほど高額です。

施設に住まわせるといった形ではなく、デイサービスや訪問介護といった在宅で受けられるサービスもありますが、バリアフリーの改修工事、介護用品の購入費用等がかかってきます。

影響②時間

続いては、心配事で費用面に次いで多かった時間に関する問題です。介護が必要な高齢者には要支援や要介護度のレベルがあり、支援は1と2、介護は1から5の内数値が高ければ高いほどより多くの介護を必要とします。

もし在宅で介護をするとなった場合には、当然ながら介護度が高い方がより多くの時間を介護に費やさなければならず、家族介護者の内約7割近くが1日の内に2,3時間ほどしか休憩が取れていないというデータもあるほどです。

施設介護を利用する場合には、介護そのものを施設に任せられますので、負担は一気に減少します。面会も最も多いのが週に1回となっていて、在宅か施設を使うかで時間の長さは大きく変わるのです。

影響③ストレス

もう1つ、ストレスに関する影響です。介護に関して最も辛いとされているのは、終わりがなかなか見えにくいという点にあります。要は、いつまで介護をすればよいのか、いつまで自分が助けなければならないのかの見通しが付かないのです。

精神的な負担というのがまず考えられ、介護中に孤独を感じたり、不安な事ばかり考えてしまう、頭ではわかっているのにイライラしてしまって、怒鳴ってしまうなどといったケースも考えられます。

身体的な負担からくるストレスもあり、乳幼児を育てるのと違って体を支える場面が多い介護では、自分の体の方を傷めてしまう可能性もあります。

親の介護で発生するトラブル

時間、お金、そして介護をする当人のストレスと、親の介護を行う上では様々な負担がかかってくるのは間違いありません。そして、介護の大変さだけではなく起こりうるトラブルもいくつか考えられます。

トラブル①兄弟姉妹の役割分担

まず考えられるのは、兄弟姉妹との役割分担の問題です。複数人の兄弟姉妹が居る家族の場合、介護に関して誰がどの役割を担って行っていくのかというのは、トラブルが生じやすい点になっています。

全員社会人であれば、それぞれの仕事とプライベート両方の都合があるでしょうし、遠方に住んでいる場合にはそもそも実際に介護に関われるかどうかも怪しくなってきます。

そして、十分な話し合いを負えないままに、最も近しい兄弟姉妹の誰かに負担が集中してしまい、より大きなトラブルに発展してしまいかねません。故に、早い段階で親の介護が必要になった時の役割分担や介護の仕方そのものを話し合っておいた方が良いでしょう。

トラブル②金銭的な問題

続いては、やはりと言うべきか金銭的な問題です。親の介護で考えられる負担の中でも、金銭面については最も大きな不安や心配要素として数えられています。特に、介護費用が親の貯金を超過した時、トラブルが起きやすくなります。

介護が長引くこととなれば、当然かかる費用も多くなってきます。同じく兄弟姉妹が居る時には、誰がどの程度の割合で負担していくのか、といったところでまた問題が発生してしまいやすいのです。

更には、家庭の有無や経済状況などによって、その負担額に差が生じるとなると、兄弟姉妹館で不満が発生すると考えられます。これによって、冗談抜きに介護で家庭内不和が発生する可能性が生じます。

トラブル③相続

この金銭的な問題から続くトラブルが、死後の相続問題です。相続に関する兄弟間、そして親戚間のトラブルはもはや付きものであると考えても良いほどです。また、人によっては実家で介護を、担っていた人が相続問題に対して有利に動くのでは、という不安を持つケースもあります。

実際に介護をしている側からすれば、精神的、肉体的、経済的な負担が多くなり、兄弟姉妹が介護を行っていないような時には介護をしている人の相続分が多くならなければならない、と考える人もいます。

特に親の遺す財産が多ければ、この相続問題はより大きく複雑なものに発展しかねません。故に相続についても事前に話し合いの場を設けておくべきと言われています。

親の介護をする際に利用したい介護保険制度

この様に、親の介護では実際に介護を行う中での負担だけではなく、その中で生じる様々な問題に関しても発生の可能性を考えるべきです。負担やトラブルを未然に回避するためには、介護保険制度の利用について知っておきましょう。

介護保険制度で受けられるサービス

少子高齢化によって介護の業界の需要が高まっているのを受けて、日本では様々な介護保険制度で受けられるサービスがあり「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種があります。1つずつ見ていきましょう。

居宅サービス

まず、居宅サービスについてです。これは、要介護、要支援者が文字通りの居宅、つまり現在の居宅に住んだままの状態で受けられる介護サービスであり、種類が非常に豊富に存在しています。

例えば訪問サービスがあり、自宅で生活している要介護者、要支援者を介護スタッフが訪問し、買い物、掃除等の生活支援、健康管理や衛生管理指導等を行います。

通所サービスもあり、これは自宅で暮らしている要介護、要支援者が施設に通う形で日中を過ごし、食事等の介護や健康管理等を行います。家とは違い、施設に日中いるというのが訪問サービスとの最大の違いです。

施設サービス

続いては、施設サービスになります。居宅サービスの中でも施設を利用する通所サービスがありましたが、あくまでも利用者は自宅に住んでいるというのが原則であったのに対して、施設サービスは特定の施設に入所した要介護状態の高齢者に提供されます。

施設は「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」であり、特別養護老人ホームを例に挙げれば食事や入浴といった生活介助が主になります。

その他の介護医療院や介護療養型医療施設などでは、医学管理下の施設の中での介護、リハビリ、療養上の管理や看護といったサービスが提供されています。

地域密着型サービス

そしてもう1つ、地域密着型サービスです。これは2005年に新設されている制度であり、高齢者が住み慣れている身近な地域での生活をしながら介護ができるよう、事業所がある市区町村の要介護者、要支援者に対し提供されます。

例えば訪問、通所型サービスがあり、自宅で生活している要介護、要支援者を訪問するかまたは施設に預け入れ、買い物、掃除、そして食事等の生活介助や看護を提供する形となります。

認知症対応型サービスなどもあり、自宅から通っている認知症の方やグループホームに住んでいる認知症の方に対して、買い物や掃除といった生活支援、認知症絵化を行います。

仕事をしながらの親の介護で利用したい支援制度

親の介護をするとなれば、兄弟や親せきも関わってくる人はほぼ社会人ですし、仕事がある以上中々付きっきりで行うというのは難しくなってきます。そういった場合にも、利用を推奨している支援制度があります。

介護休業制度

まず挙げられるのが、介護休業制度です。この制度は、自分の家族に介護が必要な人が居る時、まとまった休暇を得られるという制度になります。長期の介護を目的としたものではなく、あくまでも仕事と介護を両立させるのが目的の制度です。

休業については3回までの分割の取得が可能となっていて、通算93日までとなります。また、半日単位の短い時間で設定して休む事が出来る、介護休暇という制度もあります。

利用できる人原則として日々雇用者を除く労働者
対象となる家族配偶者(内縁含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
介護休業対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに3回を上限として、通算93日まで
介護休暇対象家族一人につき1年5日まで。対象家族2人以上の場合は1年に10日まで

介護休業給付金

もう1つ覚えておきたいのが、介護休業給付金です。今回の記事でも何度も触れている通り、介護に関する費用の問題は付きものなのですが、介護休業制度を利用している中では最低でも休業前の67%の賃金を確保できる、というのが介護休業給付金です。

当然ながら介護休業をする中での経済的な不安を解消するための制度なのですが、休業を開始した時点で終了後に離職をする予定の場合、支給の対象にはならないので注意が必要となります。

親の介護で問題が起きないためにしておきたいこと

介護を考えた時の不安も様々あるでしょうし、今回初めて介護をし始めてから起こりうるトラブルを知ったという方も居るでしょう。それらを踏まえたうえで、問題を未然に回避するためにしておきたい事がいくつかあります。

親が元気なうちに介護について話し合う

まず、親が元気で介護が必要ない状態の内に、介護に関して話し合っておきましょう。心理的な抵抗もあるかもしれませんが、近い将来必要になるかもしれない問題なのですから、話し合いを設けておいて損はありません。

将来的に介護がもし必要になった時には、どんな対応をしてもらいたいのか、費用面を考慮して在宅の方がいいという場合もあれば施設を利用してできる限りこちら側の負担を減らしたいと考えているかもしれませんから、親の希望や考えなどを聞いておきましょう。

親の経済状況を把握する

介護の必要性や希望を聞くのに合わせて、経済状況についても把握するのをお勧めします。何度も触れている通り介護をするにはお金が少なからずかかりますし、特に施設を利用する場合にはトータルの費用が高額になる傾向にあります。

介護が必要になる年齢となれば年金を受給している筈ですが、それだけでは賄えなくなっ手来る可能性の方が高いです。事前に貯金や年金、また保険がどの程度あるのかを可能な限り早めに把握しましょう。

兄弟姉妹間で役割分担を決めておく

役割分担がトラブルになりやすいのであれば、最初から兄弟姉妹館で決めておくというのもやっておくと良いです。一度介護に関する考え方を話し合うべきで、例え衝突があっても何の議論を交わさないよりもはるかに分かる事が多いです。

そして、介護に対してそれぞれがどこまで協力できるか、関われるかというのもその時点で把握できると一番理想的です。金銭的、時間的な面は特に事前に知っておいた方がお互いの為です。

介護サービスや支援制度について調べておく

介護サービスにも在宅のものもあれば施設や地域密着型など様々あり、また介護休業をはじめとした支援制度もあります。どんなサービスがあるのか、どんな制度が利用できるのかを事前に知っておくというのも、極めて大切といえるでしょう。

親の介護による影響やトラブルを把握して早めに準備を

親の介護も、出来れば満足にしてあげたいという気持ちは根底にある筈です。トラブルや問題が絶対に発生しないとは言い切れませんが、可能な限り起こりうる問題や利用できる制度、サービスを把握し、準備を早めにしてください。

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