介護職の資格として、転職の際などにも有利になる社会福祉士。取得すれば介護業界で活躍できるのに対して、その試験の合格率は低いと言われていますが、実際はどうなのでしょうか?本記事では、社会福祉士試験の合格率が低いと言われる理由、難易度などについて解説します。

目次

社会福祉士とは

社会福祉士というのは、主に「相談」を受け付ける仕事になります。身体的、あるいは精神的な障害を持っている方、環境上の理由から日常生活を送るのが難しい状態の殻の相談に乗り、解決に尽力します。

社会福祉士というのは、高齢者福祉や障碍者支援などに留まらず。保険や医療、生活保護、児童福祉などといった福祉関連の全ての相談を受け付けますから、当然ながら幅広い知識を要します。

そうした相談というのは一人一人異なりますから、それぞれ適した福祉サービス、および公的支援制度を提案します。そして、行政や医療機関との橋渡しをするのも、社会福祉士の仕事なのです。

社会福祉士の合格率は?合格率が低い理由

社会福祉士の仕事内容について、簡単にではありますが解説しました。様々な問題を抱えている方の解決を行う大切な職業ですが、ではなぜそんな社会福祉士の試験の合格率が低いと言われているのでしょうか?

社会福祉士の合格率

2021年に行われた第33回の社会福祉士国家試験においては、合格率は29.3%となっています。人数としては、受験者総数35,287人のうち合格者が10,333人でした。前年の第32回も合格率が29.3%でしたので、大方全体の約3割が合格するという形になります。

他の福祉関連の資格の合格率と比較してみると、2020年の精神保健福祉士の合格率が62.1%、介護福祉士の合格率は71%ですから、比較してみると社会福祉士の合格率が低いという事が分かるでしょう。

年齢別にみる合格率

続いて、年齢別で合格率を見てみましょう。こちらは30歳未満の方が47.6%、31歳から40歳までの方の合格率が17.5%、41歳から50歳までの方は20.8%、51歳から60歳までが11.3%、そして61歳以上が2.8%でした。

年齢ごとで見てみると、30歳未満の方が合格者の半数近くを占めており、それ以降はやや減少傾向が見られ、また41歳から50歳で増加しているという流れがある事が分かります。

合格率が低い理由①出題範囲が広い

この様な合格率になっている理由の1つとして、まず試験の出題範囲が広い事が挙げられます。基本的に社会福祉士の国家試験は、出題範囲が広くされています。これが最も合格率を低くしている原因であるとも言われています。

ワークブックなどを開くだけでも非常に多くの情報量があり、圧倒されてしまう方も居るでしょう。実際の試験の出題科目が全18科目あり、これは福祉関連の資格でも最多の科目数となっています。

この出題範囲の広さの中ですべて高得点を狙う必要がありますから、これだけでも如何に社会福祉試験の内容が大変であるかもわかる事でしょう。トータルで合格するためには、苦手科目を如何に克服して全般で点数を確保するのが対策となります。

合格率が低い理由②受験者の知識が不十分

2つ目は、受験者の知識が十分でない事です。実際に社会福祉士に合格しており、ソーシャルワーカーとしての長年の経験を持たれている方も、合格率の低さの理由の1つに挙げています。

これはつまり、試験で出る問題の難易度の高さだけが理由なのではなく、本当に社会福祉士試験を合格しようという気位が低いという事です。確かに、なんとしてでも合格したければ、対策もそれ相応に行う事でしょう。

ですが、社会福祉士に限らず試験というのは毎年行われるものです。その為「落ちてもまた次がある」「また受験すればいい」といった考えで受けていると、対策の内容も薄くなるので合格しにくくなるのも必然と言えます。

合格率が低い理由③科目合格制度がない

3つ目は、科目合格制度が存在しない事です。科目合格制度というのは、科目ごとで合格の認定が下る制度の事であり、一度試験を受けて科目に合格すれば、たとえその試験で落ちても次の試験の時には免除扱いになるので、他の科目に時間と対策を割けます。

この制度は、保育士などといったほかの国家資格試験では導入されているものなのですが、社会福祉士試験では導入されていません。つまり、科目で合格し試験に落ちた場合には、また次の試験でも全科目を受ける必要があるという事です。

ただでさえ出題範囲が広く、科目も20近くあり、その上で後述するように問題そのものも難しい中、科目合格制度が無いというのは非常に厳しい話と言えるでしょう。

0点の科目があると不合格

何度か述べているように、社会福祉士の試験では合計で18の科目があります。そして、そのすべてで得点をしっかり取らなければならないのですが、多ければ多い分1つ1つの勉強もおろそかになりがちです。

そして、実際の試験では1つでも科目に0点のものがあると、即刻不合格扱いになってしまいます。すなわち、全体で合格の点数に達していても、1つでも科目で0点があった場合には試験に合格できないのです。

実際、この0点科目があったせいで不合格になってしまったという方は過去に想定以上に多くおり、即不合格という仕組みも試験を難題化させている原因の1つと考えられます。

合格率が低い理由④問題が難しい

そして、問題そのものの難易度もあります。一応国家資格ではあるものの、試験の難易度としては普通であるという側面が多かったのですが、年々試験内容が難しくなっている傾向があるのです。

難易度は急激に難しくなった、というようなものではないので、実際今も難易度は普通扱いなのかもしれませんが、今後もさらに難易度が高くなる可能性はあるとされています。

内容をもっと探っていくと、暗記で解ける問題が減っていて、その場で考えて正解を出すタイプの問題が増えていると言われており、過去問題を反復するだけでは対応できなくなっているのも事実の様です。

合格率が低い理由⑤モチベーションを維持するのが大変

そして、モチベーションの維持が大変なことも理由に挙げられます。長期間の勉強時間を要する試験にはどれにも言える事ですが、社会福祉関係の勉強というのは、正直内容はつまらないと言われています。

例えば、福祉の歴史、学説や見解などを問われる問題、現場における必要性を感じない問題が多い印象を受け、そしてどれだけ勉強をしても終わりが見えないのではないか、という気持ちになってしまいます。

問題の内容に関しては暗記が苦手な方にとっては特に気力を削がれますし、科目割り増しの為のような内容もあったりしますし、加えて勉強も300時間を確保しなければならないとされているので、働きつつの勉強となるとかなり難しいのです。

ケアマネの難易度と違う?

福祉関連で難易度の高い試験と言えば、ケアマネージャーが挙げられます。ケアマネージャーというのは現場の介護福祉士などをまとめるリーダー的な立ち位置になりますから、トップクラスの扱いになります。

その合格率としては、社会福祉士が2,30%であったのに対して、ケアマネージャーの合格率は10%から20%ほどとされています。数値だけ見れば、ケアマネージャーの方が難しいと思われるでしょう。

しかし、無資格の状態から介護福祉士の資格を取れば受験が可能なケアマネージャーと、受験資格そのものが難しい社会福祉士とを合格率だけで比べるのは難しいのです。

社会福祉士試験の合格ライン

合格の難易度やなぜ受かりにくいのかが分かったところで、ではどれだけやれば合格ラインに到達できるのかが気になるところでしょう。実際には、合格のためには2つの条件が設けられています。

  1. 総得点150点に対して、90点以上の得点がある事
  2. 18の試験科目群の全てにおいて得点がある事

社会福祉試験の問題は、5つの選択肢が提示されるのでその中から自分で正解を選ぶという形と、複数を選択する多肢選択方式が組み合わさっています。問題数が150ある中、1問1点の配点となります。

その為、合格ラインとしては150問中の90問ですから、60%以上となります。2つ目の全ての科目軍で得点があるというのは、全て1点以上の点が必要であるという事であり、合格率の低い原因の中にあった0点科目があると不合格というのはここに関係しています。

只、もしも精神保健福祉士の資格を取得している場合、共通科目の免除を受ける事が出来ます。この場合には「総得点67点に対し40点以上」「免除分を除いた7科目すべてで得点がある事」が合格条件となります。

社会福祉士試験の過去の合格ラインは?

ここで、過去に開催された社会福祉士試験の合格ラインを見てみましょう。2022年の2月に実施された第34回の試験では、合格基準点が105点で正答率としては70%、基準となる60%の正答率の90点に対して、実に15点もの差があったのです。

実施時期合格基準点
第34回(2020年2月6日)105点/150点(正答率70%)
第33回(2021年2月7日)93点/150点(正答率62%)
第32回(2020年2月2日)88点/150点(正答率58.6%)
第31回(2019年2月3日)89点/150点(正答率59.3%)
第30回(2018年2月4日)99点/150点(正答率66%)
第29回(2017年1月29日)86点/150点(正答率57.3%)

34回に加えて、過去5年分の合格基準を見てみましょう。難易度によって正答率はプラス何点、マイナス何点という推移はあったものの、それでも100点を超えるような回は今までありませんでした。

社会福祉士試験合格のための勉強方法

社会福祉試験の難しさや合格率といった現状が分かったところで、ではどうすればしっかり合格が出来るのかというのが一番大切な所になります。もし本当に資格を取得したいと思っているのなら、是非とも頭に入れておきましょう。

勉強方法①300時間の勉強時間を確保

まず、勉強時間を300時間分確保しましょう。社会福祉士の試験は、合格するための必要な勉強時間として300時間は要ると言われています。仮に1日2時間の勉強を毎日すると、約5か月間が必要であり、同じ条件で週5日だと7か月半必要です。

また、1日1時間ずつ毎日勉強をするという方法だった場合には、約10か月が必要という計算になります。どんな流れでも、より集中して勉強ができる体勢ならば、もっと短い期間で済むでしょう。

しかし、学校に行きながら出会ったり、仕事をしながらとなると、どうしても勉強時間を長く確保し続けるのは難しいでしょうから、上述した期間が必要である事は覚えておいた方が良いと思われます。

勉強方法②半年前に勉強を開始しよう

2つ目は、少なくとも半年前には勉強をスタートする事です。社会福祉士の試験は、ケアマネージャーなどと同じく1年の内に1回しか実施されません。そこで合格するためには、如何に計画的に勉強をするかがやはり大切になります。

上記の300時間分の勉強時間を確保する計算でも、最低5か月は必要とされています。その中で社会人が勉強をする事を考えると、勉強をスタートするのは試験の半年ほど前が一番良いとされます。

短いと思われるかもしれませんが、逆に勉強にかける時間が長すぎると集中力も欠け、モチベーションが維持しづらいのです。その為、半年という期間を設け、その中で効率的な勉強をするのが最も推奨されます。

勉強方法③とにかく過去問を解く

とにかく過去問題を解くことも、やはり対策になります。これも社会福祉士の試験に限った話ではないですが、実際に試験として出題された問題を解くというのは、本番に対応可能な状態を整えるためにも必要不可欠と言えます。

一度でも出題された問題である以上は、本番で出る問題の傾向というのも解き続ける事によってある程度分かってきます。この過去問題を解くアウトプットを、試験を受ける2,3か月前あたりに実践してみましょう。

過去問題を多く解くのももちろん大切ですが、出来るならば模擬試験を受ける事もお勧めします。試験の時間も決められており、本番さながらの雰囲気を掴めるからです。

勉強方法④独学が難しい場合はスクールに通うのもおすすめ

もしも独学で勉強を続けるのが難しそうだ、自分には合っていないと思うのならば、スクールに通うのも手段の1つです。独学はコストを最大限削減できるメリットがあるものの、自分一人で勉強しなければならないのでモチベーション維持が難しいのです。

その点、スクールであれば周りにいる仲間と一緒に勉強が出来ますし、最近では動画で講義を受けるといった方法もありますので、どこかに出向いたりする事無く在宅のままでより質の高い勉強が可能です。

社会福祉士試験合格のコツは勉強時間の確保とモチベーションを維持が大切!

社会福祉試験合格を目指すのならば、十分な勉強時間、および合格するぞというモチベーションの維持が非常に大切です。是非とも自分に合った勉強法を実践して、合格に向け頑張りましょう。

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