「何かあったときにすぐに対応してくれる」「生活上の困りごとを相談できる」といったサービスを提供する「サービス付き高齢者向け住宅」が急増しています。今は元気でも、将来に不安を感じる高齢者が増えているからです。では、サービス付き高齢者向け住宅とは、実際にはどのような住宅なのでしょうか?そこで働くとなると、どんな仕事をするのでしょうか?仕事内容や給料など詳しく解説します。

目次

サ高住とは?

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、介護を必要とせずに入居できる施設です。居室と介護サービスを同時に契約する有料老人ホームとは異なり、介護サービスは別契約となるため、入居者の生活の自由度が高いのが特徴です。

入居者のライフスタイルに合わせたケアが必要なので、介護する側にも柔軟性が求められるでしょう。サービス付き高齢者向け住宅の「サービス」とは、安否確認や生活相談サービスなどを指しています。

つまり、サ高住とは、これらのサービスを提供することが義務づけられている施設です。介護、看護、医療などの資格を持つスタッフが日中常駐し、サービスを提供します。

一方、食事や生活支援、夜間の見守りなどのサービスは、サ高住ではオプションサービスとなっています。施設によっては提供されていない場合もあるので、事前にサービス内容をよく確認しておくとよいでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と他の施設との違い

サ高住と同様に、高齢者向けの施設には、老人ホーム、グループホーム、ケアハウスなどがあります。サ高住の大きな特徴は、施設を利用する際に「賃貸借契約」を結ぶことです。

これは、アパートやマンションを借りるときに結ぶ契約と同じようなものです。その他の高齢者向け施設では、一般的に「利用権方式」が採用されています。

利用権方式では、入居時の初期費用として高額な「入居一時金」を支払った後に契約を結びます。金額は施設によって異なるが、数千万円という施設もあります。

利用権を取得することで、介護サービスなど施設を利用する「権利」を手に入れることができるというわけです。

施設そのものを利用する権利なので、入院などで一時的に施設を離れると、戻ってきたときに同じ部屋を利用できないこともあります。

一方、サ高住の場合は、入居する部屋との賃貸借契約となるため、初期費用として敷金や社会保険料がかかり、入居後は家賃や共益費、生活支援サービス費などが毎月発生することになります。

金額は施設によって異なりますが、一般的なアパートやマンションの相場と大差ない場合がほとんどです。つまり、サ高住は、文字通り「家」であり「住まい」なのです。

サ高住での主な仕事内容

サ高住の入居者は賃貸マンションに住むような感覚で生活しています。そのため、「サ高住」で働くスタッフは、基本的には介護サービスを提供していません。

介護サービスは外部の訪問介護事業者が提供し、サ高住に勤務するスタッフは、見回りや食事の準備、生活相談などが主な業務となります。

しかし、サ高住の中には介護に力を入れ、ヘルパーや看護師が24時間体制で勤務しているところもあります。施設によっては、入浴や着替え、排泄の介助を行うこともあります。

サ高住の1日の仕事の流れ

9:00 出勤
出社後、夜勤スタッフから夜間報告を受け、1日のスケジュールを確認します。

11:00 昼食の準備
食事は業者が提供を行います。食器のみを用意し、食事へと誘導します。

12:00 昼食
誤嚥しないように目を配りながら、患者さんがしっかり食べられるようにサポートします。職場によっては、スタッフも一緒に食事をすることもあります。

13時00分 スタッフ休憩

15:00 レクリエーション
体操やクイズなど室内でできるレクリエーションもあれば、散歩や買い物など外出を伴うレクリエーションもあります。

16:00 移動、夕食の準備
報告書を送った後、見回りと夕食の準備をします。夜勤のスタッフが出勤してきます。

17時30分 夕食
夕食が終わったら、食器の片付けをします。

18:00 退社
残業がある場合もありますが、ひとまずここで一日の仕事は終わりです。

サ高住の勤務時間と夜勤対応

勤務時間は、施設にもよりますが、日勤が8時間、夜勤が14~16時間程度となっていますです。日勤の場合、入居者の生活リズムに合わせて、8時や8時半など少し早めの開始時間が基本となっていることが多いようです。

夜勤については、施設によっては職員が常駐していない場合もあるので、事前に確認が必要です。また、自立度の高い入居者が多いサ高住であれば、排泄介助や緊急時の対応などの負担が一般の老人ホームよりも軽くなる傾向があります。

サ高住の仕事がきついと言われる理由

他の職場と比べて、サ高住の仕事はきつい、大変と言われますが、本当にそうなのでしょうか?実際のところを見てみましょう。

サ高住の仕事がきついと言われる理由①人員不足

サ高住の仕事はきつい、大変と言われていますが、これは職員にギリギリの仕事を押し付けていることや、特養のように要介護者が多い場合でもワンオペで十分な人的ケアができていないことが大きな原因とされています。

また、電車のダイヤのように時間割に追われる窮屈さもあることでしょう。当然スケジュールに沿ったサービスを行うため、時間を気にするのは仕方ありません。

とはいえ、サービスを受ける相手は機械ではないので、マニュアル通りにいかない、時間通りにいかないことが多々あります。そのような積み重ねで不満がたまってしまうことがあり得ます。

サ高住の仕事がきついと言われる理由②接遇スキルが必要

利用者とのコミュニケーションの問題も、仕事を辞めたいと思う理由のひとつです。自立した利用者が多いサ高住では、自分のライフスタイルを大切にしたいと考える利用者も多いです。

お互いに譲れないライフスタイルが多いので、そのこだわりの強さが利用者同士のトラブルにつながることもあります。

利用者のトラブルを解決するのがスタッフの仕事ですから、トラブルが頻発するとモチベーションが下がってしまうのでしょう。

サ高住の仕事がきついと言われる理由③身体介護が必要者の増加

上記2つの理由とは逆に、サ高住は楽だと聞いて転職したのに、思ったより大変で辞めたいと思う方もいるようです。近年、高齢者が急増し、高齢者向け住宅の数も増えています。

高齢者向け集合住宅は、基本的な安否確認や生活相談サービスに加え、身体介護サービスの充実、認知症や医療依存度の高い高齢者の受け入れなど、多様化が進んでいます。

高齢者向け集合住宅で、ゆったりとした環境で高齢者の見守りを中心に仕事ができると思って入社・転職したら、身体介護が多かったり、夜間はオンコールで休む暇もなく、疲れてしまったという方も少なくないようです。

サ高住の仕事がきついと言われる理由④入居者との人間関係

サ高住では、入居者の生活の自由度が高いため、時にはこだわりの強い入居者のわがままや理不尽な要求が出ることもあります。入居者の日常生活と密接に関わる仕事なので、入居者とうまくいかないと辛いこともあります。

サ高住で必要な資格要件

サ高住で、入居者の部屋を訪問して接客する場合は、少なくとも介護職員初任者研修の受講が必要です。また、サービス付き高齢者向け住宅を運営している訪問介護事業所が、サービス提供責任者を募集しているケースもあるようです。

サ高住で特に優遇される資格

サービス付き高齢者向け住宅は未経験でも採用される可能性はありますが、資格を取得していた方が就職活動で優遇され有利になりやすいです。

特に、介護職員初任者研修、介護職員実務者研修、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員などの資格は、入居スタッフの人員配置基準を満たせるかどうかに関わるので、重宝されるでしょう。

これらの資格を持っていれば、未経験でも資格がない場合よりも採用される可能性が高くなります。介護職員初任者研修は無資格・未経験でも取得可能ですので、就職活動に向けて受講してみてはいかがでしょうか。

サ高住で働く介護職の給料や福利厚生

いくら介護の仕事が好きでも、給料に問題があればモチベーションに響きます。ここでは、サ高住に勤務する介護職員の給与水準を確認してみましょう。

サ高住の介護職の平均給料

サ高住で働く介護職員の平均給与は、2008年9月時点で月給30万を少し上回る程度で、2009年と比較すると1万円ほど高くなっています。

これはボーナスを含んだ数字ですので、サ高住に勤務する介護士は平均給与よりやや低い傾向にあるようです。

とはいえ、給料は職場によって異なるので、自分が納得できる給料を払ってくれる職場を見つけることが大切です。

サ高住の介護職の福利厚生

サ高住で働く介護士に対する福利厚生ですが、社会福祉法人や医療法人は、国からの補助金もあり、比較的福利厚生が充実しています。

民間企業が運営するものの場合、高齢者住宅の数が急激に増えていることもあり、その質には大きな差があるようです。大手の民間企業であれば、充実した福利厚生が期待できますので、運営会社などを事前に確認しておきましょう。

サ高住の仕事内容を理解した上で職場を選ぼう

近年では、在宅介護を推進するため、新規登録されたサ高住に国が直接補助金を支給しています。そのため、今後サ高住の需要が高まることは間違いないでしょう。また、補助金の影響により、介護従事者への利益還元も期待できます。

通常の介護施設とは異なる魅力を持つサービス付き高齢者向け住宅への転職を検討する際に、この記事を参考にしていただければ幸いです。

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