度重なるブラック企業問題に対し、厚生労働省も本格的な対策に乗り出しています。同省は相談窓口「過重労働撲滅特別対策班」を設置し、すでに労働基準法違反で大手企業の幹部を警察に送致しているケースもあります。残念ながら、介護業界もブラック企業関連のニュースとは無縁ではありません。今回は、介護職員が転職で失敗しないために、ブラック施設の見分け方を解説します。

目次

ダメな介護施設の実態とは?

ではまずは、ブラック介護施設の特徴を見てみましょう。ブラック介護施設とは、「ブラック企業」とも呼ばれています。

【ブラックな老人ホームに共通する特徴】

  • 職員の離職率が高く、入れ替わりが激しい
  • スタッフの数が少ない
  • 休暇が取りにくい
  • スタッフ間で陰口やゴシップが多い
  • 患者への接し方が難しい、厳しい
  • 精神論が多すぎる

上記の項目は、ブラックな老人ホームに多く見られる特徴です。これらの特徴は絶対的な要因ではありませんが、労働環境に何か問題があることを示唆しています。

まず、離職率が高いのは、スタッフの満足度が低いことの表れです。そのため、常に人手不足で、新しい職員を育てることができません。

人手不足のためスタッフはみな忙しく疲弊しており、休みを取ることも難しく、長時間労働を強いられることもあります。そんな状況が続けば当然スタッフの不満は募るばかりで、職場では常に陰口がたたかれています。

精神的に余裕のないイライラした職員が、利用者に辛辣な言葉を浴びせることもあるかもしれません。それでも、具体的な解決策を講じることなく、「助け合いながら頑張ろう!」という精神論で突っ走ることもあります。

あなたの職場は?ダメな介護施設のチェックリスト

一般的にダメな介護施設には、共通する特徴があります。その共通点をここではご紹介しますので、自分の勤務する施設に当てはまるものがないかチェックしてみてください。

ダメな介護施設の特徴①職員同士の人間関係が悪い

看護・介護スタッフのリーダー同士が仲が悪く、職場がいつもギクシャクしている状況はありませんか?職場の人間関係は、安心して働くために最も重要な要素の一つです。

人間関係が悪ければ、辞めたいという気持ちを助長してしまうこともあるのです。介護の職場では、年齢、性別、前職の経験、国籍はもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った人たちが一緒に働いており、考え方も多様です。

そのため、意見の衝突や仕事の進め方の違いなどが、人間関係に悪影響を及ぼすこともあります。特に小規模な施設では、人間関係が閉鎖的になりがちで、逃げ場がなくなってしまうかもしれません。

人手不足で現場の仕事が忙しかったり、パートで長く働いているベテラン介護職員に意見が言えなかったりと、本来人間関係の調整を行うべき管理者がうまくマネジメントできていないケースも少なくないようです。

ダメな介護施設の特徴②労働に対して給料が安すぎる

毎月一生懸命働いているものの、基本給が低く手取りは15万円程度しかない、その上に残業が多い、と悩んでいませんか?

また、がんばって資格や役職を取っても、給料は数千円しか上がらない、という職場なら、頑張って出世しようという気にはなれません。

努力した結果が給料という形で返ってこないと、「何のために働いているのかわからない」「辞めたい」と思うことも多いのではないでしょうか。

そもそも介護職の平均年収は334.6万円、ケアマネジャーは393万円で、全産業の年収500.6万円と比べると低い傾向にあります。

そのため、特に人手不足の職場では、「労働時間の割に給料が少ない」「激務で責任が重いのに見合わない」といった不満の声が多く聞かれます。

政府の処遇改善加算による賃上げで改善されたとはいえ、施設側が職員の給与に十分な予算を割り当てていないケースもあり、まだまだ十分とは言えません。

ダメな介護施設の特徴③利用者へのサービスが手厚すぎる

入居者やその家族は大切なお客様ですが、必要以上のサービスを提供している施設もあります。必要以上のサービスを提供し、すべての要求を受け入れることで介護職員の負担が増えてしまうのです。このような施設では、介護職員の尊厳を考えていないといえます。

スタッフへの配慮がなく、精神的・肉体的負担が増え、退職に至るケースも少なくありません。その結果、職員が不足し、入居者へのケアの質にも影響が出ることになるでしょう。

入居者や家族に施設の方針を事前に説明し、納得してもらうというプロセスを省略しようとする施設はブラックかもしれません。良い施設は、サービスの範囲を明確にし、きちんと伝えてくれます。

ダメな介護施設の特徴④人件費を節約している

老人ホームの財源の5割は介護保険で賄われています。その分、売り上げの上限が決まりやすいので、コスト管理の意識が高く、人件費にシビアになる傾向があります。

そのため、過度に厳しい施設は給料を上げることができず、適正な人員配置ができない状態が続くことになるでしょう。

その結果、スタッフが定着しない、新しいスタッフを確保するための採用コストが増大する、ベテランがいなくなり仕事の質が低下する、入居者やその家族からの信頼を失うなど、負のスパイラルに陥る可能性が高くなります。

ダメな介護施設の特徴⑤職員が医療行為に従事している

介護職は医療従事者ではないため、基本的に医療行為を行うことは禁じられています。条件によっては許される場合もありますが、ほとんどの医療行為は医師や看護師が行うものです。これは医師法、保健師助産師看護師法に規定されています。

しかし、人手不足の介護施設などでは、看護師が不在の場合、暗黙の了解として介護職員が医療行為を行うケースも稀にあるようです。知識のない者が医療行為を行った結果、被害を受けるのは患者さんです。

また、法律で定められている以上、絶対にやってはいけないことです。介護職員に当たり前のように医療行為を行わせている施設は、極めてブラックな施設と言えるでしょう。

ダメな介護施設の特徴⑥労働基準法を遵守していない

労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めた法律で、雇用形態に関係なく、原則として日本のすべての労働者に適用されます。この基準に満たない労働条件は、法律上無効とされ、労働基準法の適用を受けることになります。

例えば、人手不足の介護の分野では、一人当たりの労働時間が必然的に長くなる傾向にあります。また、時間外労働が月100時間を超えるような施設も存在します。

さらに、休日を取得して有給を取ることは、労働者にとって最低限の権利ですが、よくあるのが、法律で定められた休日や有給休暇を付与しているにもかかわらず、本人の希望が通らないケースです。

ダメな介護施設の特徴⑦セクハラが横行している

入居者からの暴力やセクハラがあった場合、担当の介護士を責めることはありませんか?もしそうなら、注意が必要です。施設が問題解決に協力的でない場合は、ブラックの可能性が高いでしょう。

ダメな介護施設の特徴⑧聞いていた条件と違っている

面接時の条件はとても良かったのに、いざ入社してみたらあれこれ理由をつけられて条件が悪くなったという経験はありませんか?面接時の話と実際の条件が違う場合は、ブラック企業である可能性が高いです。すぐに次の手を考え始めるべきでしょう。

就職前にダメな介護施設を見抜く方法

ここでは、ブラックな施設に見られやすい特徴をまとめました。思い当たる節がないか考えてみましょう。ただし、必ずしもすべての施設に当てはまるとは限りません。あくまで参考程度にご覧ください。

ダメな介護施設の見抜き方①面接官の態度

上司候補や施設の管理者の対応は、一緒に働く上で重要です。たとえ不採用であっても、まともな組織・社会人であれば、応募者を一人の人間として尊重し、接してくれるはずです。

ダメな介護施設の見抜き方②求人を絶えず行っている

常にスタッフを募集しているような施設は、人材が定着しない環境である可能性が高いでしょう。職員間の人間関係が悪い、管理職が改善しない、パワハラやセクハラが横行しているなどの状況が考えられます。求人誌等でよく掲載されている施設名はチェックしておきましょう。

ダメな介護施設の見抜き方③施設が汚い

清掃やメンテナンスが行き届いていない施設は要注意です。老人ホームは、高齢者の生活を預かる場所です。介護サービスを提供する施設である以上、汚れたり不潔であってはいけません。

面接や施設見学の際には、ゴミやホコリ、整理整頓、汚いニオイなどがないかどうかをチェックしましょう。汚れていたり不衛生な施設は、人手が足りていない可能性があるので、注意が必要です。

ダメな介護施設の見抜き方④給料が高すぎる

また、あらかじめ退職者が出ることを前提に、給料面で好条件を提示している可能性もあります。初めて転職する人は、そうした兆候を見逃しがちですが、あまりにも好条件の場合は、何か理由があるのではと疑ってみたほうがいいでしょう。

ダメな介護施設はすぐに辞めるべき?

今の職場に長く勤めていて、基本給や役職が良い場合、うかつに転職すると給料が下がる可能性があります。辞めたいと思っても、給料を維持できる職場がありそうかどうかじっくり検討し、転職先を決めてから辞めましょう。

また、数か月ももたずに仕事を転々としているようなら、一度立ち止まってみることをおすすめします。少し頑張って半年以上経験を積んでから転職した方が、働きやすい職場が見つかりやすいかもしれません。

一方、半年から1年以上看護の現場で働いてきた人は、転職のために職歴をある程度評価してもらえますので、悩みを解決してくれる次の職場に移ることができるでしょう。

さらに、介護の世界では20~30代の若い働き手は重宝されます。そのため、この年代ならブラックと思われる会社に早めに見切りを付けて次の職場に移るのがおすすめです。

ブラックな介護施設なら転職を考えよう

いかがでしたでしょうか?今回ご紹介したように、悪質な介護施設は、残業、休日出勤の強制、過剰なサービス、人件費削減、いじめ・嫌がらせの横行などが特徴です。

老人ホームを探す際には、求人情報が曖昧ではないか、常に募集しているか、清掃が行き届いているか、入居者や職員が生き生きとしているか、などのポイントに注目しましょう。

2025年問題と同様、介護職の人手不足は今後加速するといわれています。圧倒的な売り手市場だからこそ、嫌ならダメな介護施設で働く必要はないのです。この記事を参考に、イキイキと働ける施設を探してみてください。

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