認知症の進行をできるだけ遅らせ、運動機能を維持・向上させるために、小さなユニットで共同生活を送るのがグループホームです。介護職員は、入居者が可能な限り自立した生活を送れるよう、日常生活をサポートします。ここでは、グループホームの仕事内容やキャリアアップの方法について紹介します。

目次

グループホームとは?

グループホームはその名の通り、認知症の方を対象に介護サービスを提供する施設で、65歳以上の要支援2以上の認知症の方が入居できます。

1ユニットあたりの定員は9名、1施設あたりの定員は2ユニット、つまりどんなに大きなグループホームでも定員は18名です。利用者は全員、グループホームに毎日滞在して生活しています。

介護職員は、生活援助から介護、夜間の見守りまで幅広い業務を行います。有料老人ホームとグループホームは、どちらも認知症の方のための介護施設ですが、利用できる対象者に違いがあることを覚えておきましょう。

有料老人ホームは寝たきりで介護度の高い方が利用できますが、グループホームは共同生活ができる方を対象にしていると言う違いがあります。また、医療的ケアが必要な方を受け入れない施設も少なくありません。

グループホームの仕事内容は?

グループホームでは、入居者と一緒に食事の支度や掃除、洗濯などを行います。入浴や排泄の介助が必要な方にはサポートを行いますが、できる限り自立を促すように心がけます。

就寝時には、夜間見守り業務も行います。日常生活では、入居者が少しでも快適に暮らせるよう、一人ひとりに役割を持たせ、コミュニケーションを大切にしなければいけません。

散歩などの身体機能訓練のほか、介護予防運動や認知症に関する取り組みとして、レクリエーションも積極的に行うホームが多いでしょう。

グループホームの一日のスケジュール

グループホームの一日の流れは次の通りです。

6:00起床の介助、朝食の準備
7:00食事介助
8:00口腔ケア、排泄介助など
9:00部屋の掃除、洗濯、入浴など
11:00昼食の準備
12:00食事介助
14:00レクリエーション、体操など
15:00おやつの準備、食事介助
17:00夕食の準備
18:00食事介助
19:00口腔ケア、就寝の介助など
21:00消灯、夜間の定期巡回、体位変換、排泄介助など(朝まで)

グループホームとは、認知症の進行を防ぎ、入居者の機能を維持する役割を持つ施設です。利用者が自分でできることはできるだけ自分でやってもらうように配慮されています。

仕事内容に日常生活の「サポート」とあるように、基本的には介護福祉士が見守り、できないことを手助けするというスタンスです。

グループホームのシフト体制

グループホームには、管理者、計画担当者、介護職員の配置が義務付けられています。介護職員は、日中は3対1以上、夜間・深夜は1人以上の割合で配置しなければいけません。この基準と各時間帯の実働を考慮してシフトが設定されています。

2交代制では、「日勤」「夜勤」を基準にシフトを編成することが多く、日勤は午前8時から午後5時まで、夜勤は午後4時から午後9時までと言う勤務態勢がよく見られます。シフト制では、「早番」「遅番」「夜勤」を基本にシフトが編成されます。

早番は7時から16時まで、遅番は15時から24時まで、夜勤は23時から8時までのようなパターンが多いでしょう。この時間をベースに、日勤の仕事量が多い時間帯に人員を厚くするようにシフトが調整されます。

グループホームの仕事がきついと言われる点

グループホームの入居者は、認知症と診断された人に限定されます。そのため、それぞれの認知症の症状や行動に合わせたケアを提供する必要があります。

しかし、認知症の状態には波があり、なぜそのような行動をとったのか理解できない場合もあります。いろいろと考え、結論が出せないときに難しさを感じることもあるようです。

また、グループホームを含め、介護業界全体が介護職員不足に陥っています。これは働くグループホームにもよりますが、「休みたいときに休めない」「仕事量が多い」「残業が多い」といった職場環境であれば、難しさを感じるかもしれません。

また、職場の人間関係も難しいことがあります。こちらも働くグループホームによって異なりますが、人間関係で苦労される方も少なくありません。

特に、人手不足で業務量が多い職場では、イライラしてしまう人もいて、人間関係のトラブルが起こりやすいようです。

グループホームで働く上でのやりがい

少人数制のグループホームでは、介護スタッフが入居者に寄り添い、喜びや悲しみに寄り添うことができます。

毎日の家事ができなかった方ができるようになったり、落ち込んでいた方が自分の一言で元気になったりと、何物にも代えがたい喜びがあります。

また、自立した生活ができる方が多いので、散歩や料理、買い物、ガーデニング、おやつ作りなどを一緒にするのもグループホームならではでしょう。

グループホームは地域密着型の施設なので、近隣の施設とのイベント交流も大きな魅力のひとつです。保育園など近隣の施設との合同行事を通じて、利用者が地域の人々との交流を楽しんでいる様子を間近に見ることができるのは、働く者にとってのやりがいです。

認知症介護のポイント

認知症の人が見ている世界を理解すると、介護がしやすくなります。以下に認知症の症状や特徴をまとめましたので、参考にしてください。

認知症介護のポイント①認知症の症状を理解する

まず大切なのは、「覚えていないことは、本人にとって事実ではない」と理解することです。また、認知症の症状は散発的に現れることもあります。

認知症の初期には、認知症の症状と正常な状態とが混在して現れることが多いようです。そうなると本人の不安も強くなり、その言動が周囲を混乱させやすくなります。

理解しておくべき別の点は、認知症の人は「自分に不利なことは絶対に認めない」ということです。これは、認知症の人が自分の能力の低下を認めたくないという、本能的な自己防衛と考えることができます。

さらに、認知症の方の特徴として、「出来事はすぐに忘れてしまうのに、その時に感じた感情はしばらく残る」という点も挙げられます。

不思議に思われるかもしれませんが、このような症状が現れることが多いのです。こうした点を思いに留めて、認知症の方に理解を示すようにしましょう。

認知症介護のポイント②認知症の方との接し方

認知症の方と介護者の信頼関係を築くには、日頃から認知症の方と会話をし、「頼っていいんだよ」ということを伝えておくとよいでしょう。

介護する側も、認知症の方のペースに合わせ、ゆっくり話したり、動いたりするように心がけることが大切です。接し方を少し変えるだけで、認知症の症状が落ち着くケースも少なくありません。

また、認知症は集中力や注意力の低下も招きます。認知症の方にわかりやすく話しかける、集中できる環境を整える、部屋に馴染みのあるものを置くなど、安心感を与えることも必要です。

人はコミュニケーションをとるとき、言葉だけでなく「五感」を使ってさまざまな情報を得て、活用しています。同様に、認知症の方も、相手の言葉を処理する能力の低下を補うために、五感の情報を活用することが多いようです。

少し大きな声を出して話すのも一つの方法ですし、身振り手振りを交えて、大げさ気味に伝えるのも効果的です。また、面と向かって表情豊かに話すことも、メッセージを伝える上で効果的です。

グループホームの介護職に必要な資格要件

認知症ケアに限らず、介護の現場では、入居者一人ひとりを大切にすることが必要です。それでは、グループホームで働くには、どのような資格や経験が必要なのか見ていきましょう。

グループホームで働くメリット

グループホームは、認知症の方が地域密着で共同生活を送る場所です。他の介護施設に比べ、少人数でアットホームな雰囲気のため、時間に追われることなく、ゆったりとした気持ちで介護に取り組むことができます。

また、他の施設に比べて身体介護が必要な入居者が少ないため、身体的負担が少なく、介護の経験が少ない方でもチャレンジしやすい環境です。

さらに、地域の行事への参加やレクリエーションなど、さまざまなイベントがあるので、他の介護施設にはない楽しみがあります。

資格があれば優遇される?!

グループホームで働くには、資格は必要ありません。というのも、施設内の入居者の介護度によっては、生活支援などの身体介護ができない無資格者でもできる仕事がたくさんあるからです。

しかし、資格を持っていればグループホーム内の全ての業務を任せられるので、就職や転職、スキルアップに有利なのは間違いないでしょう。もちろん、資格を保有していたり、介護の経験が長かったりすると、給与は高くなる傾向があります。

グループホームの給料年収や福利厚生

働く上で気になるのはやはりお給料ではないでしょうか?ここでは、グループホームの給与や待遇について解説します。

グループホームの介護職員の給料

一例を挙げると、2009年度のグループホームの平均給与は、正社員26.8万円、パート24万円で、いずれも前年度よりアップしています。

また、調査対象となった895のグループホームのうち、82.5%が「給与を引き上げた」、8.4%が「2008年度の給与水準を維持しているが、1年以内に引き上げる予定」と回答しています。このように、グループホームの給与は年々上昇しており、今後さらに上昇することが予想されます。

働くグループホームによって福利厚生は違う

グループホームは、医療法人、社会福祉法人、民間企業など、さまざまな企業が運営しています。福利厚生は施設によって異なります。

母体が医療法人や社会福祉法人の場合、国から補助金が出るため、福利厚生が手厚い場合があります。一方、民間が保有している施設ではその施設独自の福利厚生がある場合もあります。

民間企業が運営する施設でも福利厚生に差があるケースもあるので、複数の施設を調べて比較するとよいでしょう。転職の際には、給与だけでなく、誰が運営しているかなど、施設の内容も確認するようにしましょう。

グループホームの主な仕事内容は生活のサポート

いかがでしたか?他の施設や病院と比べてグループホームは利用者の上限が低いため、利用者との距離が近く、一人一人としっかり向き合えるのが特徴です。

人とゆったりとコミュニケーションをとるのが好きな方は、グループホームで生き生きと働くことができるでしょう。また、認知症に関する知識を深めたい方にもおすすめです。

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