介護という職業には若い女性が多く、女性にとって、妊娠は人生の一大イベントです。一方で、仕事と妊娠の両立はとても難しいのも事実です。今回の記事では、妊娠を報告するタイミングや、いつまで働けるのか、出産後に介護の仕事に復帰できるのかなどを解説していきます。現在妊娠中の場合はもちろんのこと、将来プランのある方もぜひご覧ください。

目次

介護職員の妊娠報告のタイミングは?

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妊娠した場合、上司や同僚など周囲の人にいつ報告すればいいのか、悩むところです。一般的な職場では安定期に入った時点で報告、という方が多いですが、体を動かす作業内容が多い介護職の場合は少しタイミングが異なります。ここでは妊娠を報告するタイミング、報告する相手について見ていきましょう。

妊娠が確定したらすぐに報告を

具体的な報告のタイミングは、産婦人科を受診し、妊娠が確認された後です。前述したように、一般的には安定期に入ってから職場に報告する人が多いようです。しかし、介護職の場合、体を動かすことが多い仕事であるため、妊娠してからできる仕事とできない仕事があります。

そのため、病院から妊娠の確定診断を受けたら、できるだけ早く職場に妊娠を報告し、職場の人員確保やシフト調整などの時間を確保することが大切です。

誰に妊娠の報告をすれば良い?

産婦人科で妊娠が確認された場合は、できるだけ早く上司に妊娠を報告しましょう。最初の報告は、直属の上司に口頭で行います。診断書の提出を求められた場合は、かかりつけの産婦人科医に発行を依頼してください。

母健連絡カードを利用することもできます。仕事を続ける上で注意が必要な妊婦や産婦に対して、医師の指導として必要な症状や対策が記載されていますので、ぜひ活用しましょう。

同僚に報告するタイミングは、上司と相談して決めてください。勤務体系の変更や配置転換が必要な場合は、できるだけ早く全員に報告したほうが、スムーズに体制を整えられます。

なお、施設を利用・入所している要介護者には、改めて報告する必要がない場合もあります。同僚や先輩がよく面倒を見てくれているとか、お腹の調子が目立ってきたとか、自分から言わなくても直接聞いてくることが多いようです。

聞かれたら答えるという形で、ケアマネジャーに報告することは問題ありません。また報告が必要な場合は、上司と相談し、報告するタイミングや内容を考えてから報告するようにしましょう。

妊娠したら介護の仕事はいつまでできる?

妊娠後も仕事を続けたい場合は、そうすることも可能です。医師から仕事を控えるように指示されている方は別として、必ずしも仕事ができない訳ではありません。

妊娠が順調であれば、出産予定日の6週間前の妊娠33週目(9ヵ月後)まで働くことができる場合もあります。とはいえ、産前6週間、産後8週間は原則として働けません。また、産前6週間まで働くと、出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金が支給されます。

出産手当金は、同じ職場で1年以上働いていれば受け取ることができ、妊娠を理由に退職した後でも受け取ることができる場合があります。産休は子どもが1歳になるまで取得でき、2歳まで延長することも可能です。

介護の仕事を妊娠中も続ける場合に気をつけること

妊娠中の介護者が、赤ちゃんを守りながら通常の業務をこなすのは簡単ではありません。中には、想像を絶する大変さに、退職を考える人もいるほどです。妊娠中の介護は、以下の点に注意し、無理のない範囲で仕事をすることが大切です。

気をつけること①妊娠中にできる業務を確認する

妊娠中は身体に負担のかかる仕事は避けるようにしましょう。その代わり、食事の介助やトイレへの誘導など、身体的負担の少ない仕事を担当するようにします。

どうしても移乗や入浴を担当する場合は、車椅子の差し込みや脱衣所での着替えの手伝いなど、安全な仕事をさせてもらえるようにお願いしてください。

また、妊娠により精神的に不安定になっている場合、要介護者の症状によっては、うまく対応できないケースも考えられます。

そのような場合は、我慢せずに上司や同僚に相談し、どのような業務から外すのが適切か組織全体で対応策を検討してもらうようにしましょう。

気をつけること②夜勤は外してもらう

特に夜間に一人で仕事をすることが多い方は、できるだけ早く交代してもらうようにお願いしましょう。急に自分の体調が悪くなる可能性がありますし、もし夜勤中に要介護者が倒れたり、容態が急変したりすると、すぐに対応しなければならず、肉体的・精神的な負担がかかります。

気をつけること③つわりがつらいとき

個人差はありますが、妊娠初期には吐き気や嘔吐などのつわりの症状が出ることがありますので、妊娠中は自分の体調を第一に考えなければいけません。仕事中に気分が悪くなったら、我慢せずに休ませてもらうようにしましょう。

また、空腹時に具合が悪くなったときのために、飴やガムを携帯しておくのもおすすめです。また、つわりがひどい場合も考えて、万が一に備えて会社を休むことも考えておきましょう。

気をつけること④同僚への感謝の気持ちを忘れない

妊娠を報告することで、同僚との関係がギクシャクしてしまうケースもあります。自分ができない仕事が増えるということは、同僚にその分のしわ寄せがいくということです。

そのため、謙虚な姿勢で、業務の変更に対応してもらっていることに感謝を表し、自分にできる範囲でできる限りの仕事をこなすことが大切です。

また、急に迷惑をかけないように、起こりうる問題は早めに伝えておくようにしてください。その際、「ご迷惑をおかけしますが」などの一言を添えることを忘れないようにしましょう。

また、同僚の中には子供がいない人もいるかもしれません。赤ちゃんの自慢話ばかりしていたら、不快な思いをさせてしまうかもしれませんので、妊娠を機に、コミュニケーションのあり方を見直すことも大切です。

気をつけること⑤無理はしない

妊娠中は体が大きく変化するため、以前のように仕事ができないことも想定しておく必要があります。職場のみんなに迷惑をかけたくないからと言って、無理は禁物です。上司や同僚の協力を得て、乗り切るようにしましょう。

また、労働基準法では妊婦が残業や深夜、休日出勤の免除を申し出ることができます。上司に相談し、体に負担をかけないように働きましょう。

また、体調が悪いときは、自宅で惣菜や宅配便を利用して家事の負担を減らすのが良いでしょう。休日は、ストレスがたまらないように体を休め、リフレッシュする時間を取るのも大切です。

気をつけること⑥ストレスをためない

妊娠中に妊婦が過度なストレスを受けると、母体だけでなく胎児にも影響が出ると言われています。人は過度なストレスを受けると血管を収縮させるため、妊婦が常にストレス状態にあると、早産や低体重出産の確率が高くなると言われています。

また、慢性的なストレスにより「コルチゾール」と呼ばれる副腎皮質ホルモンが大量に分泌され、これが胎児に到達して神経系の発達に影響を与えることもあります。そのため、自分に合ったストレス解消法を見つけ、こまめにストレス解消をすることが大切です。

介護の仕事は妊娠何週でどこまでできる?

妊娠すると、体にはさまざまな変化が起こりますので、妊娠のどの段階にいるかによってできる仕事内容が変わったり、仕事そのものが難しくなることもあります。ここでは、各段階での変化と注意点について説明します。

妊娠初期:4~15週間

15週までを第1期と呼びます。この時期は、胎児がまだ小さく、外見上の変化はありません。しかし、体調が急激に変化する時期でもあり、つわりに悩まされる人も少なくありません。

なかには、においに敏感になり、食事やトイレが特に辛くなる人もいます。水やお茶でも吐いてしまうほどつわりがひどい場合は、お医者さんに相談してください。

多くの場合、妊娠20週頃までにはつわりは治まるといわれていますが、妊娠中の症状には個人差がありますので、無理はしない方がよいでしょう。

妊娠中期:16~27週(安定期)

16週から27週までを妊娠中期と呼びます。この時期は安定期で、お腹が徐々に膨らんでくる時期です。腰をかがめたり、しゃがんだりすると、お腹に違和感を覚えるようになるので、注意しましょう。

また、この時期から母体が摂取した栄養が胎児に送られるため、バランスの良い食事を心がける必要があります。

また、妊娠中期はお腹が大きくなってきますので、前屈みになるような作業はなるべく避け、体調の変化に応じて、その都度、勤務先に仕事内容を見直してもらうのが良いでしょう。

妊娠後期:28~40週

妊娠後期には、胎児の体重が急激に増加します。胎児の成長に伴い、お腹も膨らんできますので、なるべくお腹を圧迫しないように注意し、急なしゃがみ込みや無理な姿勢をしないようにしましょう。

また、赤ちゃんがお腹の中で大きくなるにつれてお母さんの内臓に圧力がかかりますので、胸焼けやトイレが近くなるといった症状が出る可能性があります。

横になっていてもお腹が痛くなったり、息苦しくなったりする人もいるので、妊娠後期は無理をしないことが大切です。

介護の仕事で妊娠への理解が得られないときは?

万が一妊娠を報告しても業務内容を変更してもらえない場合は、産婦人科医に相談して母性健康連絡カードや診断書を作成してもらい、職場に提出するようにしてください。提出された事業所は、カードの記載内容に応じて適切な措置を講じなければなりません。

介護の仕事の出産後の働き方

妊娠したら、出産後の働き方についてよく考える必要があります。仕事を続ける、仕事に復帰するなど、働き方を変えたい場合、職場のスタッフの入れ替えや配置転換が必要になることがあります。

スムーズな職場復帰や職場の再編成の準備のためにも、産休に入る前に働き方を決め、上司に伝えておいてください。産後の具体的な働き方は3つあります。

出産後の働き方①時短勤務をする

子どもが小さいうちは短時間勤務を選択する人もいます。職場の時短勤務制度を利用する場合や、フルタイムからパートタイムへの移行を考えている場合は、復職前の早い段階で上司に相談するようにしましょう。

なぜなら、時短勤務にすると必要な人数が揃わず、職場全体の人員配置を変更したり、新たにスタッフを募集したりしなければならなくなる可能性があるからです。

また、時短勤務やパートタイム勤務を選択すると、必然的に収入も減少します。労働時間を短縮する場合は、経済的な状況もよく考慮するようにしましょう。

出産後の働き方②産休・育休を取得する

産休は法律で定められた権利であり、誰でも取得することができます。基本的には産前6週間から産後8週間までOKで、条件を満たせば出産一時金や出産手当金が支給されます。

また、条件はあるものの育児休業も取得できます。育児休業は子どもが1歳6カ月になるまで、さらに延長すれば子どもが2歳になるまで延長が可能です。職場復帰を考えている方は、一度、産休・育休の取得を検討されてはいかがでしょうか。

出産後の働き方③退職や転職をする

一度思い切って退職するのも1つの方法でしょう。介護士は、施設によってはシフトが不規則で、心身ともに負担が大きくなることがあります。保育園のお迎えや休日出勤に対応できるかどうか、同じ職場に戻りたいかどうか、といった点もよく考えてみましょう。

また、働く施設によって仕事内容や雰囲気は異なりますので、自宅から近い場所で働きたい、休日出勤のない施設で働きたいなど、自分のライフスタイルに合わせて転職を検討するのもおすすめです。

妊娠しても介護職を続けていくことは可能!

妊娠中の介護士にとって、これまでと同じ業務を行うことは、身体的負担が大きく危険な場合もあります。職場に自分の体調を相談し、妊娠中でも無理なくできる仕事に変えてもらうようにしましょう。

また、「産後も同じように働けるか」など、ライフプランを考えるのも大切です。妊娠をターニングポイントに、自分の働き方を見直してみてはいかがでしょうか。

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