少子高齢化という社会情勢や、2010年の介護保険制度開始により、介護業界の市場規模は拡大を続けています。そのため、近年、介護業界では年齢や経験を問わず、積極的な人材採用が行われています。今回は、業界からのニーズも高い40代女性の転職について、給与事情やメリット・デメリット、求職者が知っておくべき資格などを紹介します。

目次

40代女性が未経験で介護転職するメリット

人材ニーズが高まる中、年齢や過去の経験に関係なく求職者を受け入れている介護業界ですが、ここでは介護業界で働くメリットを3つご紹介します。それでは1つずつ見ていきましょう。

介護転職のメリット①キャリアップできる

一般的に40代になると、即戦力を重視する傾向が強くなり、転職が成功しにくくなると言われています。しかし、人材需要が高い介護業界では、未経験でも転職を成功させ、その後のキャリアアップを図ることも可能なのです。

未経験・無資格で転職しても、働きながら経験や資格を積めば、介護現場のリーダーや管理職への昇進も期待出来ます。

介護転職のメリット②親の介護などの経験がある

また、親の介護の経験があれば、その経験を活かせるというメリットもあります。現在、親の介護をしている40代女性や、親の介護を経験したことがある方も多いのではないでしょうか。

先ほども説明したように、介護業界は全体的に人手不足なので、40代女性で未経験でも大歓迎の業界です。親の介護の経験があれば、その経験を面接で生かすことができ、施設側も採用したいと思うはずです。

40代の未経験の女性でも、親の介護の経験から介護業界への転職を決意し、活躍されている方はたくさんいらっしゃいます。

介護転職のメリット③転職しやすい

これは介護職だけに限ったことではありませんが、未経験者よりもその業界・職種での実務経験がある人の方が、即戦力として扱われる傾向があるようです。

そのため、最初は未経験でも、介護職として1年以上の実務経験を積めば、即戦力として同業種に転職しやすくなります。将来的に何らかの事情で引っ越しや退職を余儀なくされたとしても、一度経験があれば強いでしょう。

40代女性が未経験で介護転職するデメリット

ただし、デメリットもあります。そのひとつが、身体的な負担です。40代になると、若い頃のように体が動かなくなり、翌朝起きた時に若い頃よりも体全体の疲れを感じることがあります。

これまで専業主婦やデスクワークで生活していた方にとって、介護という肉体労働は負担になることもあります。もちろん個人差はありますが、40代になると急に体に疲れが出てくることが多いようです。

そのため、日頃からマッサージを受けるなどして、体のケアをしておくことが必要です。また、転職する前に、肉体労働による肉体疲労を覚悟しておくとミスマッチを防げるでしょう。

40代女性が未経験で介護転職はおすすめ

とはいえ、実際に40代で転職するのは厳しいのでしょうか。40代女性の就職・転職事情を見てみましょう。

40代女性の転職状況は厳しい?

40代女性の就業率は、全体の約7割と言われています。総務省の調査によると、アラフォー世代である35歳~44歳の女性の就業率は71.8%となっています。

また、厚生労働省の「2015年版 働く女性の実態調査」によると、35歳から44歳の女性で雇用されている人のうち、正社員やスタッフとして働いている人は29.5%にとどまっています。

上記2つの調査から、40代女性の多くが働いているものの、そのほとんどが正社員ではなく、パートや派遣社員であることが分かります。

また、40代女性の5.9%が過去1年以内に転職しているという統計もあります。この数値は、15~24歳の13%、25~34歳の7.9%に次いで3番目に高い数字です。

以上の結果から、35~44歳のアラフォー女性は、20~30代前半の女性に比べて、転職に消極的であることが推測されます。

介護業界の求人状況

介護業界は慢性的な人手不足であり、少子高齢化により今後需要の増加が見込まれることから、フリーターが正社員として就職しやすい環境となっています。

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和3年2月分)」によると、アルバイトを除く全職種の有効求人倍率が1.05倍なのに対し、介護職は3.17倍と非常に高い倍率となっています。

しかも、介護職はフリーター歴が長い方や年齢が気になる方でも正社員になれる可能性があります。フリーターから介護職で正社員になるには、年齢や学歴よりも人柄が重要です。

介護は対人援助の仕事なので、他のスタッフと協調性を持って仕事ができる人、利用者と信頼関係を築ける人が採用されやすいといえます。

40代女性の介護職の給料や年収

転職を考える際、収入面を気にされる方は多いと思います。実際に介護福祉士として働いている人は、どれくらいの収入を得ているのか、統計から見てみましょう。

40代女性の介護職の平均給与

40代女性は、生活費や子どもの学費、将来への備えなど、お金に関するさまざまなことを考える年代なので、転職の際には給与が一番気になるところではないでしょうか。

2020年度「介護職員処遇改善等調査」によると、常勤の介護職員の平均基本給は18万2260円となっています。また、基本給に手当、賞与、その他一時金などを合わせた給与は31万5850円となっています。

この給与額は年々徐々に増加しており、前年度より1万5730円多くなっています。これは、政府が介護職の待遇改善に取り組んでいるためであり、今後もこの給与額は徐々に上がっていくことが予想されます。

40代にのみ注目すると、男性の平均給与は35万7260円、女性は31万5000円で、全体の平均給与と大差はありません。介護職の平均年齢が48.8歳であることを考えると、40代は全体の平均給与が目安になると考えてよいでしょう。

ただし、この平均給与の40代の平均勤続年数は8.1年となっています。そのため、未経験で転職した40代には当てはまりません。

経験年数1~2年の介護職の平均給与は28万3480円です。平均年齢は39歳となっており、未経験の40代が転職する際に参考になりそうです。

職種別40代女性の給与

厚生労働省の調査結果に基づき、40代女性が受け取る給与を職種別に比較すると、「介護報酬請求事務能力認定」の年収は約393万円、ホームヘルパーは約310万円、福祉施設介護士は約342万円という結果が出ています。

上記は勤続年数が長い人も含まれていますが、平均年収は300万円~400万円程度であることがわかります。転職者の場合は勤続年数が少ないので若干水準は下がりますが、手当やボーナスを含めると300万円以上は期待できます。

また、介護職は勤続年数で給与が上がる可能性がある人が多いので、長く働けば働くほど平均的な相場の年収に近づけることができるのです。

勤続年数別40代女性の給与

介護職の平均給与(月給、半年分のボーナス含む)は勤続年数ごとに数千円ずつ上がり、10年勤続すると30万円を超えます。この数字はボーナスなどの一時金を含んでいるので、実際の月給はもう少し下がりますが、それでもキャリアに応じた昇給が期待できます。

経験を積んでいくことで給料が上がっていくのであれば、介護は40代女性にとって好条件・好待遇の転職先と言えるのではないでしょうか。

40代女性が未経験で介護転職に有利な資格【イチオシ】

先にも述べたように、介護士として働く場合の待遇や給与は、持っている資格や取得の難易度によって異なります。ここでは、40代女性の転職に役立つ資格を紹介します。

有利な資格①介護福祉士初任者研修

「介護福祉士初任者研修」は、介護の基本を学ぶことができる資格です。130時間のカリキュラムは、通信講座やスクールに通うことで最短1ヶ月で修了することが可能です。

受講料は5~10万円と高く感じるかもしれませんが、学校のキャンペーンを利用すれば、割引価格で受講することができます。

また、助成金制度やハローワークの職業訓練などを利用すれば、「介護福祉士初任者研修」を無料で取得することができるので、お金がない方でも安心です。

有利な資格②介護福祉士実務者研修

「介護福祉士実務者研修」は、従来のホームヘルパー1級と介護職員基礎研修が1つになった資格です。初任者研修よりも上位の資格で、より実践的な介護の知識と技術を身につけることができる民間資格です。

介護の知識や技術を証明するだけでなく、介護資格の最高峰である介護福祉士につながる資格でもあり、転職後のキャリアアップに有利です。

初任者研修を修了していなくても受験することが可能で、取得すると排泄物の吸引などの医療的ケアができるようになります。

40代女性が未経験で介護転職に有利な資格

上記の資格以外にも、転職に有利になる資格はたくさんあります。「介護業界で長く働きたい」「キャリアアップしたい」という方は、ぜひチェックしてみてください。

有利な資格③同行援護従事者養成研修

「同行援護」とは、障害者自立支援法の改正に伴い、2011年6月に厚生労働省が制定したものです。当該障害者の外出時に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、外出時における移動、排泄、食事の介護その他の必要な援助を効果的に行うことが求められます。

研修には、一般コースと応用コースの2種類があります。一般課程は、障害福祉サービスの伴走型支援サービスを行う訪問介護事業所で働くために必要な課程です。

有利な資格④介護事務

「介護事務」は、介護施設での事務職で、介護保険に関する専門的な知識が必要とされる仕事です。主な仕事は、「介護報酬請求業務(レセプト作成)」というデスクワークです。

介護報酬の請求は、厚生労働省の介護保険制度に基づくものです。介護保険制度は3年ごとに改正されるため、常に新しい情報を把握し事務作業を行う必要があります。

また、介護事務の資格は、スキルアップを目指す介護職の方にもおすすめです。仕事の幅が広がるだけでなく、介護サービス利用者からの介護保険に関する質問にも答えられるようになります。

また、将来的にケアマネージャーやサービス提供責任者を目指す方にとっても、ケアプラン作成に関わる介護保険の知識を身につけることができるため、有効です。

介護事務の知識は、日本全国の介護サービス事業所、福祉施設、医療機関などで応用が可能です。初めて介護業界に携わる方も、介護の現場で仕事の幅を広げたい方も、ぜひ身につけておきたい知識です。

有利な資格⑤福祉用具専門相談員

「福祉用具専門相談員」とは、利用者の心身の状況や希望、環境などを考慮して、福祉用具を選定する人のことです。介護保険法で定められた福祉用具の専門家であり、専門的な知識に基づいた相談に応じ、利用計画を作成します。

介護保険法では、福祉用具貸与・販売事業所ごとに2名以上の福祉用具専門相談員を配置することが厚生労働省の指定基準となっており、福祉用具貸与・販売事業所で働く人には必須の資格と言えます。

そのため、ホームセンターやドラッグストアの福祉用具コーナーなど、福祉用具専門相談員の資格を持つ方が活躍できる場は広がっており、今後、福祉用具専門相談員の資格を求める事業所が増えることが予想されます。

40代女性が未経験で介護転職で失敗しないポイント

ここからは、介護業界への転職で失敗しないために押さえておきたい3つのポイントについて解説します。

求職の注意ポイント①施設形態

転職を控えた40代女性の中には、「近所の施設だから」「たまたま求人を見たから」など、よく考えずに転職をする方がいます。しかし、これは危険です。そこで、後悔のない転職をするために、どのような施設なのかに注目しましょう。

40代女性におすすめしたい施設のタイプは「デイサービス」です。というのも、デイサービスは家事などの日常生活のスキルを大いに活かせる施設だからです。

デイサービスは、毎朝利用者の自宅前まで迎えに行き、入浴や食事、レクリエーションなどを提供し、夕方には自宅まで送り返すという1日限りのサービスです。入浴介助や食事介助など、少ない時間でいかに効率よく仕事をするかが重要なポイントになります。

また、デイサービスでは、介護職員が利用者を楽しませるためにレクリエーションを行うことが多いので、いかに利用者を楽しませるか、どうしたら笑顔になってもらえるか、という生活の知恵が試されるところです。

特別養護老人ホームに比べ、介護度が低い利用者が多いので、未経験でも安心して始められる職場です。

求職の注意ポイント②職場見学

多くの介護施設や事業所では、入所希望者や研修生を対象に施設見学を行っています。見学に行けば、「アットホーム」「落ち着いた職場環境」「働きやすい環境」といった仕事内容が本当なのか、自分の目で確かめることができます。

求人票やインターネット上の情報を鵜呑みにしないで、自分の目で職場を見て選択し、40代からの介護職への転職を後悔のないものにしましょう。

求職の注意ポイント③自分に合った雇用形態

結論としては、安定性を重視し、同じ職場で安定して働きたいのであれば、正社員がおすすめです。一方、自分で決めた自由な時間で、様々なタイプの施設で働きたい場合は、派遣社員がおすすめです。

正社員と派遣社員の違いは、雇う側の違いにあります。正社員は施設に雇用されますが、派遣介護士は派遣会社に雇用されます。

また、正社員は同じ施設に長期間雇用されますが、派遣介護士は3ヶ月や6ヶ月の契約期間で雇用され、短期間働くことになります。そのため、同じ施設で長く働きたいのであれば、正社員を選ぶのが良いでしょう。

40代女性が未経験でも介護転職を成功させよう!

いかがでしたか?40代女性は人材としての需要が高いため、将来の資格取得やキャリアアップを視野に入れ、未経験でも転職を成功させることは可能です。多くの介護施設や事業所では、転職後も仕事を続けながら資格を取得することで、着実に給与や待遇を向上させることもできます。

しかし、低賃金・長時間労働の悪質な介護施設・事業所があることも、残念ながら事実です。40代の転職を成功させるためには、業界や職種を理解し、それなりの覚悟を持って臨むことが大切です。

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