「介助」とは、高齢者など身体の不自由な人に何らかの手助けをすることを指します。ちょっとした介助なら簡単で、誰にでもできると思いがちですが、体力や全身機能が衰えている人への介助には必ず危険が伴います。今回は、介助の基本動作と、一般的によく耳にする「介護」との違いについて解説します。
介助と介護の違いとは?
介護業界で働くのであれば、この2つの違いははっきりと分かっておきたいものです。まず、「介護」とは、自力で日常生活を送ることができない人の日常生活を支援するために必要な活動全般を指します。
介護による支援には、身体的支援、日常生活支援、社会的支援があります。具体的な内容としては、身体介助(利用者の身体に直接触れること)、生活援助(家事の支援)、外出支援など、利用者の意思を尊重し、利用者の生活を支援するものです。
一方、「介助」とは、利用者が自分でできない日常生活上の動作や行為を支援することで、日常生活そのものを支援する行為になります。要は、介護には介助も含まれると考えると分かりやすいでしょう。
介助士と介護士の違い
「介護士」と「介助士」の違いがわからないという方も多いのではないでしょうか。まず「介護士」とは、介護職に従事する人のことです。
高齢者や障害者の自宅を訪問したり、老人ホームやデイケアセンターなどの介護施設で、入浴や食事、排泄、レクリエーションなどのサービスを提供する仕事です。
「介助士」はサービス介助士とも呼ばれ、高齢者や障がい者の支援に活かせる資格です。ただし、サービス介助士は、介護士のような身体介助(食事や入浴など)をすることはできません。このように、サービス介助士は介護士と混同されがちですが、仕事内容も役割も大きく異なります。
介助に関する7つの種類
介助は、介助される人が自分でできる範囲の動きや、危険への配慮が必要な重要な仕事です。ここでは、介助の種類とその方法、注意点などを紹介します。
種類①歩行介助
介助される人の歩行ペースに合わせることが大切です。常に転倒の危険性があるため、介助者は注意を払う必要があります。片麻痺の場合、介助者は患側(麻痺のある半身)に立ちます。
一歩を踏み出すときは、必ず事前に声をかけ、二人の呼吸を合わせてください。階段の昇り降りは、介護者が健側(麻痺のない半身)の手で手すりを持ち、転倒に備え患側の斜め前に立つようにします。
種類②食事介助
食事介助の際には、誤嚥のリスクに備えておくことも大切です。高齢者は誤嚥しやすく、肺炎を引き起こすだけでなく、最悪の場合窒息死に至ることもあり、重大な事故となりかねません。また、食中毒予防の観点からも、食前の手洗いは念入りに行い、消毒までするように心がけましょう。
種類③入浴介助
入浴は要介護者の体力を必要とするため、健康状態の確認が欠かせません。また、体温管理だけでなく、血圧の急激な上昇や下降にも注意が必要です。
室温や水温の管理、濡れて滑りやすくなった体を支える際には転倒に注意する必要があります。入浴介助の目的は主に2つあり、1つは患者さんの身体を清潔に保ち、感染症を予防することです。
不衛生な皮膚状態は感染症につながる可能性があるため、注意が必要です。また、入浴介助を通じて患者さんの身体全体の状態を確認することで、内出血や傷の早期発見につながることもあります。
2つ目は、リラックス効果です。入浴により体が温まることで血流が良くなり、新陳代謝が活発になります。また、筋肉の緊張をほぐし、関節痛の痛みを和らげる効果もあります。
また、適温での入浴は副交感神経を刺激し、リラックス状態を作り出すので、寝つきが良くなる効果も期待できます。
種類④排泄介助
排泄介助は、トイレへの誘導や排泄後の対応などを行います。自力で歩ける方には歩行をサポートする歩行介助を行いますが、部屋内に設置した「ポータブルトイレ」への誘導を行うこともあります。
「ポータブルトイレ」は、トイレ本体、便座、排泄バケツ、フタが一体となったもので、文字通り持ち運びが可能なタイプです。寝室に置くことができるため、トイレに移動することが困難な方の介助に利用されています。
寝たきりの方には「オムツケア」を行います。おむつには紙製と布製があり、介護者が交換するテープタイプと、利用者が自分で履くパンツタイプがあります。
さらに、寝たままの「便器・小便器の使用介助」をする場合もあります。尿意や排便があってもベッドから起き上がれない方に向いています。これらの器具を使用した後は、洗浄・消毒までが仕事となります。
種類⑤更衣介助
毎日の衣替えは、体を清潔に保つだけでなく、気分転換にもなり、ボタン付けやボタン外しで指先を使うことで、リハビリや脳の活性化にもつながります。
椅子に座ったまま着替える場合、ちょっとした動きでバランスを崩す可能性があります。そのため、着替えを介助する際は、着脱しやすく、患者さんの関節をサポートできるような衣服を選ぶことが大切です。
例えば、ストレッチ性のある上着は着脱が簡単ですし、ズボンは締め付けすぎないゆったりとしたタイプがおすすめです。拘縮(関節の可動域が狭くなること)がある場合は、ケガにつながることもあるので、着替えの際は関節をしっかり支えてあげましょう。
種類⑥移乗介助
移乗介助の方法は、状況によって異なります。たとえば、ベッドから車いすへ、車いすからベッドへ、床からの移動など、さまざまなパターンがあります。
ベッドから車椅子への介助方法は基本的な移乗介助ですが、いくつかのポイントがあります。移乗介助の際には、上半身を持ち上げるのではなく、テコの原理と遠心力を利用して上半身を起こすようにしましょう。
ベッドは車いすより少し高くなるように調整しておきます。また、車いすの角度はベッドに対して45度にし、体重移動は前かがみの姿勢で行うことで介助者の負担が軽減されます。
種類⑦起床や寝返りの介助
通常、寝返りは無意識に行われますが、重度の寝たきりや脳梗塞による片麻痺(体の左右どちらかに障害があること)の高齢者の場合はそうはいきません。
寝返りがうまくできない場合は、床ずれを起こさないように注意が必要です。起き上がりに関しては、転倒事故につながる可能性があるため、家族が基本動作を覚えておくことが必要です。
介護に関する2つの種類
「介護」とは、それぞれの定義にもあるように、利用者が満足のいく生活を送ることを目的とした援助全般を指します。具体的には、大きく2つのタイプに分けられます。
種類①身体介護
身体介護とは、食事、入浴、排泄、着替えなどの介護のことで、身体に直接触れる介護です。訪問介護は、身体機能の向上のために日常的な介護が必要な方に、適切なサービスを提供します。
具体的には、食事の世話、部分浴、清拭、着脱、床ずれ防止のための体位変換・姿勢変更、トイレの世話、歩行補助、車椅子の補助などがあります。
種類②その他の援助
その他の生活援助とは、自分では家事ができない高齢者やその家族に対して、訪問介護スタッフが行う掃除、洗濯、調理などの日常生活上の援助が含まれます。また、利用者の自宅近くの店舗で買い物を代行したり、薬局や病院で常備薬を代わりに受け取ったりすることもあります。
介助は4段階に分かれている
介助を行う際には、利用者の心身の状態を把握することが大切です。そうすることで、介助の過不足を防げるという利点があります。介護の段階は、次の4つに分けられます。
- 「自立 」 ある程度自分で行動できる状態
- 「一部介助」 基本的には自分でできるが、他人の手助けや監視が必要な状態。
- 「半介助」支えがあれば、ゆっくり歩くことができる。
- 「全介助」支えがあっても、自分ですべてを行うことが困難な状態。
段階の見極め方
「一部介助」「半介助」の段階の方は、日々のトレーニングで症状の進行を遅らせることが可能です。介護予防の観点から、介護者は利用者の自立を支援し、利用者の能力を維持するように努めなければなりません。
特に高齢者の場合、一度”要支援”と判断されると、介護度や介助度の回復が難しくなります。例えば、食事介助の際、スプーンを持てないが口元まで運ぶことができる場合、スプーンを添え木にして、自力で食事ができるようにサポートすることが重要であると言えます。
また、転倒の危険性がある患者さんに対して必要な介助を行わないと、怪我につながる可能性があります。
不慮の事故やケガを防ぐためには、介助の段階を把握し、その人の能力を損なわないように適切な支援を行うことが大切です。
ついつい助けるつもりで支えてしまう介護者がいますが、これでは、その人の歩行能力を弱めてしまうことになりかねません。もちろん、訓練自体は慣れるまで大変ですが、できるようになったという実感は、介護する側にも満足感を与え、行動範囲を広げてくれるかもしれません。
また、介護する側の負担も全体的に軽減されます。部分的・部分的な介助の状態を維持することは、介護する側・される側の双方にとってメリットがありますので、無理のない範囲で積極的にトレーニングしていきましょう。
介助と介護の違いを明確にしておこう
いかたでしたか?介護とは自立支援を目的とした活動全般を指し、介助とは日常生活そのものを支援する行為を指すということです。
介護の種類を、身体介護と日常生活援助に大別した場合、介助は日常生活で行われる食事介助、入浴介助、排泄介助などが該当します。利用者の介助段階を把握しておかないと、介助の過不足につながることもあるので、注意が必要です。介護業界への転職をお考えの方はぜひ覚えておきましょう。