夜勤がある介護職は、日勤のみの職種に比べて、どうしても生活リズムが不規則になってしまいがちです。中には、夜勤によって昼夜逆転の日々を続き、体調不良になってしまう場合もあるため、介護職に携わる方の心と体の健康には、夜勤明けの過ごし方が重要になります。
そこで今回は、夜勤明けの負担を減らす過ごし方のポイントや、介護職の夜勤勤務の注意点などについてご紹介させていただきます。
介護職の夜勤者の睡眠事情
24時間体制の介護施設では、夕方または夜から翌朝にかけて勤務する「夜勤」があります。入所者が夜間も安全に過ごすためには、この夜勤業務が必要です。
しかし、夜勤は、人が本来なら眠るべき時間帯での勤務となるため、どうしても日勤より心身への負担が大きくなります。
もともと人は、深夜帯は作業能率が低下しやすく、日中は活動に適した状態、夜間は身体回復のため睡眠に適した状態になる生体リズムが備わっています。そのため、日中よりも夜間の方が質の良い睡眠をとることができるようになっています。
介護施設は一般的にシフト制で、特に、日勤・夜勤どちらも出ているという方は、勤務時間が不規則になりがちで、睡眠時間の確保が十分にできないケースが多くあります。
睡眠不足は、日中眠くなり、集中力や活動意欲の低下を招くだけでなく、疾病のリスクを高める原因にもなります。
そのため、夜勤者は、生活リズムをできる限り崩さないことを意識した生活を心掛ける必要があります。
睡眠不足による健康への主なリスク
眠気や疲労感、倦怠感などをもたらし、活動意欲や集中力、注意力などが低下する。
睡眠のリズムが乱れることで、女性ホルモンの分泌量が低下し、分泌リズムが不規則になったり、月経周期の乱れや、不妊、流産、早産などが起こりやすくなったりなどの影響が出る。
生体リズムが狂うと、HDL(善玉)コレステロールの低下や、空腹時血糖値・総中性脂肪血圧の上昇といったさまざまな代謝異常が引き起こされる。そのため、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病のリスクが上昇する。
実際、慢性的な睡眠不足にある方は、冠動脈疾患などの生活習慣病に罹りやすいことが明らかになっている。
生活リズムの乱れは、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難といった不眠症状につながる可能性もあり、糖尿病や高血圧などのリスクが上昇する。
介護職の夜勤明けの過ごし方
夜勤明けは、日中の時間を自由に使うことができるため、家でゆっくりする方もいれば、ショッピングをしたり遊びに出かけたりする方もいます。過ごし方は人によりさまざまですが、大きく分けると、「疲れを取る派」と「アクティブに過ごす派」の2つのタイプに分かれているようです。
疲れを取ることを優先・家でゆっくり過ごす派
- 帰宅後はずっと寝る
- 仮眠をとった後、テレビや録画した番組を観る
- 本を読んだりゲームしたりなど、眠くなるまで趣味に時間を使う
- お酒を飲んでのんびり過ごす
- 整体やマッサージ屋さん、エステなどに行き、身体をほぐしてもらう など
時間を有効的に使いたい・アクティブに過ごす派
- 役所や銀行、警察署、陸運局など、平日の日中しか受け付けていない手続き等を済ませる
- カフェやファミレスなどに行き、モーニングまたはランチをする
- 習い事に行く
- 友人と出かける
- 家事をこなす
- 子供のお迎え など
夜勤の場合、退勤時間が午前中で、明けは自由な時間が多いため、誰もが休息を優先するというわけではなく、活動的に過ごす方もいます。夜勤明けは仕事が終わった解放感もありますし、夜勤の勤務時間が日をまたぐ場合、夜勤明けの翌日は法定休日となりますから、気持ち的にもそのまま活動してしまうという方も多いのかもしれません。 しかし、お子さんがいるなど、家庭の事情により、子供の送迎や自宅での家事をこなす必要があると、休みたいけど休めないという方もいるようです。
夜勤明けの負担を減らす過ごし方のポイント
夜勤者の夜勤明けの過ごし方は人によりさまざまですが、夜勤は日勤に比べ、心身に負担がかかりやすく、生活が不規則になりやすいため、夜勤明けの過ごし方はとても重要となってきます。
どのように過ごすかはその人の自由ではあるものの、疲労が蓄積されてしまうと勤務を続けること自体が難しくなってきてしまいますので、夜勤明けはなるべく疲労がたまらないように意識した生活を送ることも大切です。
生活リズムはできるだけ崩さず、メリハリのある生活を
夜勤明けは疲労がたまっているため、帰宅後そのまま家でダラダラ過ごしてしまうという方や、日中はずっと寝っぱなしという方も多いのではないでしょうか。
家でゆっくり過ごすことが悪いというわけではありません。しかし、生活リズムを戻すことを意識した生活を心掛けることは大切です。
〝○時~○時までは睡眠〟〝○時~○時までは食事〟〝それ以外は趣味の時間〟というように、生活にメリハリをつけて過ごすことが、夜に寝るというリズムが崩れるのを防ぐことにもつながります。
また、帰宅後は夜の時間まで寝っぱなしという方もいるかもしれませんが、本来、日中は睡眠に適さない時間帯であるため、疲労回復を十分に行うことができません。日中長時間寝てしまうと夜眠れなくなってしまいますし、睡眠の質を下げる原因にもなります。
帰宅後2時間程度の睡眠がおすすめ
夜勤中の仮眠は、業務中の事故やミスを防ぐことに繋がり、また、夜勤中だけでなく、夜勤後の疲労感も軽減させるといわれています。しかし、人手不足や環境の問題などさまざまな理由から、休憩時間はあるものの、仮眠が取りにくいという状況の方もいるのではないでしょうか。
夜勤明けは、強い眠気や疲労感で、日中起きているのが辛いという方も多いと思います。 その場合は、帰宅後2時間程度の睡眠をとるのがおすすめです。あまり長く寝すぎると夜の睡眠に影響してしまい、かえって疲労がたまりやすくなる原因となりますが、上手に睡眠をとれば、夜勤による体内時計のずれをリセットし、効率よく疲労を回復させることができます。
夜勤終了後はできるだけ強い光を浴びないようにする
強い光を浴びてしまうと体内時計がリセットされ、身体が活動モードに切り替わってしまい、睡眠の質を下げる原因となります。そのため、夜勤終了後は、なるべく太陽の光などを浴びないよう、サングラスや帽子などで対策をとるようにしたり、スマートフォンなどの操作を控え、ブルーライトを浴びないようにしたりします。
自宅は、遮光カーテンあるいは厚手のカーテンなどで部屋を暗くしておき、帰宅後2時間程度の睡眠をとってから部屋を明るくすると良いでしょう。
退勤時間が午前9時~10時だとすると、帰宅したら昼過ぎまでしっかり寝て、その後は起きて活動するといった生活が理想的です。
眠気が残っているようであれば、どこかのタイミングで10分程度の仮眠をとると頭が少しスッキリします。
ただし、先ほどからお伝えしている通り、寝すぎには注意です。
夜勤明けの食事は消化に良いものを
疲労の蓄積・睡眠不足は、食欲を促進させるホルモンの分泌が促されることや、仕事が終わった解放感や空腹感などから、つい食べ過ぎてしまったり、甘いものだけ摂取してしまったり、といった方も多いかもしれません。
しかし、消化には体力が必要となるため、お腹の中にたくさんの食べ物が残っていると睡眠の質が下がってしまいますし、夜勤で生活リズムが乱れているため、消化器官も不調を引き起こしやすい状態になっています。
帰宅後は、食事量を抑え、スープやお粥など、消化に良い食べ物をとるようにしましょう。
また、仮眠後は、肉や魚などのたんぱく質を意識した食事を摂取することで、疲労回復効果を期待することができます。
介護職の夜勤勤務の注意点
生活リズムが崩れやすい
先ほどからお伝えしている通り、夜勤はどうしても生活リズムが崩れやすくなるため、疲労回復を上手に行わないと、疲労が蓄積し、心身の体調を崩してしまうことになります。
施設によって夜勤の忙しさや職員体制等も異なりますし、疲労の感じ方や必要な睡眠時間もその人の体質などによりますが、とにかく無理をせず、寝るときは寝る、起きるとき起きるといったメリハリのある生活を送るようにしましょう。
なにより、夜勤で乱れた生活リズムを戻すことを意識して過ごすことが大切です。
自分の健康にかかわることですから、夜勤の回数が多ければシフトの調整をお願いし、転職を考えたりなどの対策が必要となる場合も有ります。
とにかく夜勤明けは無理をせず、適度な睡眠を取るようにしましょう。
日勤より責任が重い傾向にある
夜勤は日勤よりも職員の人数が少なくなるため、日中業務より責任が重いことや、施設や状況によっては入所者の体調の急変などに一人で対応しなければならないこともあり、行動力や判断力が求められる場面もあります。
また、夜勤はある程度経験がある介護職員が担当することや、夜間・深夜ということもあり、代わりの人が探しにくく簡単に休めないというデメリットもあります。
そういった意味でも、体調管理には十分注意が必要となります。
まとめ
今回は、夜勤明けの負担を減らす過ごし方のポイントや、介護職の夜勤勤務の注意点などについてご紹介させていただきました。
介護職の夜勤は、日中にしかできない用事をこなせるという良さもあるため、あえて夜勤中心の働き方を選ぶ人もいます。
日勤よりも体に負担がかかりやすい傾向にありますが、明けの過ごし方に気を付ければ、夜勤の疲労の蓄積や生活リズムを崩さずに済みます。
夜勤明けどう過ごせば良いか分からないという方は、今回ご紹介したポイントを意識して過ごしてみてはいかがでしょうか。