「介護福祉士」という資格は、介護の仕事を続けていくための目標です。介護福祉士の資格を取得すれば、資格手当が支給され、給与がアップするほか、昇進のチャンスもあります。近年の合格率は平均して7割程度です。スムーズに合格するためには、実際の介護福祉士国家試験の合格率や難易度を知り、対策について考えておく必要があります。介護福祉士を目指そうと考えている方はぜひ当記事の情報を参考にしてください。

目次

介護福祉士の国家資格は難しい?!

介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格です。つまり、一人では日常生活を送ることが困難な人をサポートするプロです。高齢化が進む日本では、近年、介護福祉士のニーズが急速に高まっています。

社会福祉士及び介護福祉士法に基づく資格で、専門的な知識及び技術をもって身体上又は精神上の障害があり日常生活を営むのに支障がある者に対し、その心身の状況に応じた介護を行い、その者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う者と定義されます。

介護福祉士の役割

介護福祉士には、介護分野の専門性を生かし、チームケアを推進するリーダーとしての役割が期待されています。また、介護技術の指導者としての役割も重要です。

個々の介護福祉士の意欲や能力に応じて、利用者のQOL向上に寄与する介護サービスを提供する能力を開発・発揮できるような環境づくりの役割を果たすことがリーダーには求められます。

介護過程の展開の中で、適切な介護の実践について、リーダーが介護職の集団の中でリーダーシップを取ることが大切であり、その役割を適切に果たすためには、介護業界の中でも一定のキャリアを積んだ介護福祉士であることが求められるという訳です。

介護福祉士の良いところ

それでは、介護福祉士になることで得られるメリットについて見ていきましょう。まず、「介護福祉士」という資格は国家資格であるため、日本全国どこでも国が認めた介護福祉士として働くことができます。

また、資格を持っていると、より有利な条件で再就職することができたり、資格手当が支給されたりするので、給与面でも大きなメリットがあります。

さらに、「介護福祉士」の資格を取得すれば、介護施設で管理職として働くこともでき、キャリアアップも目指せます。今は、一定の条件を満たせば、排泄物の吸引などの医療的ケアも行えるようになりました。

前述の通り、現在介護分野は慢性的な人手不足のため、求人も多く、転職を考えている方にもおすすめの資格です。また、厚生労働省は「2019年10月から勤続10年以上の介護福祉士の待遇を月平均8万円改善する」と発表しており、今後も介護福祉士の待遇改善は続くと予想されます。

介護福祉国家試験の合格が必要

介護福祉士になるためには、受験資格を満たし、「介護福祉士国家試験」に合格する必要があります。試験は年に1回行われ、例年、筆記試験は1月の最終日曜日、実技試験は3月の第1日曜日に行われます。

介護福祉士国家試験の合格率や難易度

それでは、具体的に介護福祉士の試験がどれほど難しいのか、合格率や過去からの合格推移を確認してみましょう。

合格率や難易度①合格率は71%

2021年1月と2021年3月に実施された第33回介護福祉士国家試験では、合格率は71.0%でした。過去には70%前後の合格率だったので、ほぼ変わらなかったことが分かります。

受験資格や試験内容の違いから、合格率だけで難易度を判断することはできないとはいえ、結果から見ると国家資格の中では高い合格率となっています。

第33回試験の受験者数は、養成施設と福祉高校の受験者を除くと84,483人中75,026人で、全体の88%が働きながら受験している状況です。

合格率や難易度②合格者の年代は?

次に、介護福祉士国家試験の年齢別の合格率を見てみましょう。2019年の介護福祉士国家試験の年齢別合格率で最も高いのは、41歳~50歳の27.5%です。次いで、21歳~30歳の24.9%、31歳~40歳の20.5%となっています。

この年齢別合格率ランキングは、2018年の試験でも同じです。2018年の合格率は、41歳~50歳が27.8%、21歳~30歳が25.4%、31歳~40歳が20.9%となっています。介護福祉士の国家試験は働きながらでも受験できるため、既卒者や社会人など年齢が高い人が受験する傾向にあるようです。

合格率や難易度③男女別合格率

次に、介護福祉士国家試験の合格率を男女別に見てみましょう。2019年のデータでは、女性の70.4%、男性の29.6%が介護福祉士国家試験に合格していることがわかります。

前年の2018年の介護福祉士国家試験合格者の男女比は、女性が69.6%、男性が30.4%でした。女性よりも男性の受験者が少ないこともあり、男性の合格率は低い傾向にあるようです。

合格率や難易度④合格推移

厚生労働省の発表によると、2018年の合格率は73.7%、2016年は72.1%でした。そう考えると、2021年度の71.0%は、過去3番目に高い数値であったことが分かります。

実際に介護福祉士の試験を受けた人の感想

以上のように、第33回試験の合格率を紹介しましたが、実際の感覚としては、どの程度難しい試験だったのでしょうか。ここでは、受験した方の声をまとめてみました。

試験の難易度については人によって意見が分かれるようですが、「選択肢を2つに絞ってもかなり難しい問題があった」「過去問から見ても難しかった」など、今年は例年よりも難しく感じたという方が多かったようです。

とはいえ、合格率は昨年より高かったので、努力が報われたと感じた方も多かったのではないでしょうか。いずれにせよ、勉強が足りないとなかなか合格できない試験であることは間違いないといえるでしょう。

介護福祉士国家試験内容

介護福祉士の資格を取得する方法はいくつかありますが、中には筆記試験に加えて実技試験に合格する必要があるものもあります。この方法で資格取得を目指す場合は、実技試験で不合格にならないよう、万全の対策で臨みましょう。

介護福祉士試験内容①受験資格

介護福祉士になるには「介護福祉士国家試験」に合格する必要があり、2021年1月に行われた第33回介護福祉士国家試験の場合、受験料は15,300円でした。

試験は年に1回行われ、例年1月に筆記試験、3月に実技試験が行われます。介護福祉士国家試験の受験資格はいくつかあり、資格によって取得までの流れが異なります。

「実務経験ルート」は、学校に通わず、介護現場での実務経験をもとに受験資格を得るものです。「養成施設ルート」は、介護福祉士の養成施設を卒業した方が対象です。

介護福祉士試験内容②筆記試験

筆記試験は、午前の部10:00~11:50、午後の部13:45~15:35に実施されます。弱視の方、点字の方は試験時間が若干異なります。

筆記試験の合格基準は、全科目で点数が取れている状態で、全体の60%程度です。ただし、試験の難易度によって合格基準が調整されることがあります。

筆記試験の形式は、マークシート方式です。問題数は全部で125問で、試験時間は220分です。介護福祉士国家試験の出題科目は多岐にわたります。1科目でも不正解があると、合計点が補正合格点を超えていても不合格になります。

介護福祉士試験内容③実技試験

1月下旬の介護福祉士国家試験の筆記試験に合格した人だけが、3月上旬の実技試験に進むことができます。実技試験は、実際の介護の現場で適切な介護ができるかどうかが問われる試験です。

介護の現場で想定される場面を想定した問題が出題され、5分という制限時間内に対応しなければなりません。実技試験では、受験者一人一人が個室に呼ばれ、モデルが要介護者役を演じ、2名の試験官が試験を行います。

毎年1つの事例が与えられ、試験官は5分間で「要介護者の安全・快適性の確保」「要介護者とのコミュニケーション」「要介護者の自立・自己決定の支援」の3点について採点します。合格のポイントは、基本に忠実であることです。

実技試験では、数年前までは片麻痺に関する問題が中心でしたが、第25回では歩行器型杖の利用者の介護、第26回では視覚障害者の介護など、範囲が広がっています。どのような問題が出題されても、慌てず落ち着いて対応することが大切です。

介護福祉士合格のための勉強法

介護福祉士の試験は年に1回しか行われないので、不合格になると翌年まで待たされることになります。試験に落ちたら、翌年まで待たなければなりません。そこで、最短で合格するためのコツをご紹介します。

勉強法①過去問を解き問題の傾向をつかむ

介護福祉士国家試験に合格するためには、まず過去問を解くことから始めましょう。参考書を1ページ目から読んだり、学習ノートをまとめたりするのではなく、過去問を繰り返し解いて、どのような問題が出題されるのかを把握することが大切です。

最初は多くの答えを間違えると思いますが、それで良いのです。間違えた問題の解説を読み、次の問題を解き、間違えたら解説を読むというサイクルを繰り返してください。解説を読んでもわからない問題は、いつまでも間違えた問題にこだわらないことです。

勉強法②得意分野から勉強する

全く分からない難しい分野の勉強を始めると、途中で嫌になってモチベーションが保てなくなり、最終的には全く勉強したくなくなります。ですから、自分が知っている分野、得意な分野の勉強から始めましょう。

そうすれば、はじめから新しいことをたくさん覚える必要がないので、ストレスなく続けることができます。こうして少しずつ勉強する習慣をつけてから、より難しい分野に取り組むことで、少々ハードルが高くても根気よく続けることができるはずです。

また、介護福祉士試験の問題の1/3は「解けない問題」だと考えて勉強するのも作戦の一つです。家事などカバーしにくい分野は後回しにして、確実に出題される分野に集中することで、効率よく勉強することができます。

勉強法③間違えた問題は見直しができるようにする

問題集で間違えたら、すぐに見直すようにしましょう。間違えた問題は、自分の苦手な問題です。間違えた箇所を繰り返し確認することで、より理解が深まります。メモをしたり、付箋を貼ったりして、後で見直せるようにしましょう。

介護福祉士試験合格後は資格の登録が必要

介護福祉士になるには、介護福祉士試験に合格すればよいというわけではありません。試験合格後、厚生労働大臣の指定登録機関である「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」に所定の情報を登録する必要があります。

ここでは、試験の合格発表からその後の登録申請までの流れを紹介したいと思います。まず、合格発表は例年3月下旬に行われます。第33回試験の場合、合格発表は3月26日に行われました。

合格発表は、日本社会福祉振興センターと厚生労働省のホームページ、センターと厚生労働省の掲示板で行われます。また、合格発表と同時に結果通知書が発送されます。

次に、必要書類を簡易書留で提出します。登録に必要な書類は、合格発表から数日後に郵送されます。

【ご提出いただく書類】

  • 登録申請書
  • 登録免許税の「収入印紙」原本
  • 添付書類
  • 登録料の原本
  • 戸籍個人事項証明書の原本、戸籍抄本の原本、本籍地記載の住民票の原本のいずれか1通
  • 介護福祉士養成施設の卒業証明書(原本)(対象者のみ)
  • 登録にかかる費用は、9,000円(登録免許税)+3,320円(登録料)+郵送料です。

上記提出書類は、社会福祉振興・試験センターで審査・受理された後、登録簿に登録されます。提出書類に不備がなければ、1ヶ月程度で登録証が送付されます。

介護福祉士試験の申込手順

STEP1:「受験の手引」を取り寄せる
「受験の手引き」は請求してから届くまでに数日かかりますので、締切日の1週間前までに請求してください。台風などの影響で遅れる場合もありますので、お早めにご請求ください。

STEP2: 「受験の手引」を資料請求する
受験案内は、インターネットまたはハガキで請求することができます。インターネットで請求する場合は、「受験案内請求窓口」から請求します。

ハガキで請求する場合は、ハガキの裏面に郵便番号、住所、氏名、電話番号、必要人数、必要人数を書いてください。ハガキの裏面は、宛名ラベルとして使用しますので、正確にご記入ください。

STEP3:必要な書類を用意する
必要な書類はカテゴリーによって異なります。「受験の手引」が届いたら、自分に該当する区分の必要書類を確認してください。実務経験ルート(実務経験3年以上+実務補習修了者)は「区分2」です。

実務経験ルートで受験を希望される方は、「介護福祉士実務者研修」の受講申込を行う必要があります。学校によって期限は異なりますが、国家試験の願書を提出する前に実務者研修を受講しなければなりません。

STEP4:郵送
必要書類が揃ったら、「受験の手引き」に同封されている封筒に入れ、出願期間内に郵送してください。書類は必ず書留で送ってください。郵便では送れないので、郵便局が開いている時間に余裕を持って出かけるようにしましょう。

介護福祉士の試験に合格してステップアップしよう!

介護福祉士の国家試験は、年齢を問わず多くの人が合格しています。そのため、しっかりと勉強して準備をすれば、どの年代の方でも合格することは可能です。今後、介護福祉士国家試験のスタイルが変わる可能性も考慮し、さらなる対策をしていけば、合格に近づくことができるでしょう。

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