ケアマネジャーは、介護を必要とする人と、介護サービスを提供する事業所・施設との橋渡しをする役割を担っています。超高齢化社会を迎え、その資格は高い需要があります。今回は、これまでの経験を活かしてケアマネジャーの資格を取得し、キャリアアップを図りたい方のために、最近の資格試験の傾向に注目しながら、資格や試験内容について詳しく見ていきましょう。

目次

ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?

介護保険制度におけるケアマネジャーの正式名称は「介護支援専門員」です。一般的には「ケアマネージャー」「ケアマネ」と呼ばれることが多いです。

ケアマネージャーの役割は、「要介護者及び要支援者の心身の状況に応じて適切なサービスが受けられるよう、相談に応じるとともに、ケアプラン(介護サービス等の提供計画)の作成、市町村、サービス事業者、施設等との連絡・調整等を行う」ことです。

つまり、要介護者及び要支援者が自立した日常生活を営むために必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして、介護支援専門員証の交付を受けた者という定義になります。

ただし、単にケアプランを作ればいいというものではありません。介護サービスの利用者が、介護事業所に直接要望や苦情を言いにくい場合、代わりを務めることもありますし、逆に介護サービス利用者に対しても、介護事業所の思いを伝えることもあります。

このように、ケアマネジャーは、介護サービスを必要とする方とサービス事業者との調整役として、とても重要な役割を担っています。

施設内と居宅のケアマネの違い

在宅ケアマネジャーは在宅介護を必要とする利用者のケアプランを作成し、施設ケアマネジャーは介護老人保健施設などの利用者のケアプランを作成します。

居宅ケアマネジャーとは異なり、訪問介護の依頼や通所介護の紹介を調整する必要はありません。ただし、施設によっては利用者の送迎や施設行事への参加などを担当することもあります。

在宅ケアマネと施設ケアマネの一番大きな違いは、担当する件数の違いと言えるでしょう。施設のケアマネですと、最大100件程度を担当しますが、居宅のケアマネジャーは35件程度にとどまります。

これは、担当件数が介護報酬によって決まるためで、一定件数を超えて担当すると行政指導を受け、介護報酬が減額される仕組みになっています。

ケアマネジャーの年収

ケアマネジャーの平均月収は27万5千円で、手取りは約22万円程度になります。賞与は年間60万円以上あり、合わせて計算すると年収は約400万円程度と考えれば良いでしょう。

2008年度の介護職員処遇状況調査結果によると、非常勤のケアマネジャーの平均時給は1,280円、平均月給は12万2,500円と、他のヘルパーなどの給料と比べると高めと言えます。なお、この数値は、前年度に比べて若干の増加となっています。

時給は施設によって異なるので、事前に確認が必要です。交通費に関しては、支給されることが多いですが、上限がある場合もありますので、そちらも確認が必要です。

平成20年度賃金構造基本統計調査によると、ケアマネジャーの初任給は、男性約21万円、女性約18万円となっています。

例えば、介護職として働いていた方がケアマネジャーになった場合、介護業務の経験年数が基本給に加算されることもあるようです。また、地域差もあり、都市部では初任給が19万円から25万円、地方では18万円前後となっています。

ケアマネジャーはどんな仕事をしている?

ケアマネジャーの主な仕事は、利用者との面談をもとにケアプランを作成し、利用者が自立した生活を送れるように支援することです。対面での業務に加え、受付業務や給付管理など事務的な業務も多いです。具体的にその仕事内容を確認しておきましょう。

仕事内容①要介護認定の業務

介護を必要とする方が国からの支援のもとサービスを受けるには、各市町村から委託され、要介護(要支援を含む)認定の対象となるかどうかの認定調査が行われます。

そのため、申請者の自宅を訪問し、身体状況や家庭環境などを確認し、報告書を提出する作業が必要になります。調査結果は、要介護認定のための審査基準として活用されます。また、ケアマネは要介護認定の申請も代行します。

仕事内容②ケアプランの作成・管理

ケアプランの作成は、ケアマネジャーの重要な仕事です。課題を分析し(アセスメント)、適切な介護サービスが利用できるように方針・内容・目標等を設定した上で、ケアプランを作成します。ケアプランとは、簡単に言うと、介護サービスのスケジュールのようなものです。

ケアプランに沿った介護サービスの開始後、介護事業者は定期的に要介護者の自宅を訪問し、健康状態やサービスの内容を把握します。また、目標が達成されているか、苦情はないかなどを評価するのもケアマネの仕事です。

仕事内容③介護事業者への連絡や調整

介護事業者との「サービス担当者会議」の調整は、電話やFAXで行います。このとき、サービス担当者により、連絡の時間帯を変更する必要があります。

たとえば、医師への連絡は診療終了時間を考慮することが求められますし、福祉事業者への連絡は昼食介護のため12時前後を避けるようにしなければいけません。地域によっては、連絡方法・時間として「ケアマネタイム」を設定しているところもあります。

仕事内容④介護給付費の管理

ケアマネジャーは、支給限度額や利用料の算定など、介護給付の管理も担当します。サービス利用票や給付管理表を作成し、月に一度、国保連合会に提出し、介護給付費を請求することになっています。間違いがあると返戻され、介護施設への介護給付費の支払いが滞るので、慎重に作成する必要があります。

ケアマネジャーになるために必要な資格

近年、ケアマネジャー試験のあり方が見直されており、2015年の第18回試験から免除科目が廃止され、2018年の第21回試験から受験資格が変更されていますので、受験資格や試験内容には特に注意が必要です。

ケアマネジャーになるための受験資格

従来は介護業務に従事している人も受験資格がありましたが、2018年(第21回)試験からは条件が厳しくなり、特定国家資格を保有しているか、介護施設での相談支援業務に従事していることが条件となりました。

まず、特定の国家資格を有する者とは、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、栄養士、精神科医師等を指します。

これらの国家資格に基づく実務経験が通算5年以上あり、かつ、当該業務に900日以上従事していれば、受験資格があるということになります。

また、上記の国家資格を有していない方でも、生活相談員、支援相談員、相談支援専門員、主任相談支援員として業務に通算5年以上従事し、従事日数が900日以上であれば受験資格があります。

受験資格は都道府県によって若干異なる場合がありますので、詳しくは受験する地域の担当部署に確認するようにしてください。

ケアマネジャーになるための試験

ケアマネジャーの資格は国家資格ではなく、各都道府県が管轄する公的資格であり、取得するには各都道府県で年1回行われる試験に合格する必要があります。試験の内容は各都道府県によって異なりますのでご注意ください。

試験の正式名称は「介護支援専門員実務研修受講試験」です。ただし、ケアマネジャー試験に合格しても、すぐにケアマネジャーとして働けるわけではありません。

修了後3ヶ月以内に「介護支援専門員実務研修」を受講し、登録申請する必要があります。研修はケアプランの作成など実践的な内容で、研修時間数は全国共通の87時間です。

ケアマネジャーになる試験(介護支援専門員実務研修受講試験)の難易度

それでは、ケアマネの試験の難易度、試験が難しい理由についても確認しておきましょう。おすすめの対策についても触れていますので、参考にしてください。

ケアマネージャーの試験の合格率

合格率は10~20%程度で、非常に難易度の高い試験といえます。第23回試験(2020年10月11日実施)の合格率は17.7%でした。第22回試験と比較すると、受験者数は増えていますが、合格率は低下しています。

ケアマネ試験では、分野ごとに合格点をクリアする必要があり、合格点は10問中7問正解の70%で、問題の難易度によって調整されます。各分野の正解率70%が基準ですが、「何点取れば合格」という決まった合格ラインはなく、試験の開催年によって合格点が異なると考えるべきでしょう。

また、介護支援分野では合格基準に達していても、保健医療福祉サービス分野では届かず不合格になることもあるので注意が必要です。

ケアマネージャーの試験が難しい理由

1つ目の理由として考えられるのは、「多肢選択式」ということです。例えば、介護福祉士の試験では、5つの選択肢から1つの答えを選び、1つでも答えが見つかればそれが正解となります。

一方、多肢選択式では、たとえ1つの選択肢が正解であっても、他の選択肢が誤っていれば正解にはなりません。つまり、他の介護資格に比べて正確な知識が要求されるため、解答方法そのものが難しいのです。

2つ目は、「試験時間が短い」ことが挙げられます。例えば、介護福祉士の試験と比べると、問題数と試験時間の比率は同じなので、同じように見えるかもしれませんが、問題の難易度を考えると、他の介護系資格に比べて試験時間は短いと言えるでしょう。

また、「受験資格の厳格化の影響」もあります。以前は一定の実務経験があれば受験できたのですが、現在は実務経験だけでは受験できません。

また、以前は保有資格による免除がありましたが、全問解答に変更になりました。この変更の目的は、ケアマネジャーの質の向上ですが、合格率が低い要因にもなっています。

また、十分な学習時間の確保が困難であるという点も無視できません。実務経験が受験の前提になるため、基本的には仕事をしながら勉強することになるので、どうしても勉強時間が十分に確保できないのです。その場合、実力不足のまま受験してしまうケースも少なくありません。

ケアマネージャー試験の勉強方法

確実に合格したいのであれば、試験対策講座を受講するのも一つの方法です。試験対策講座では、ケアマネの知識がなくても、専門的な知識や情報を集中的に学ぶことができるので、効率的に勉強することができます。

試験に合格するためのポイントを押さえた授業を受けることができ、わからないことがあればすぐに講師に聞くことができるのもメリットです。書籍でわからないことがあっても、独学ではその部分から先に進めないし、疑問点を調べる時間も必要です。

高齢化によりケアマネの需要は高い!

いかがでしたか?ケアマネジャーという仕事は、介護サービスの中でも特に重要で、なくてはならない仕事です。ケアマネジャーになるための試験の難易度は高めですが、時間をかけてしっかり勉強することで、合格を目指しましょう。今後、団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」もあり、介護を必要とする人はさらに増えていくと予想されています。その点からも、ケアマネジャーは将来性のある職業といえるでしょう。

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