「接遇マナー」は、特にサービス業界で必要とされるスキルの1つです。似たような言葉に接客マナーがありますが、この2つの違いを明確に理解していない人も多いのではないでしょうか。あるいは、接遇は秘書業務や特別なお客様に接するときに必要なものというイメージを持っている方もいるかもしれません。この記事では、接遇とは何か、接遇でもたらされる効果など、接客業ならぜひ覚えておきたいポイントを解説します。

目次

接遇マナーとは?接客マナーとは違う⁈

「接遇マナー」は、サービス業や医療現場、介護現場など、あらゆる場面で重要なスキルとして位置づけられています。まずは、「接遇とは何か」という基本を学びましょう。

接遇とは?

まず接遇の意味としては、相手(お客様)を理解し、適切に迎え入れることを指しています。「おもてなし」「思いやりを持って対応する」という意味があり、気持ちと強く結びついている言葉です。

似たような言葉としては「接客」がありますが、この2つの言葉にははっきりとした意味の違いがあります。理解を深めるためにも、ぜひ読み進めてください。

接遇マナーと接客マナーの違い

接遇と接客の違いについて、概要と特徴を見ていきましょう。まず接遇の方は、接客のスキルの一つです。状況やお客様に正しく対応することで、気持ちよくサービスを利用してもらうようにする技術です。

ソフト面をすべてカバーできるスキルであり、接客の仕方とも言えるでしょう。日本文化で表現するならば、「おもてなしの心」という表現がぴったりでしょうか。このように、接遇にはホスピタリティ的なさまざまな要素が関係しています。

一方、「接客」は基本的にお客さまに接する、対応する、という意味です。接客は特別なことではなく、最低限のサービスともいえるでしょう。接遇と接客の大きな違いは、ハードとソフトの両面でトータルな配慮がされているかどうかです。

常識という概念を例にとれば、接客は常識であり、おもてなしは良識であるということになるでしょうか。接遇にはお客様に応対するだけでなく、常に質の高いサービスやサポートを提供しながら、お客様を大切にすることが求められます。

アパレルショップを例にとって考えてみましょう。お客様からの質問(ファッションの悩みなど)に答えたり、購入した商品をレジに通すことは、単にお客様と接することであり、これは「接客」です。

一方、「試着室はご自由にお使いください」と笑顔で声をかけたり、店の出口まで丁寧に案内したりすることは、必要最低限のサービスを超えており、「接遇」と呼ぶことができます。

以上のことから、接客と接遇の大きな違いは、「必要最小限のサービスかどうか」と「お客様の立場に立った対応かどうか」の2点といえるでしょう。

接遇マナーの必要性

サービス業において接遇が重要視されるのは、お客様とサービス提供者の双方が不快感を抱くことなく、円滑にコミュニケーションを図るためです。マニュアル通りに仕事ができれば、日々の業務に支障をきたすことはないでしょう。

しかし、サービスを提供する側からすれば、お客様やその場の雰囲気に合わせた対応を工夫することで他社との差別化を図ることができ、仕事の遂行だけでなく、ロイヤリティを高めることを重視する企業も増えてきているようです。

例えば、介護の分野では、業務を遂行する上で介護職員と患者さんの距離が非常に近い職業です。そのため、介護スタッフと患者さんの間に信頼関係を築くことが必要不可欠です。

患者さんが「この人になら任せられる」と思えば、両者は調和してケアを行うことができますが、そうでなければ、命にかかわる事故が発生する可能性があります。

また、お客様の期待値が高いホテルや高級レストランでの仕事も、接遇マナーが大切な場所です。お客様一人ひとりに対する態度を変えることなく、一定の距離を保ちながら、おもてなしの心を伝えられるよう、気配りや目配りをすることが大切です。

何度もご利用いただいているお客様には特に、お名前やお好みなどを把握した上で応対する「接遇マナー」が非常に大切になってきます。

接遇マナー5原則を身につけよう!

おもてなしのマナーには5つの原則があります。どれも人間関係を築き、質の高いサービスを提供するために欠かせないものばかりです。ここでは、その5つの原則について詳しく説明します。

接遇マナー5原則①挨拶

業種を問わず、挨拶は気持ちよくビジネスを進めるために欠かせない要素です。特に初対面の会話では、挨拶の良し悪しがその人の第一印象となります。ポイントは、相手の業種や職種に合わせた挨拶にすること、相手の目を見て笑顔で話すこと、わかりやすく話すことです。

接遇マナー5原則②身だしなみ

2つ目は、身だしなみです。TPO(時間帯、勤務先など)を考え、その環境に合った身だしなみを心がけましょう。例えば、介護施設では、動きやすさと安全性が重要です。

また、露出の多い服装やラフな格好、黒一色の服装などは、患者さんに不快な思いをさせる可能性があるので避けたほうがよいでしょう。

ホテルなどでは、シワやシミ、汚れがないかを確認し、フォーマルな雰囲気を壊さないような服装を心がけることが大切です。もちろん、センスの良い服装であることも重要です。

接遇マナー5原則③表情

3つ目は、表情です。一般的に、表情にはその時々の感情が表れます。口角を上げ、にこやかな表情でお客様とアイコンタクトをとるように心がけましょう。

そうは言っても、必要な瞬間だけそのような表情をするのはとても難しいことです。鏡の前で練習したり、日常生活で相手の目を見て話を聞く習慣をつけることで、訓練するようにしましょう。

ただし、いつもニコニコしていると、相手の雰囲気によっては共感が得られないと受け取られる可能性があります。

接遇マナー5原則④言葉遣い

4つ目は、言葉遣いです。接客マナーで使われる言葉遣いの基本は敬語ですが、一方で、子どもに対して敬語を使うことが不自然であることは、誰の目にも明らかです。敬語を使おうとして、聞き慣れない言葉や過度にへりくだった言葉を使ってしまうと、雰囲気がぎくしゃくしてしまいます。

接遇マナー5原則⑤立ち居振る舞い

5つ目は、立ち居振る舞いです。美しい立ち居振る舞いは、相手に良い印象を与えるためにとても大切な要素です。立ち居振る舞いも言葉遣い同様、その場しのぎで簡単にできるものではありません。

相手に敬意をもつことが鍵となります。接客では、相手と真正面から向き合うため、特に姿勢が大切です。日頃から良い姿勢を保つように心がけましょう。

姿勢のチェックは、横から見たときに、耳、肩、腰、膝、かかとが一直線になっているかどうかを確認しましょう。また、猫背になったり、あごが上がったりしないように気をつけると、より美しい姿勢になります。

接遇マナーでもたらされる効果

接遇は顧客満足度に大きな影響を与えます。企業存続の鍵を握る「接遇」には、どのような効果があるのか、接遇が重要視される理由を見ていきましょう。

接遇マナーのメリット①信頼性の獲得ができる

お客様として経験した苦い思い出を思い返してみてください。「ある商品を購入しようとお店に入ったものの、店員の態度で買う気が失せてしまった。」というような経験をしたことがあるのではないでしょうか。

どんなに素晴らしい商品でも、店員の態度が悪ければ、お客様の期待を裏切る結果になってしまいます。さらには会社に対するお客さまの信頼がなくなってしまうかもしれません。

そうなれば、お客様はそのサービスを継続して購入することはなく、クレームをつける人も出てくる可能性があります。このように、接遇はお客様との信頼関係を築くためにとても大切なポイントなのです。

接遇マナーのメリット②相手の満足度が上がる

接客スキルの向上は、取引先企業との関係性においても重要です。ここでいう「取引先」とは、仕入先・外注先のことです。ビジネスパートナーとの契約関係においても、接遇が影響力を持つ場合があります。

たとえば、規模は小さいものの社員が礼儀正しく、自分の仕事に誇りを持っているような会社だと、「長年取引してきた大企業との契約を打ち切り、新たに御社と取引したい」と言ってもらえる可能性もあります。

かつて、企業間の取引は、発注者と下請け企業のような上下関係で捉えられていました。しかし、現在では、対等な立場でサプライチェーンを構築することが、企業の競争力を高めると考えられています。

接遇マナーのメリット③人間関係が円滑になる

上司、部下、同僚など、社内のすべての人に思いやりを持つことで、コミュニケーションが円滑になり、人間関係も良好になる可能性があります。社内の人間関係は、仕事の基本です。

そのため、接遇研修で相手への思いやりを学ぶことで、社内の人間関係の向上が期待できます。また、相手の状況や考えを尊重し、一歩踏み込んだ気遣いができれば、質の高いコミュニケーションができるようになるはずです。

特にリーダーや管理職は、接遇の研修を受け、マネジメント力を高めていくことが必要ではないでしょうか。

接遇マナーを身につけるとメリットは大きい

今回はビジネスで重要なスキル「接遇」にスポットライトを当てましたが、いかがでしたか?接遇は、お客様の満足度に直結するスキルです。思いやりのある接遇は、相手との信頼関係を築き、ファンを獲得するなど、その効果は絶大です。とはいえ、接遇マナーはすぐに身につくものではありません。実践の場で実践しながら、継続的に評価・改善していくことが望まれます。

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