高齢者にとって、必要な栄養素を補うだけではなく、生活を豊かにする欠かすことのできない毎日の「食事」。

残念ながら、加齢や疾患により、嚙む力(咬合力)や飲み込む力(嚥下力)は衰えてくるため、どんなにおいしい料理でも、〝食べる〟という行為そのものを億劫に感じてしまう方も多いのではないでしょうか。だからと言って、高齢者の「食事」は、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性も高いため、〝食べる〟行為を無理強いするのもあまりおすすめはできません。

そこで、今回は、栄養不足を補いながらも、嚙む力(咬合力)や飲み込む力(嚥下力)が衰えてきた方が安全においしく食事ができるよう調理方法が工夫された、「レトルト介護食」についてご紹介させていただきます。

目次

介護食だけでなく 日常の食事でも使えるユニバーサルデザインフードとは

加齢や疾患などによる筋力の低下や口腔機能の低下などにより、嚙む力(咬合力)や飲み込む力(嚥下力)が衰えてくると、食事をすることが難しくなります。そのため、栄養不足を招くだけでなく、むせやすくなったり、誤嚥性肺炎を引き起こす原因となったりすることがあります。

このように、何らかの理由で嚙む力(咬合力)や飲み込む力(嚥下力)が衰えた高齢者が、おいしく・楽しく、そして安全に食事をすることができるように、やわらかさや形状等を工夫した食事を「介護食」といいます。

近頃は、介護食としてだけでなく、食事をする方の年齢や障害の有無にかかわらず、日常的な食事としてなど幅広く使うことができる、食べやすさに配慮された「ユニバーサルデザインフード」が主流となってきています。「ユニバーサルデザインフード」には、レトルト食品や冷凍食品などの「調理加工食品」や、飲み物や食べ物(料理)にとろみをつける「とろみ調整食品」などがあり、パッケージには必ずユニバーサルデザインフードの証である専用のマークが記載されています。

このマークは、「日本介護食品協議会」が制定した規格に適合する商品のみに使用されているものです。

「日本介護食品協議会」は、介護食品が出回り始めたばかりの頃、メーカーによって規格や教示方法が異なっていたことから、介護食品の安全・衛生はもちろん、機能性などについても規格基準が必要だと考え、「介護食におけるGMP(適正製造基準)ガイドライン」策定を目的に「介護食のGMPガイドライン策定打合会」を開催したことがきっかけで、平成14年4月に誕生・発足しました。

ユニバーサルデザインフードのマークには、ロゴマークと一緒に区分数値と区分形状が表示されており、本人の嚙む力(咬合力)や飲み込む力(嚥下力)に合わせて食品を選べるようになっています。

ユニバーサルデザインフードの区分
区分(区分数値と区分形状) 区分1:容易に嚙める 区分2:歯ぐきでつぶせる 区分3:舌でつぶせる 区分4:かまなくてよい
かむ力の目安 かたいものや大きいものはやや食べづらい かたいものや大きいものは食べづらい 細かくてやわらかければ食べられる 細かくてやわらかければ食べられる
飲み込む力の目安 普通に飲み込める ものによっては飲み込みづらいことがある 水やお茶が飲み込みづらいことがある 水やお茶が飲み込みづらい
参考:日本介護食品協議会

上記の4つの区分は、食材の「かたさ」や「粘度」の規格によって分類されています。区分数値が低くなるほど一般的な食事に近くなり、高くなるほどやわらかく、食べやすくなっているため、この区分を目安に、食品を選ぶことができます。

ただし、嚙む力(咬合力)や飲み込む力(嚥下力)に何か障害がある場合やその疑いがある場合は、自己判断ではなく、かかりつけ医や専門家に必ず相談してから決めるようにしましょう。

介護食の種類

嚙む力(咬合力)や飲み込む力(嚥下力)が低下してきた方でも食べやすいように工夫されている「介護食」は、基本的に4つの種類があります。「介護食」は、本人の食べる能力に合わせて調理を行わなければなりません。
介護食の種類は以下の通りです。

きざみ食

その名の通り、食材を細かく刻んでいる食事です。飲み込む力(嚥下力)はあるが噛む力(咬合力)が弱いという方に適しています。ただし、きざみ食は、口の中でまとまりにくいため、飲み込む力(嚥下力)が弱っている方だと、むせや喉のつまり、誤嚥を引き起こしやすく、本人の状態によっては避けた方が良い場合もあります。

適度にとろみをつけ、飲み込みやすくする方法もありますが、本来、きざみ食は、噛む機能を手助けする形態であるため、飲み込む力や唾液や少ない方など向けの嚥下食としてはあまり適してはいません。

ソフト食

食材を歯茎や舌で簡単につぶせる程度にやわらかくした食事です。鍋でじっくり煮込んだり、野菜の繊維を断つように切ったりと、さまざまな方法で調理していきます。

また、食材をミキサーにかけペースト状にし、型に入れて固めたムース食などもソフト食に含まれます。噛む力(咬合力)・飲み込む力(嚥下力)ともに衰えてきた方に適している食事です。

ミキサー食

出汁などを食材に加えて、ミキサーでポタージュ状にしたものです。噛む力や飲み込む力がほとんどなくなってしまった方に適しています。

ただし、ミキサー食は、固形物がない分、喉の奥まで流れていきやすいため、むせや誤嚥が起きやすいと言われています。また、水分を多く含んでいることから、人によっては十分な栄養が取れないまま満腹になってしまう可能性もあります。ポタージュ状の見た目は、ドロッとしていて、あまり美味しそうなイメージを持ちづらい為、適度にとろみを付けたり、盛り付けを工夫したりする必要があります。

ゼリー食

通常の食事、あるいはソフト食を、ミキサーにかけて滑らかなペースト状にしてから、ゼラチンや寒天などを加え、やわらかめのゼリーにしたものです。噛む力が低下している方はもちろん、特に、嚥下機能障害が重度の方に適している食事です。

おすすめのレトルト介護食8選

おすすめ① キユーピー やさしい献立 なめらかおかず 鶏肉と野菜

引用:amazon
価格 162円
内容量 75g
区分 区分4 かまなくてよい
原材料 鶏肉(国産)、ソテーオニオン、野菜(じゃがいも、セロリ)、植物油脂、大豆、チキンエキスパウダー、食塩、香辛料/増粘剤(加工でん粉、キサンタンガム)、調味料(アミノ酸等)、卵殻カルシウム、(一部に卵・大豆・鶏肉を含む)

鶏肉、セロリをソテーし、炒め玉ねぎとじゃがいも、大豆と一緒に裏ごしした、なめらかな食感のペースト食です。一度に数種類の素材を摂取することができます。そのまま食べるのはもちろん、アレンジもしやすく、量があまり食べられない方でも、タンパク質やカルシウムをしっかり摂取することができます。

おすすめ② キユーピー やさしい献立 やわらかおかず うなたま

引用:amazon
価格 216円
内容量 80g
区分 区分3 舌でつぶせる
原材料 鶏卵、うなぎかば焼、しょうゆ、かつお節エキス(かつお節エキス、還元でん粉分解物、食塩、こんぶエキス、酵母エキス)、米発酵調味料、砂糖、長ねぎ、しいたけ、植物油脂、こんぶエキス、酵母エキスパウダー/増粘剤(加工でん粉、キサンタンガム)、調味料(アミノ酸)、(一部に卵・小麦・大豆を含む)

食べやすい大きさに切ったうなぎの蒲焼をかつおだしで煮込み、かきたまでふんわり仕上げています。うなぎの蒲焼は炭火焼のような香ばしさがあり、おかずはもちろん、お粥や豆腐の上にかけてみるなど、あんかけとしても使うことができます。

おすすめ③ キユーピー やさしい献立 おじや 牛すき焼き

引用:amazon
価格 195円
内容量 160g
区分 区分2 歯ぐきでつぶせる
原材料 米(国産)、たまねぎ、鶏卵、牛肉、豆腐、しいたけ、しょうゆ、植物油脂、米発酵調味料、砂糖、ポークエキス、コラーゲンペプチド、食塩/増粘剤(加工でん粉、ペクチン)、卵殻カルシウム、調味料(アミノ酸等)、豆腐用凝固剤、(一部に卵・乳成分・小麦・牛肉・大豆・豚肉・ゼラチンを含む)

牛肉、玉ねぎ、豆腐が入った、玉子とじのすき焼き風おじやです。少々歯ごたえはあるものの、歯茎でつぶせる程度のやわらかさです。味も比較的しっかりめで、材料に牛肉が入っているため、満足感も得やすいと思います。

おすすめ④ エバースマイル 肉じゃが風ムース

引用:amazon
価格 380円
内容量 115g
区分 区分3 舌でつぶせる
原材料 野菜ピューレー(たまねぎ、じゃがいも、にんじん)、牛肉、凍結卵白、澱粉分解物、植物油脂、しょうゆ、砂糖、発酵調味料、にんじんエキス、乳たん白、でん粉、ビーフオイル、香味油、昆布エキス、酵母エキスパウダー、食塩、かつおエキス調味料、ビーフエキス調味料/トレハロース、増粘多糖類、酸化防止剤(ビタミンC)、(一部に小麦・卵・乳成分・牛肉・大豆・豚肉を含む)

牛肉、じゃがいも、玉ねぎ、人参のムースと、とろみのある和風だしで仕上げた肉じゃが風ムースです。ムースをあんに絡めながらつぶすことで、食感をよりやわらかくすることができます。保存料は使用しておらず、素材の風味を楽しめます。
また、皿に移す必要がなく、カップごと電子レンジで温めることができます。

おすすめ⑤ アサヒ バランス献立 京風がんもの含め煮

引用:amazon
価格 194円
内容量 100g
区分 区分1 容易にかめる
原材料 がんもどき(粉末状大豆たんぱく、植物油脂、にんじん、その他(小麦・ごまを含む))、野菜(にんじん、ごぼう)、砂糖、しょうゆ、かつお昆布だし、植物油脂、しょうがペースト、昆布エキス、こんぶ/調味料(アミノ酸等)、増粘剤(キサンタン)、pH調整剤

京風のだしがしみ込んだ大きめのがんもと野菜が入っており、食べ応えがあります。バランス献立シリーズでは、使われている食材が、赤・黄・緑に色分けされパッケージに記載してあるため、栄養バランスが整った献立が立てやすくなっています。

おすすめ⑥ マルハニチロ メディケア食品 もっとエネルギー ちゃんぽん

引用:amazon
価格 250円
内容量 120g
区分 区分2 歯ぐきでつぶせる
原材料 野菜(にんじん、キャベツ、たまねぎ)、中華めん、粉末油脂(中鎖脂肪酸油、デキストリン)、豚肉、ポークエキス調味料、かまぼこ、でん粉分解物、しょうゆ、ラード、食塩、たん白加水分解物、エキス(ほたて、にんにく)、砂糖、ゼラチン、香辛料、かきエキス調味料/増粘剤(加工でん粉、キサンタン)、調味料(アミノ酸等)、香料、加工でん粉、かんすい、炭酸Ca、ソルビット、着色料(コチニール、カロチノイド)、乳酸Ca、(一部に小麦・卵・大豆・豚肉・ゼラチンを含む)

キャベツ、にんじん、たまねぎ等の野菜が入っており、魚介だしの旨みがきいたちゃんぽんです。MCT(中鎖脂肪酸油)配合により、少量で高エネルギーが摂取できます。
※摂食嚥下障害のある方は、あらかじめ医師などに相談するようにしましょう。

おすすめ⑦ ハウス食品 やさしくラクケア やわらか肉の親子煮

引用:amazon
価格 190円
内容量 100g
区分 区分2 歯茎でつぶせる
原材料 玉ねぎ、卵白、鶏肉、デキストリン、パーム油、加糖卵黄、しょう油、かつおぶしエキス、卵加工品、砂糖、チキンブイヨン、でんぷん、こんぶだし、かつおぶし粉末、酵母エキス、増粘剤(加工デンプン、キサンタンガム)、調味料(アミノ酸等)、香料、乳化剤、着色料(ビタミンB2、カロテン)、酸味料、(原材料の一部に乳成分、小麦を含む)

噛む力や飲み込む力が弱くなった方にとって食べづらい食材の一つである〝肉〟を、独自の技術を活かして食べやすい大きさとやわらかさに調整しています。かつおのうまみが効いたつゆに、溶き卵が加わった和風の味わいです。

おすすめ⑧ アサヒ バランス献立 なめらかおかず 鶏肉と野菜 筑前煮風

引用:amazon
価格 194円
内容量 75g
区分 区分1 かまなくてよい
原材料 たまねぎペースト(国内製造)、植物油脂、ごぼうペースト、イヌリン(食物繊維)、にんじん、砂糖、発酵調味料、しょうゆ(小麦・大豆を含む)、鶏ひき肉、白だし(さばを含む)、クリーミングパウダー(乳成分を含む)、チキンエキス/増粘剤(加工デンプン、キサンタン)、調味料(アミノ酸等)、炭酸Ca、V.B1

鶏肉、じゃがいも、ごぼうなどの野菜を裏ごしし、筑前煮風に仕上げたペースト状のおかずです。にんべんの白出しを使用しており、おいしく食べながら、食物繊維やカルシウムなどの栄養素を、しっかり摂ることができます。

レトルト介護食のメリット・デメリット

メリット

  • 長期の保存が可能
  • 食事を作る手間を省くことができる
  • 区分を目安に本人に適した食品を簡単に選ぶことができる
  • 種類が豊富で、献立も考えやすい

デメリット

  • 手作りよりお金がかかりやすい
  • 内容量のわりに、価格が高いものもある
  • 手作りならではの家庭の味を出すことは難しい

まとめ

今回は、「レトルト介護食」についてご紹介させていただきました。

レトルト介護食は、どこのメーカーも種類豊富に販売されているため、普通食の方と同じように介護食を利用する方も、さまざまな食事を毎日楽しく食べることができます。

美味しい食事をとりながら必要な栄養素を摂取、それがレトルト介護食であれば、いつも調理している家族の負担軽減にも繋がります。 保存できる期間も長めですので、気になる方は一度試してみてはいかがでしょうか。

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