新型コロナウイルスの影響で転職市場が縮小している今、「介護業界なら未経験でも転職しやすいのでは」と考える方が増えています。たしかに、介護業界は未経験者が採用されることが多い業界です。しかし、だからといって必ずしも転職先で成功するとは限りません。今回は、未経験から介護業界への転職を成功させ、転職先とのミスマッチを防ぎ、長く働き続けるために、事前に知っておきたいポイントをご紹介します。

目次

求人における介護業界の現状

2000年に介護保険制度がスタートして以来、介護業界の規模は年々拡大傾向にあります。厚生労働省のデータによると、2000年に3.6円だった介護保険の総額は、2018年には11.1兆円と3倍以上になりました。

今後も高齢者の数は増え続け、介護業界の規模はさらに拡大することが予想されます。そのため、介護職の需要は年々高まっており、政府は多様な介護人材の確保・定着のためにさまざまな施策を実施しています。

働く意欲を維持するために、資格を取得することでステップアップできる「キャリアパス」(出世コース)を設定したり、介護職の待遇改善策を実施したりしています。

また、介護事業所においても、より長く働いてもらうために、労働環境の改善や給与の見直しなど、独自の取り組みを行うところが増えているようです。

今後も、介護サービスの質を確保しつつ、介護従事者が長く快適に働けるよう、職場環境の改善に向けた取り組みが期待されます。

介護業界の有効求人倍率は高い

介護業界は有効求人倍率が高く、買い手市場とも言えます。例えば、2020年9月の介護業界の有効求人倍率は5.98倍、有効求人倍率は3.82倍となっています。つまり、有効求人倍率が1倍を超えているので、売り手市場であることがわかります。

売り手市場とは、有効求人倍率が高く、企業の求人数が働きたい人の数を上回っている状態を指します。つまり、介護業界は人手不足であり、転職や就職がしやすい状況であると言えます。

未経験の介護職の給料相場

介護の経験がなく、資格もない場合、基本給を上げることはできないので、給料は低い水準からスタートすることになるでしょう。

逆に言えば、未経験でも初任者研修などの資格を取得していれば、未経験や資格を持っていない人よりも基本給は高くなり、資格手当がつくこともあります。

そのため、より良い給与を得たいのであれば、資格取得を強くおすすめします。資格を取得すれば、たとえ1年だけ働いたとしても、無資格で働くのとは給料が大きく違ってきます。

厚生労働省のデータによると、月給を年俸に換算すると、その差は1ヶ月分以上(5年勤務した場合)にもなります。そうなると、初任者研修の取得費用は2万円から7万円程度なので、すぐに元が取れるでしょう。

介護職の仕事内容

一般的に、介護の現場で働く人のことを「介護士」「介護福祉士」と呼びます。「介護士」「介護福祉士」は職種を指す言葉であり、具体的な資格ではありません。介護士(介護福祉士)の仕事は、大きく分けて「身体介護」「生活援助」「その他の支援」に分けられます。

介護職の仕事内容①身体介護

まず「身体介護」とは、利用者の身体に直接触れ、身の回りのお世話をすることです。具体的には、「入浴介護(浴槽で髪や体を洗う)」、「排泄介護(トイレの介助やオムツの交換)」が含まれます。

また、ベッドから車椅子、車椅子からトイレへの移動等を含む「移乗介護」、「食事介護」、「着替え介護」などの作業も担当しています。

介護職の仕事内容②生活援助

生活援助とは、主に掃除、洗濯、食事の準備、買い物など、日常生活を送る上で必要な援助を指しています。こうしたサービスは「日常生活援助」と呼ばれています。

介護職の仕事内容③その他の支援

また、リハビリや余暇活動のためのレクリエーションの提供、精神的なケアなども介護の仕事となります。介護保険の範囲内で行える支援と、完全に利用者の自己負担で行う支援があり、提供されるサービスは施設によって異なる点も覚えておきましょう。

介護職で働く職場

職場にある介護施設には、さまざまな種類があります。一体どのような介護施設の形態があるのか、確認してみましょう。

介護職の職場①訪問介護

訪問介護事業所は、在宅で生活している高齢者や障害者の自宅を訪問し、介護サービスを提供する事業所です。訪問介護事業所の介護職員は、利用者の自宅を訪問して身体介護や生活援助を行います。

訪問介護員になるには、最低でも介護職員初任者研修の受講が必要です。未経験でも資格を持っていれば、訪問介護員として働くことができます。

介護職の職場②デイサービス

デイサービス(通所介護)とは、利用者が要介護状態となった場合においても、可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、生活機能の維持又は向上を図ることを目的としたサービスです。

利用することで社会的孤立感の解消、心身機能の維持、利用者の家族の身体的・精神的負担の軽減を図る目的もあります。

デイサービスは、介護を必要とする高齢者がデイケアセンターに通い、入浴、排泄、食事などの介護や機能訓練を日常的に受けることができます。基本的には、自宅から施設までの送迎も施設職員が行うことが多いでしょう。

介護職の職場③グループホーム

民間企業やNPO法人が運営する高齢者施設のうち、グループホームは介護が必要で認知症と診断された方に特化した施設です。グループホームでは、入居者一人ひとりの症状に合わせて認知症の進行を遅らせることを目的に、要介護者の共同生活を支援します。

グループホームでは、介護福祉士が食事、入浴、排泄などの身体介護、バイタルサインのチェック、調理、洗濯、掃除、買い物、レクリエーションなどの生活援助を行います。

介護職の職場④老人ホーム

特別養護老人ホームは、主に要介護3以上の高齢者を対象とした施設です。要介護3以上の方とは、自力での移動や排泄が困難で、自宅での生活が困難な方です。寝たきりの方も多く、介護職員には身体介護が多く求められます。

有料老人ホームは、主に民間企業が運営し、さまざまなサービスを提供している場合が多いです。介護度にも差があり、特別養護老人ホームや介護老人保健施設よりもサービスの質にこだわる施設が多い傾向にあります。

介護スタッフの仕事内容は、施設の提供するサービスによって異なる場合があります。質が求められることが多いため、無資格・未経験の介護職員は採用しない施設もあります。

介護職の職場⑤介護老人保健施設

介護老人保健施設は、主に社会福祉法人や地方自治体が運営しています。特別養護老人ホームが要介護度3以上の人を対象としているのに対し、介護老人保健施設は要介護度1~5までの幅広い人を対象としています。

病気などで入院し、介護が必要な方にリハビリテーションや医療を提供し、退院後に家庭生活に戻れるようにします。特別養護老人ホームと同様に、老人ホームの介護職員が着替えや食事、入浴介助などの身体介護を行います。

また、自立度の高い入居者には、医師と相談しながら、外出や外泊などの行動範囲を精査することもあります。

40代・50代未経験が介護業界に転職する強み

40代、50代の求職者が最も求めているのは「人間性」であり、求職者としてもアピールすべき部分です。介護はチームプレーですから、周囲との協調性や円滑なコミュニケーションが取れるかどうかが非常に重要です。

40代、50代まで介護以外の業界で働いていた方にとって、経営やマネジメントの経験があることは重要なポイントです。中には、管理職や事務職を経験されている方もいらっしゃいます。

面接では、「実際に自分の指導で若手を育成した」など、成果や実績の具体例を示せるとよいでしょう。そうした指導力・教育力は、大きな強みになります。

例えば、前職で管理職の経験がある場合、何人の部下を持ち、どのような年齢層の人たちとどのような仕事をしてきたのかなど、介護の現場につながるエピソードがあれば、大きなアピールポイントになるでしょう。

40代・50代未経験で介護職へ転職のポイント

40代、50代以上の人が転職する場合、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?転職に当たって覚えておくべきポイントをご紹介します。

介護未経験の転職①資格を取っておく

もちろんこの年代で活躍している人は多く、就職の扉は開かれていますが、40代以下よりも転職の難易度が高いのは事実です。そのため、応募できる求人を増やし、採用される確率を上げるためにも、資格の取得をおすすめします。資格もない、経験もないでは、ハードルが上がるのは当然といえます。

介護未経験の転職②仕事内容はしっかりと聞いて把握する

職場によって多少業務内容は異なりますが、未経験・無資格の場合、任される業務が介護福祉士の有資格者と異なる場合があります。

基本的には補助的な業務が多くなりますが、未経験者がどの程度の仕事を任されるのか、事前に仕事内容を確認しておくことが大切です。

自分ができる仕事なのか、職場でスキルアップできるのかなど、自分の将来像が描ける職場で働くことをおすすめします。

介護未経験の転職③健康管理をする

介護は体力勝負の仕事なので、40代後半、50代、60代で転職を希望する場合、健康面を気にする施設も多いようです。

腰痛に悩む介護職員は多く、日々のメンテナンスなど健康に気をつけながら働いている人がほとんどです。そのため、体の使い方やメンテナンスをしっかり学んでおくようにおすすめします。

介護未経験の転職④職場環境をチェックする

未経験の方は、職場見学ができる求人に応募したり、面接官に職場見学が可能かどうか聞いてみましょう。そうすることで、スタッフや利用者、施設の雰囲気などを知ることができ、入職後のミスマッチを減らすことができます。

介護職は未経験でも求人が多い業種なので挑戦してみては?

いかがでしたか?未経験で介護業界で働く場合、介護の職場でどのように活躍したいか、どのようにキャリアアップしたいかなど、まずは目標を持つことがより良い転職に繋がります。

とはいえ、未経験で介護業界で働く場合、まずは初任者研修の資格を取得することをおすすめします。給与のベースが上がりますし、介護職の仕事を理解することで自信を持ってスタートすることができます。

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